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転生したら奴隷になりました[魔力を得て楽しく暮らます]  作者: アル治


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第8話  奴隷、魚を食べる

いつも読んでいただきありがとうございます。

翌日。

倒木。

石運び。

土運び。

いつもの仕事が始まった。

しかし――。

4人には、昨日までとは違う目的があった。

ラック

「今日も気合い入れていくぞ!」

レイ

「昼までには終わらせよう!」

ブライ

「採取の時間を作らないとな」

ジン

「はい!」

4人はいつも以上に必死に働いた。

ヒールで疲労を回復しながら、ノルマを片付けていく。

昼食の時間になると、ラックとレイが集めてきた黒い木の実をジンに渡す。

ジン

「ありがとうございます」

木の実はすぐにアイテムボックスへ。

ブライもピンク色の石を渡した。

ジン

「これも入れておきますね」

そしてジンは、少しだけ勇気を出して看守に声を掛ける。

ジン

「すみません」

「水が、もうないみたいなのですが……」

看守

「うん?」

看守が水の樽を見る。

看守

「さっきまであんなにあったのに……」

「仕方ないな」

「仕事が終わってる奴はいるか?」

4人の視線が一瞬で交差する。

そして――。

4人全員が手を挙げた。

看守

「……四人か」

「まあいい」

「お前ら4人、馬車に乗って付いてこい」

4人

「はい!」

4人の顔が、一斉に明るくなった。

しかし、出発する直前。

看守

「ちょっと待て」

看守は別の男――看守長らしき人物と何やら話している。

しばらくすると戻ってきた。

看守

「よし、行くぞ」

ジン

「あの……先ほどは何の話をしていたんですか?」

看守

「ああ?」

「奴隷を四人、現場から出すっていう報告だ」

ジン

「なるほど」

「人がいなくなると大変ですからね」

看守

「いや、それだけじゃない」

「この現場の周辺には、シナゲルって魔法が掛かってるらしい」

ジン

「魔法ですか?」

看守

「現場から奴隷が離れると知らせる魔法らしい」

「詳しいことは俺も知らん」

ジン

「…………」

3人を見る。

ラック、レイ、ブライは――。

目の前の魚に夢中だった。

ジン

【魚……】

【シナゲルを何とかしないと、自由に採取には行けないか】

【範囲なのか……人数なのか……】

考えているうちに、馬車は川へ到着した。

4人は水を汲む。

そして――。

ラック

「いた!」

レイ

「魚だ!」

ブライ

「捕まえろ!」

4人で川に入り、水を汲みながら魚も捕まえる。

捕まえた魚を樽に入れる。

その途中で――。

ラック

「ジン!」

ジン

「はい!」

受け取った魚をアイテムボックスへ。

1匹。

2匹。

3匹。

何度も繰り返す。

看守

「そろそろ貯まったか?」

ラック

「はい!」

看守

「じゃあ戻るぞ」

4人

「はい!」

帰り道も、四人は周囲を見回していた。

木の実。

キノコ。

食べられるかもしれない植物。

転んだふり。

しゃがんだふり。

何とか手に取ってはジンへ渡す。

ジン

「ありがとうございます」

そして――。

現場へ戻った。

ジン

「看守さん」

「今日の仕事は終わったので、少し明日の分まで進めてもいいですか?」

看守

「構わんが、無理はするなよ」

ジン

「はい!」

こうして4人は仕事を続けながら、木の実やキノコを探した。

夕方。

仕事終わりの馬車が到着すると――。

4人の顔は、緩みきっていた。

ラック

「…………」

レイ

「…………」

ブライ

「…………」

ジン

「ふふっ」

小屋に入る前。

4人は井戸の水で全力で遊んだ。

ラック

「冷てぇ!」

レイ

「お前、掛けすぎだ!」

ブライ

「子供かよ!」

ジン

「楽しいですね!」

汗と泥を落とす。

そして小屋へ。

いつもの夕食。

パン。

スープ。

サラダ。

4人は黙って食事を見る。

しかし――。

今日は違う。

ラック

「ジン……頼む」

レイ

「久しぶりだ……」

ブライ

「ジン様々だな……」

ジンは笑った。

そしてアイテムボックスから――。

魚を8匹取り出した。

1人2匹。

ラック

「…………」

「魚……」

「魚だよ……」

レイ

「どうする?」

「まだ生きてるぞ」

「焼くのは……?」

ブライ

「だな」

「生は怖い」

ジン

「じゃあ、まず締めましょう」

ジンは魚に指を当てる。

ジン

「アエラス」

風が走った。

魚のエラと尾の付け根が綺麗に処理される。

ラック

「…………」

「それ、風魔法だよな?」

レイ

「ジン……」

「もう使い方がプロだな」

ブライ

「火はどうする?」

ラック

「床板を1枚外そう」

「そこで火魔法を使えばいい」

ブライ

「なるほど」

4人で床板を外し、火が燃え移らないように準備する。

魚を並べる。

レイ

「ジン、頼めるか?」

ジン

「はい!」

「フローガ!」

ボッ!

焚き火ほどの炎が生まれた。

ジンは炎の維持に集中する。

その間、ラック、レイ、ブライが交代しながら魚を焼いていく。

ラック

「ヤバい……」

「ヨダレが……」

レイ

「魚に垂らすなよ」

ブライは何も言わない。

ただ――。

焼けていく魚を見つめている。

やがて。

ラック

「ジン!」

「もういいぞ!」

「全部焼けた!」

ジン

「はい!」

フローガを止める。

焼き上がった魚に、砕いた岩塩を振りかける。

ブライ

「ジン……」

「すまない」

「もう1回だけフローガ出来るか?」

ブライの手には――パン。

ジンは笑った。

ジン

「出来ますよ」

パンを焼く。

香ばしい匂いが、小屋いっぱいに広がった。

レイ

「ジン!」

「木の実も潰してパンに乗せようぜ!」

ジン

「いいですね!」

黒い木の実を取り出す。

4人で潰す。

焼いたパンに乗せる。

魚。

岩塩。

木の実のパン。

目の前には、いつもの粗末な食事もある。

けれど今日は――。

4人

「いただきまーす!」

パクッ!

バクッ!

4人

「…………」

「うまっ!」

「ああ……!」

「最高……!」

「美味しい……!」

誰も、それ以上言わなかった。

ただ黙々と食べる。

魚を食べる。

パンを食べる。

木の実を食べる。

そして――完食。

4人は何も言えなくなっていた。

ブライは俯いている。

その頬には――涙が流れていた。

ジン

「…………」

何も言わず、手を向ける。

ジン

「ヒール」

淡い光が4人を包む。

疲労が消えていく。

けれど――。

今日消えたのは、疲労だけではなかった。

奴隷になってから初めて。

4人は「生きるため」ではなく、「楽しむため」に食事をした。

そして――。

奴隷たちの、本当の食事革命が始まった。

今後もよろしくお願い致します。

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