第31話 飲み過ぎ
いつも読んでいただきありがとうございます。
数日間、質素な生活が続いた。
――と言っても、他の奴隷たちと比べれば天と地ほどの差がある。
それでも、贅沢な食事に慣れてしまった4人には、質素に感じられていた。
ラック
「2日に1回しか食べられなくなったな……」
レイ
「仕方ない。ここでバレたら……」
ブライ
「そうだよ、ラック。ここでバレたら、二度と食べられなくなるぞ……」
ラック
「判ってるよ……」
そんな中、ジンはワインと林檎の樽を確認し、風魔法で中身を撹拌していた。
ジン
「……林檎の方がいいかも……」
レイ
「ジン……どうした?」
ジン
「林檎の方が飲めるかもしれないです。熟成が足りないかもしれませんが……」
ラック
「本当か!?」
「飲めるなら飲みたい!」
レイ
「ラック、ちょっと待て!」
「ジン、状況は?」
ジン
「今、調べます」
ジンは林檎の樽へ手を向ける。
「ギノースコー」
ラック
「ジン……どうだ……?」
ジン
「ラック……」
ラック
「ダメだったか……」
ジン
「…………出来てます!」
ラック
「…………そっか……」
「……んッ?」
「今、なんて言った!?」
ジン
「アルコール、低いですが出来てますよ!」
ラック
「やったのか……?」
「俺達は……やったんだな?」
ジン
「はい! 酒ですよ!」
4人は、大いに喜んだ。
レイ
「やったよ! ジン! やったな!」
ジン
「やりましたね!」
「ワインはまだですけど」
ブライ
「ワインは後だ!」
「今は林檎の酒を飲もう!」
ジンは林檎の樽を封印していた石を解除し、蓋をアイテムボックスへ収納する。
ジン
「甘い香りですね」
レイ
「そうだな……これが酒なのか?」
ジン
「間違いなく酒です」
ブライ
「飲めば判るよ」
ブライは夜ご飯のスープを入れる器を洗い、林檎の酒をすくった。
そして、そのまま器に口を付ける。
ブライ
「……ゴクッ!」
3人
「ブライ?」
ブライ
「…………ジュース?」
「ビールみたいだけど……酒?」
「甘いからかな??」
ラック
「俺にも飲ませてくれ!」
ラックはブライから器を受け取り、口を付ける。
「ゴクッ! ゴクッ!」
「シュワシュワしてるけど、確かにジュースみたいだな」
レイもジンも飲んでみる。
レイ
「確かにジュースに近いけど……ちゃんと酒だな」
ジン
「……ッ!」
「そんなに軽くないですよ……」
ラック
「ジンにはキツかったか?」
「これぐらいじゃ、ジュースだぞ」
ブライ
「だね!」
「ゴクッ!」
「これは完全にジュースだよ!」
「ゴクッ! ゴクッ!」
レイ
「ブライ、気を付けろ」
「甘いから飲みやすい。気付いたら回るぞ」
ブライ
「何言ってるの!」
「こんなジュースで酔うわけない!」
「ゴクッ! ゴクッ! ゴクッ!」
「アッー!」
「ジュースでも、このシュワシュワはいいね!」
「久しぶりだ!」
ラックとブライは、そのまま飲み続けた。
レイは少しずつ、自分のペースを守っている。
ジンはというと、体の問題なのか、元々の酒の強さなのか――数口飲んだだけで、すでに酔いが回っていた。
そして、しばらくするとラックとブライにも変化が現れ始める。
ラック
「…………ブライ……もっと飲めぇ〜」
ブライ
「ラック……ジュースなのに……どうした?」
レイ
「2人とも、もう飲むな」
「完全に酔ってるだろう?」
ラック
「酔ってないし……!」
「甘い酒で……酔うわけ……ない」
レイ
「酔ってるよ……」
「ブライも……」
「……ブライ?」
ブライ
「すー……ふー……ぐー……」
ブライは、その場で寝ていた。
レイ
「…………ブライ」
「酔って寝るのかよ……」
レイはブライに布を掛ける。
レイ
