第41話 蒸留装置と初めてのお酒
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次の日の夜。
ジンは夜ご飯とお風呂を簡単に済ませた。
とはいえ、食事は決して質素なものではない。ヴィソーンの肉と野菜の炒め物に、魚のムニエルまで用意していた。
レイ
「ジン、ちゃんと食べたか?」
ジン
「はい、大丈夫です」
食事を終えたジンは、さっそく【ヴラホス】を使い、大きな岩を生み出した。
そして、新しい鍋と蓋を作り始めた。
ジン
「これが出来れば、濃いお酒が作れますよ」
オスカー
「ついに飲めるのか?」
ジン
「ええ! ラックが教えてくれました」
ラック
「……? 俺……?」
ジン
「はい。ガラスがなきゃ作れないと思っていたんですが、ラックが昨日教えてくれたので、何とか作れそうです」
ブライ
「ラック! 凄いな!」
ラック
「……ま、まぁな……。俺ならこれくらい」
レイ
「はいはい。ラックも分かってないでしょ?」
ラック
「……まったく……。ジンの助けになったなら、それでいいんだが」
レイ
「そうですね。結局、ジンに頼ってしまいますからね」
ジン
「そんなことないです。自分に出来ることをしてるだけです」
オスカー
「相変わらず、謙虚と言うか何と言うか……」
レイ
「鍋は今日完成しそうなのか?」
ジン
「そうですね。鍋は今日出来ますが、蒸留は明日以降ですね」
ジンは【シエラ】と【アエラス】を使い、岩を丁寧に削っていく。
鍋の外側だけでなく、内側も綺麗に整えていった。
五人が普段使っている鍋とは違い、今回は蒸留を目的とした特別な形にする必要がある。
ジンは何度も形を確認しながら、黙々と作業を続けた。
やがて、みんなが眠りについた後も、ジンは一人で岩を削り続けた。
そして、何とか形になったところで、ようやく床についた。
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翌朝。
レイ
「ジン、完成させたのか……。でも、なんだこの形?」
目の前には、見慣れない形の鍋が置かれていた。
レイ
「鍋の中に器? しかも、蓋の形が逆なのでは?」
ジン
「蒸留を目的としてますからね」
レイ
「ジン、起きたのか?」
ジン
「はい。おはようございます」
レイ
「おはよう。で、どう使うんだ?」
ジン
「外側に林檎酒を入れて火に掛けて、蒸発させます」
「蒸発したものが蓋に付くので、蓋の上に氷を置いて冷やして液体に戻すんです。水滴となって、真ん中の器に貯まる……そんな装置です」
レイ
「……まったく分からないが……この鍋の真ん中の器に、欲しい酒が溜まるんだな?」
ジン
「そうなります。試してみないと分かりませんが」
「ラックのお陰で、この装置に気付けたので」
「ガラスを作ることも出来ますが、好きな形にするのが難しすぎますから……」
レイ
「場所がないからな……。俺達、奴隷だからな」
ジン
「アハハッ、そうですね。全て自由にはならないですよね」
「でも、出来ることはやって、快適に暮らさないと」
レイ
「頼むな、ジン」
ジン
「はい!」
ラック
「話は済んだか?」
レイ
「ラック、いつから?」
ラック
「最初の方から起きてるよ。ブライも」
ブライ
「とりあえず、今日の仕事を片付けて、ジンの目指す酒を飲もうぜ!」
レイ
「だな!」
ジン
「仕事、片付けちゃいましょう!」
ラック
「行こう!」
4人は小屋を出て、いつもの現場へ向かった。
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その日の夕暮れ。
仕事を片付けた4人が小屋へ戻ると、さっそく蒸留の準備が始まった。
ラック
「ジン、周りに林檎酒は入れたぞ」
ジン
「ありがとう。火に掛けておきますね」
「それと、蓋の上には【パゴス】で氷を置いて、後は様子を見ながらですね。林檎酒は時々足していきます」
ブライ
「任せろ! 俺がやっておく」
オスカー
「やってるな。それにしても、酒の匂いが強くなってるな、この小屋」
ジン
「蒸留中だから、余計ですね」
オスカー
「匂いが滞るな。良くないな……。裏口を開けておくぞ」
ジン
「そうですね」
ジンは【アエラス】を使い、小屋の中に風を起こした。
酒の匂いが外へ流れていく。
ラック
「もう、魔法は自由に使えるようになったな」
ジン
「毎日使ってますからね。応用が利くようになりました」
ラック
「頼もしいな」
レイ
「今日の飯はどうする?」
ジン
「何か食べたい物ありますか?」
オスカー
「最近、重い料理が続いてるから、焼き魚とかがいいんだが……」
ラック
「それは俺も思ってた。毎日肉も嬉しいが、あっさりいきたい」
ブライ
「オスカーもラックも歳だな」
ラック・オスカー
「なっ!」
ラック
「……否定が出来ないかも……」
オスカー
「俺もだ……」
ブライ
「あれー? もっと違う風に来ると思ってたのに……。なんかすまない……」
ジン
「魚を出して焼きましょう。魚も生で食べられればいいんですがね」
レイ
「ッ! 魚を! 生で? ジン! 正気か? 魚は生で食べれば死ぬぞ!」
ジン
「うーん、種類と鮮度によりますよ。今の魚は無理ですが、違う魚、もしくは場所が違えば食べられます」
レイ
「……絶対嫌だ!」
ジン
「美味しいのに」
レイ
「命あってのものだ」
ブライ
「ジン、林檎酒、結構溜まったぞ。氷が小さくなってる」
ジン
「はい!」
ジンは蒸留装置の様子を確認し、氷を追加した。
それから料理を作り上げ、五人は夕食を楽しんだ。
焼き魚を中心に、野菜も添えられた、いつもよりあっさりとした食事だった。
食事を済ませた後、ジンは蒸留装置の方へ向かった。
鍋の中央に置かれた器には、半分以上の液体が溜まっていた。
ジン
「少しあるので、味見してみましょう」
ジンは集まった液体を5人分に分けた。
オスカー
「林檎の香りだな」
ラック
「色が変わったくらいか?」
ブライ
「甘くなってたりして」
レイ
「飲んでみよう」
5人はそれぞれ、手元の器を見つめた。
初めて作った、蒸留した林檎酒。
果たして、どんな味がするのだろうか。
ジン
「では……食べましょう」
5人は、ゆっくりと器を口元へ運んだ。
今後もよろしくお願い致します。




