第48話 飲み比べ
いつも読んでいただきありがとうございます。
翌日。
ジンとレイは、昨日オスカーから聞いた話をラックとブライには言わなかった。
まだ噂の段階だ。
2人を不安にさせたくないという気持ちからだった。
レイ
「今日も仕事終わらせて、酒飲みましょう」
ラック
「あれは本当にご褒美だよ。1日中飲んでたい」
ブライ
「ラックはコップ2杯だよ」
ラック
「例えだよ! ブライは1杯だったけどな」
4人で笑いながら檻に入り、現場へ向かう。
そして、いつもの様に働く。
ジンは午前中で仕事を終わらせていた。
昼食中。
ジン
「今日、トビーさんの所に酒を渡しに行ってきますね」
ラック
「そうだな。お世話になってるし、あの酒は色んな人に飲んでもらいたい」
レイ
「あれを飲んだら、普段の酒飲めなくなるけどな」
ジン
「それが問題ですよね」
昼食を終えると、ジンはトビーの元へ向かった。
ジン
「トビーさん、今日は贈り物を持って来ました」
トビー
「食料の頼みじゃないのか?」
ジン
「食料は足りてますよ。今日はトビーさんに酒を持って来ました」
ジンは葡萄酒の小樽を2つ持って来ていた。
片方には小樽いっぱいに葡萄酒。
もう1つには、小樽の半分ほどまで林檎酒のブランデーが入っている。
トビー
「作ったのか?」
ジン
「飲んでみてください。家族には好評だったんです」
トビー
「そうなのか! では、早速飲ませてもらうかな」
トビーは家からコップを持って来る。
小樽の栓を開け、葡萄酒を注いだ。
トビー
「普段の葡萄酒より香りがいいな! これは……美味いな!」
ジン
「まだ飲んでないですよ」
トビー
「俺の持論だ。匂いが良ければ美味い! いただくよ」
ゴクッ!
トビー
「…………なんだこれ……本当に葡萄酒か? いや! 本当にジンが作ったのか? 普段の葡萄酒より味が濃い」
ジン
「気に入ってもらえて良かったです」
トビー
「俺も作るかな……これは美味い!」
ジン
「トビーさん、オススメはもう1つの樽なんです」
トビー
「両方葡萄酒じゃないのか。では、頂こう」
トビーはもう1つの小樽の栓を開ける。
そして、酒を注ぐ前に驚いたように声を上げた。
トビー
「っ! なんだこの酒は! 匂いが!! ジン! なんだこの甘い香り! 林檎か? この前の匂いとは違う!」
ジン
「はい。トビーさんに買ってもらった林檎で作りました」
トビーはコップにブランデーを注ぐ。
トビー
「なんなんだ……酒なのか? 凄い綺麗な色、匂い……」
ゴクッ!
トビー
「…………美味い!」
ジン
「喜んでもらえて良かったです」
トビーは何も言わない。
ただ、ブランデーを飲んでいる。
ジン
「トビーさん?」
トビー
「…………」
ジン
「トビーさん!!」
トビー
「おっ! おぉ、どうした?」
ジン
「それはこっちのセリフですよ。酒を飲んでから喋らなくなってしまって」
トビー
「すまん。酒が美味すぎて、何も考えられなかった……」
トビーはブランデーを見つめる。
トビー
「ジン、あれは俺でも作れるのか?」
ジン
「うーん、蒸留装置があれば作れるかもです」
トビー
「蒸留装置??」
ジンは蒸留装置の作り方を最初から丁寧に話しながら教えた。
トビー
「冷やすのか……管を長くすれば、冷やすのは水でも可能か……」
トビーはしばらく考える。
トビー
「考えてみる。ジンのやり方もいいが、水で冷やすには難しいからな」
ジン
「そうですね。蓋に水は⋯⋯蓋の上に何に水を入れて冷やせばですが……なかなか」
トビー
「やってみるさ」
そして、トビーはいつものように聞く。
トビー
「食料、何か持って行くか?」
ジン
「そうですね。来たら、やっぱり貰っていきます」
ジンは肉、ミルク、野菜、卵をアイテムボックスに入れた。
その時だった。
トビー
「そうだ。この国は奴隷制度が廃止されるかもしれない」
ジン
「やっぱり、そうなんですか?」
トビー
「噂だが、多分なるな。俺は使ってないから良いけど、使ってる奴は悩んでるよ」
トビーは少し考えてから続ける。
トビー
「買ったのに、今度は金を払い続けなきゃいけなくなるからな。仕事出来る奴は残すが、その他はどうなるか……」
トビーの表情が少し曇る。
トビー
「山賊とかにならなきゃいいんだがな……」
ジン
「そうなんですね。教えてくれてありがとうございます」
ジンはトビーに別れを告げ、現場へ戻った。
オスカー
「戻ったか? 喜んでたか?」
ジン
「はい! 凄く気に入ってもらえました」
オスカー
「良かったな」
ジン
「はい。あと、あの噂……トビーさんも知ってました」
オスカー
「そうか……」
オスカーは少し黙る。
オスカー
「奴隷全員に伝わるのも時間の問題か。看守達も場所を気にせず話してるからな……」
ジンは黙ってオスカーの言葉を聞いていた。
まだ噂。
まだ何も決まっていない。
それでも、その噂は確実に広がっている。
ジン達の生活に、確実に大きなヒビが入った。
今後もよろしくお願い致します。




