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転生したら奴隷になりました[魔力を得て楽しく暮らます]  作者: アル治


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第5話  ヒール

いつも読んでいただきありがとうございます。

朝。

奴隷たちの小屋に朝食が運ばれてくる。

パン、ミルク、そして簡単なサラダ。

ジンは黙ってパンを眺めていた。

ジン

【毎日これか……】

食事はちゃんと出る。

飢え死にするようなこともない。

けれど――。

ジン

【さすがに飽きるな……】

ラック

「相変わらず足りないな」

レイ

「朝からそれかよ」

ラック

「肉か魚が食いたいんだよ」

ブライ

「奴隷が何を言ってるんだよ」

その言葉に、4人が笑う。

笑える。

それだけでも、ジンにとっては少し意外だった。

ジン

【奴隷って、もっと暗いものだと思ってたんだけどな……】

食事を終えると、外から声が響いた。

看守

「馬車が来るぞ!」

ブライ

「急げ! 乗れなきゃまた歩きだぞ!」

4人は慌てて外へ出る。

そしていつものように、檻へ乗り込んだ。

馬車が動き出す。

ジンは檻の隙間から外を眺めていた。

昨日と同じ道。

しかし、昨日とは少し違う。

道端には木の実。

少し離れた場所にはキノコ。

ジン

【食べられるのかな……】

手を伸ばそうとして、やめる。

ジン

【でも、今は無理か】

馬車はそのまま現場へ向かっていった。

現場に到着すると、すぐに仕事が割り振られる。

看守

「ラック、レイは倒木だ。今日は4本」

「ブライは石運び」

「ジンは昨日と同じ土運びだ」

ジン

「はい!」

昨日より土の山は低い。

しかし――。

ジン

【昨日の疲れが残ってる……】

空腹もある。

それでも、ジンは黙々とスコップを動かした。

土を一輪車に積み、運ぶ。

戻る。

また積む。

また運ぶ。

そして――。

看守

「昼だ! 休憩!」

ジン

「はい!」

ジンは昨日より少し早く昼食の場所へ向かった。

今日もパン、スープ、サラダ。

昨日よりスープに野菜が入っている。

ジン

【昨日よりは……マシか】

しかし、食べ終わる頃には思った。

ジン

「……足りない」

ブライ

「足りないよな」

ジン

「ですよね」

ブライ

「奴隷なんて、死ななきゃいいって考えだからな」

ジン

【やっぱり、そこは奴隷なんだな……】

ジンは食事を終えると、看守のところへ向かった。

ジン

「すみません、水をもらってもいいですか?」

看守

「ああ。昨日教えただろ?」

「そこの樽だ」

ジン

「ありがとうございます」

ジンは水を飲みながら尋ねた。

ジン

「この水って、どこから持って来てるんですか?」

看守

「少し離れたところに川がある」

「そこから汲んで来てるんだ。水は飲めるぞ」

ジン

「川……」

ジンは少し考える。

ジン

【川があるなら、魚もいるはず……】

【でも、そこまでどうやって行く?】

【行けたとしても、どうやって持って帰る?】

午後の仕事が始まった。

夕方。

ジンは土を運び終えた。

看守

「今日は間に合ったな」

ジン

「はい。昨日より少なくて助かりました」

看守は小さく笑う。

看守

「そうか。なら今日は早く休め」

ジン

「ありがとうございます」

その時だった。

少し離れた場所から声が聞こえる。

ブライ

「うわっ!」

ジンが振り返る。

ブライが運んでいた石を足の上に落としていた。

ブライ

「大丈夫だ」

「これくらいなら問題ない」

しかし、足はすでに腫れ始めている。

ジン

「でも、腫れてますよ!」

ブライ

「明日までに冷やせば何とかなる」

ジン

「看守さん、何とかならないんですか?」

看守

「怪我は自己責任だ」

「明日の作業を休めば、その分仕事が溜まる」

「ノルマは毎日変わらないからな」

ジン

【そこは歯車なのか……】

【死ぬわけじゃないから、それでいいのか】

ブライ

「大丈夫だって」

そう言いながら、ブライは足を引きずった。

帰りの檻の中。

小屋に戻ると、ラックがブライの足を見る。

ラック

「とりあえず冷やせ」

レイ

「明日休んだら、仕事が溜まるぞ」

「ここじゃ、それが一番きつい」

ブライ

「分かってる」

「何とかするよ」

ラック

「……ヒールがあればな」

ジンが顔を上げる。

ラック

「足も治るし、疲れも取れる」

レイ

「魔法使える奴なんて、この辺にいるわけないだろ」

ラック

「分かってるよ」

「ただ、あれば楽なのになって話だ」

ジンはブライの足を見る。

そしてラックを見る。

ジン

「ラックさん」

ラック

「ん?」

ジン

「魔法って……どうやって使うんですか?」

ラック

「魔力があれば勝手に使えるってわけじゃない」

「最初はイメージが大事なんだ」

ジン

「イメージ?」

ラック

「ああ」

「例えばブライの足なら――」

「腫れが引いて、痛みが消えて、元通りになるところを想像する」

「それから……」

ラックは冗談半分に言った。

「ヒールって唱える」

レイ

「おいおい、ジンに本気で教えるなよ」

ラック

「どうせ使えないって」

ジンは2人の言葉を聞きながら、ブライの足へ手を向ける。

ジン

【腫れが引く】

【痛みがなくなる】

【明日も普通に仕事ができる】

ジンは目を閉じた。

ラック

「……」

レイ

「……」

ブライ

「ジン?」

ジン

「…………」

そして――。

ジン

「ヒール」

眩い光が、小屋の中を包んだ。

一瞬。

いや――。

一瞬より、ほんの少し長く。

そして光が消える。

4人は黙っていた。

ジンはゆっくり目を開ける。

ブライ

「…………」

ラック

「…………」

レイ

「…………」

ジン

「……?」

ブライが、自分の足を見る。

さっきまで腫れていた足が――。

元通りになっていた。

ブライ

「……痛くない」

ラック

「…………おい」

レイ

「…………嘘だろ」

ジン

「治った……?」

ラックがジンを見る。

ラック

「お前……」

「魔法、使えるじゃねぇか……」

ジンは自分の手を見る。

ジン

「……使えました!」

3人はしばらく何も言えなかった。

そして――。

ラック

「お前、魔力持ちだったのかよ!!」

ジン

「……そうみたいです」

ジンは少し困ったように笑った。

けれど、その胸の中では――。

ジン

【魔法……】

【これがあれば……】

【もしかしたら、この生活……少しは楽しくできるかもしれない】

そんな小さな期待が生まれていた。

奴隷生活5日目。

ジンは、自分がこの世界で持っている最初の「力」を知った。

今後もよろしくお願い致します。

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