第4話 8号の歓迎
いつも読んでいただきありがとうございます。
ドアを開けた。
そこには――
3人の若い男がいた。
ジンを見る3人。
部屋の中央には、テーブル代わりの台が置かれている。
しかし、その上にあるのは食器だけだった。
料理はない。
ジン
【……やられた】
【思った通り……俺の飯、食べられた……】
ジンはドアの前で立ち尽くした。
すると、1人の男が立ち上がった。
男
「来たか」
「ちょっと待ってな」
男は台の下からトレーを取り出し、台の上に置いた。
そこには――
パン。
スープ。
サラダ。
そして、ゼリーのようなものまで乗っていた。
ジン
「これは……?」
男
「お前の夜飯だよ」
「無くてビックリしたのか?」
ジン
「……はい」
「食べられてしまったのかと……」
男
「そう思うよな」
「すまない」
「これ、8号の恒例行事なんだ」
「新入りが来たら、一度だけ飯がないと思わせる」
ジン
「……」
男
「俺はラックだ」
「お前は?」
ジン
「ジンです」
「よろしくお願いします」
ラック
「もっと凄いリアクションしてくれると思ったんだがな」
ジン
「すみません……」
「あまりにもショックで……」
別の男が呆れたように口を開く。
レイ
「ラックさん」
「やっぱり、この行事やめましょうよ」
「いつか本当に喧嘩になりますよ」
ラック
「そうか?」
レイ
「そうですよ」
レイはジンを見る。
レイ
「ジン、よろしくな」
「俺はレイ」
「そっちはブライだ」
ブライ
「よろしく」
ジン
「よろしくお願いします」
ブライ
「若いのに礼儀正しいな」
「とりあえず飯はあるんだから、先に食え」
「……いや、その前に」
ブライはジンを見る。
ブライ
「井戸で身体を洗ってこい」
「泥だらけじゃないか」
ジン
「あ……」
自分の服を見る。
土と汗で酷い有様だった。
ブライ
「それと、井戸の水は飲めないからな」
「絶対に口にするなよ」
ジン
「はい、分かりました」
ジンは小屋を出て、近くの井戸へ向かった。
身体についた泥を落とす。
冷たい水が疲れた身体に気持ちいい。
ジン
【……風呂じゃないけど、これだけでもかなり違うな】
身体を洗い終え、ジンは小屋へ戻った。
そして――
扉を開ける。
ジン
「…………」
また、料理がない。
ジン
「えっ?」
ラック
「ビックリした?」
ジン
「…………」
ラック
「ちゃんとあるよ」
レイ
「ラック、しつこいよ」
ブライ
「こんな子供に2回もやるなよ」
ラック
「すまん」
「でも、ちゃんとリアクションしてくれたからな」
ラックは笑いながら、隠していたトレーを台の上へ置いた。
ラック
「ほら、ゆっくり食べろ」
ジン
「……ありがとうございます」
ジンはようやく食事にありついた。
パンを手に取り、食べ始める。
ラック
「なあ、ジン」
「何歳だ?」
ジン
「10歳です」
レイ
「10歳?」
「親は?」
ジン
「います」
「子供が4人いて……」
「家計が苦しくなって、俺が売られました」
3人の表情が変わる。
部屋に重い空気が流れた。
ジン
「大丈夫です」
「俺はちゃんと納得して、ここに来ています」
「俺が家にいたら、家族みんなが路頭に迷ってしまうので」
3人
「…………」
ブライ
「……大人だな」
ジン
「それに、ここもそこまで酷くないですから」
「もっと殴られたり、ご飯が出なかったりするのかと思ってました」
ブライ
「この国じゃ、奴隷に対する暴力は法で禁止されてるんだ」
「仕事ができない場合も、無理に痛めつけるんじゃなくて奴隷商に返される」
「まあ……ここは最下層の現場だ」
「能力がない奴や、別の場所から戻された奴が来る」
「ここより下はないな」
ジン
「なるほど……」
「能力っていうのは?」
レイ
「読み書きや計算ができるとか、そういう能力だな」
「ちなみに女ならメイドなんかにもなれる」
ジン
「でも女性は……」
ラック
「それも法で禁止されてる」
「奴隷に性的なことを強要するのも犯罪だ」
ジン
【……】
【この世界、本当に底辺には優しい世界なのかもしれない】
もちろん、自由はない。
仕事もある。
ノルマもある。
でも――
無意味に傷つけられるわけではない。
食事もある。
水もある。
そして、今こうして話せる仲間もいる。
ラック
「一番いいのは、魔力持ちだな」
ジン
「魔力?」
ラック
「魔法が使える奴だ」
「奴隷だったとしても、国に雇われたり、冒険者に雇われたりする」
「一気に生活が変わるぞ」
ブライ
「魔力持ちが奴隷になる理由ないじゃないですか」
レイ
「本当だよ」
3人が笑う。
しかし――
ジンだけは笑わなかった。
ジン
【魔力……】
【魔法があるのか】
【家族はそんなこと、一言も言ってなかった】
【……もしかして】
【俺の家族には、魔力を持っている人間がいなかったのか?】
ジンは考え込む。
ブライ
「ジン」
「食べ終わったら、もう寝た方がいいぞ」
「明日も仕事だからな」
「もちろん、休みなんてない」
「自分で身体を管理しないと、本当に壊すぞ」
ジン
「はい、分かりました」
食事を終え、ジンは寝床へ向かった。
身体は疲れている。
だが、不思議と昨日まで感じていた不安は少し薄れていた。
ジン
【休みはないのか……】
【でも、ノルマさえ終われば自分の時間はある】
【毎日やるには少しキツいけど……】
【思っていたほど、悪い場所じゃないのかもしれない】
そして――
ジンの奴隷生活、最初の夜が終わった。
翌朝。
ラック
「起きろー!」
「仕事だぞー!」
ジン
「……もう朝!?」
レイ
「早くしろ」
ブライ
「まず飯食ってこい」
ジン
「はい!」
こうしてジンの、2日目の奴隷生活が始まった。
今後もよろしくお願い致します。