「ジン、ブライを……」
ジン
「くー……スー……すー……」
レイ
「ジンもか!」
「…………まさか?」
ラック
「ぐー……ごー……ぐっ……ぐー……」
レイ
「やっぱりか……」
レイは2人にも布を掛け、自分は寝床へ入った。
久しぶりの酒。
しかも甘くて飲みやすい酒に負けた3人だった。
翌日
レイ
「おーい! 起きろ」
ジン
「…………おはよう」
ラック・ブライ
「………………」
レイ
「ラック、ブライ、起きろ!」
ラック
「ッ!」
「大きい声出さないでくれ……」
ブライ
「……頭痛い……」
レイ
「……まさか」
「酒の飲み過ぎか?」
ジン
「……間違いなく二日酔いだ……」
「経験あるな……」
レイ
「ジンは?」
ジン
「俺は大丈夫!」
レイ
「2人とも、朝飯は?」
ラック・ブライ
「……要らない……」
レイ
「仕事は?」
ラック・ブライ
「行けない……」
レイ
「全く!」
「ジュースじゃなかったのか?」
「目を付けられてるのに、休みか?」
ラック
「すまない……」
ブライ
「ごめんなさい……」
ジン
「今日は仕方ないですよ」
「目を付けられてるのは俺だろうし、今日はレイと2人で仕事に行きましょう」
レイ
「ジン……少し甘いぞ!」
「居ない間に、色々足りないものを作っておいてくれよ」
ラック・ブライ
「はい……」
レイ
「ジン、酒をちゃんと収納しておいてくれ」
「この2人、もしかするとまた飲むかもしれない」
ジン
「判った」
ラック
「この状況でもう飲まないよ……」
ジン
「…………」
【迎え酒は無理か】
ジンとレイは、檻に向かって歩いていく。
看守
「今日は2人休みか?」
レイ
「はい。風邪ですかね、頭が痛いと」
看守
「そうなのか……」
看守はそう言うと、ジンを見る。
ジン
「俺の風邪が移ったのかもしれません」
看守
「そうだな」
「4人で1つの小屋だからな。移ったのかもな」
「すまんな」
レイ
「いえ、看守さんが謝ることじゃないですよ」
看守
「俺は、オスカーだ」
ジン
「オスカーさんが謝ることじゃないですよ」
「注意不足でした」
オスカー
「俺が残るから、お前達は仕事してこい」
レイ
「ありがとうございます、オスカーさん」
ジン
「行ってきます、オスカーさん」
オスカー
「おう!」
「行ってこい、気を付けてな」
レイ・ジン
「はい」
2人は、1日しっかりと働いた。
移動するチャンスはあった。
しかし、守り役のブライがいない。
それに、オスカー以外にも目を付けられている可能性がある。
ジンは、今日は移動しなかった。
そして2人は仕事を終え、檻から小屋へ戻る。
すると――
オスカー
「お前達!」
「少し話がある」
レイ
「はい」
「2人に何かありましたか?」
オスカー
「2人と言うか……4人にだな」
ジン
「なんですか?」
オスカー
「ちょっと向こうまで来い」
レイとジンは、オスカーの後ろを歩いていく。
ジン
【何か勘付かれた……?】
【場所を変えて話すのは初めてだ……】
しばらく歩くと、オスカーが足を止めた。
オスカー
「この辺りでいいか」
レイとジンも立ち止まり、オスカーを見る。
オスカー
「お前達4人、何をしている?」
レイ
「何って……奴隷として働いてます」
オスカー
「聞き方を変える」
「小屋の中で、何をやってる?」
ジン
「ご飯食べて、話して、寝てます」
オスカー
「…………本当に?」
「それだけか?」
「ここには俺しかいない」
「本当に、それしかしてないか?」
ジンとレイが黙ってしまう。
オスカーは、2人の反応をじっと見る。
そして――
オスカー
「小屋の床に、これがあったんだが!」
オスカーの手の中には――
何かが握られていた。
今後もよろしくお願いします。




