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転生したら奴隷になりました[魔力を得て楽しく暮らます]  作者: アル治


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第45話  本当の恐怖

いつも読んでいただきありがとうございます。

ジンは、冷や汗と震えが止まらずにいた。


気を抜けば、意識すら飛びそうになる。


自分の身体のはずなのに、動かすことも、感覚すらもないように感じる。


ジンのその先には……。


猪の2倍はありそうな、真っ黒い犬。


いや、狼なのかもしれない。


その目には、生気を感じない。


冷たく、冷え切った目。


その目を見てしまったジンは、


【……死……】


それ以外は、何も感じなかった。


生きた心地がしない、なんてレベルではない。


もう、死しかない。


そんな感覚だった。


転生する前にも、感じたことのない感覚。


ジン

(…………)


何も考えられない。


いつ死が来るのか。


それを待つことしかできなかった。


たった1頭の魔物に、ここまで追い込まれた。


ジンは目を逸らすこともできず、ただ黒い獣を見続けていた。


黒い獣も、ジンを見ていた。


ジンには何時間にも感じられた。


だが、実際には10秒にも満たなかった。


そして、この状況は唐突に終わりを告げた。


黒い狼が動いた。


痙攣して地面に倒れている猪の首に噛み付いた。


ジンには、いつ黒い獣が動いたのかも、いつ目が合わなくなったのかも分からなかった。


気付いた時には、黒い獣が猪の首に噛み付き、肉を引きちぎっていた。


ジン

(……メ……トイ……キシ……ス……・パ……オ……)


何とか魔法を唱えた。


帰りたい場所は浮かんでいる。


文字も合っている。


だが、それを言葉として認識できていなかった。


ジンには、何も理解できない。


目の前では、殺戮が続いている。


1頭目の猪が息絶えた。


気付けば、上半身がほとんど無くなっている。


ジンの気持ちは焦っていく。


今すぐ、あの猪と同じになる。


それが目に見えていた。


ジンは意を決して、勢いよく息を吸った。


その瞬間。


黒い獣の耳が、ジンの方を向いた。


ジンは死ぬ気で、一気に唱えた。


ジン

(メトイキシス!・パオーー!!)


ジンが唱え終わり、移動するほんの一瞬。


黒い獣が口を開けた。


ジンの目の前に、黒い獣の牙が見えた。


次の瞬間。


ジンの姿は、その場から消えた。


オスカー

(お! 戻ったか? 成果はどうだった?)


ジン

(…………)


ジンは喋ることなく、ひたすら震えていた。


オスカー

(おい、どうした? 大丈夫か? 何があった?)


オスカーが何を話しかけても、何も返事がない。


オスカーは、これはヤバいと感じた。


何とかブライに伝える。


ブライは、残りの大量の仕事も何も気にせず、凄い速さで終わらせるとジンの元へ向かった。


ブライ

(ジン! おい! ジン! しっかりしろ!)


ジン

(…………)


ブライの呼び掛けにも、何も反応しない。


ブライ

(まさか! 魔力を使い切ったのか? ジン?)


それでも、ジンの反応はなかった。


小屋に戻る時間が近付いた頃、ラックとレイもジンの元へ来た。


2人は、ジンがそんな状態になっていることを知らなかった。


オスカーがラックとレイの近くへ行けない持ち場だったからだ。


ラックとレイは、ブライの様子がおかしいことに気付くと、走ってジンの元へ向かった。


ラック

(ジン! どうした?!)


レイ

(大丈夫か?! ジン!)


ジンは、2人の問い掛けにも答えられない。


レイ

(ブライ! ジンはどうしたんだ?)


ブライ

(分からない! 俺が来たら、この状態だった。魔力を使い切ったのかな?)


レイ

(それなら疲労とかで寝る気がする。ただただ怯えてるように見える)


現場での仕事が終了時間を迎える。


それでも、ジンは動かない。


ただ、震えているだけだった。


ラック

(俺が運ぶ)


ラックがゆっくりとジンに触れる。


すると、ジンの身体が大きく動いた。


触られたことに対する反応だった。


ラックはその反応に驚き、手を遠ざけてしまう。


だが、今度はジンの身体から手を離さなかった。


ジン

(…………)


ジンの震えは止まらない。


それでも、ラックの手には少しずつ慣れてきたようだった。


ラックはジンを抱き抱えたまま檻に入り、そのまま小屋まで運んだ。


レイ

(ジン! しっかりしろ! 小屋に戻ってきたぞ!)


ラック

(水だ! 飲め、ジン! ゆっくり、慌てるな)


ラックはジンの口元まで器を持っていき、器を傾けた。


ジンは差し出された水を、ゆっくり。


本当にゆっくりと口に入れ、飲み込んだ。


ジン

(…………)


ジンは器を手にすると、一気に水を飲み干した。


ジン

(……ゲボッ! カハッ!)


しかし、気管に入ってしまい、むせてしまう。


ラック

(落ち着けジン! 水はまだある! 落ち着け!)


ジン

(…………ラック?)


ラック

(そうだ! 俺だ、ラックだ! レイもブライもオスカーもいるぞ!)


ジン

(…………ラック……レイ……ブライ……オスカー……)


ジンは、みんなの名前を呼んだ。


すると、涙が流れた。


ジン

(うわぁー! ヒッ! ヒッ!)


ジンは泣き出してしまった。


ラック

(ジン!)


ラックがジンを抱きしめる。


レイも、ブライも、オスカーも。


みんなでジンを抱き締めた。


ジンが泣き出してから、数分が経った。


ようやくジンは、話ができるまで落ち着いた。

今後もよろしくお願い致します。

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