第2話 奴隷商会
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翌朝。
ジンは父親と一緒に家を出た。
家の前では、母親が泣きながらジンを抱き締めている。
母
「ジン……」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
ジン
「お母さんは悪くないよ」
「大丈夫。俺は平気だから」
何度も母親を慰める。
それでも母親の涙は止まらなかった。
ジンは最後に母親を強く抱き締める。
そして――父親と2人で歩き始めた。
奴隷商会までの道。
父親は何度もジンに話しかけた。
昔、一緒に遊んだこと。
家族で食事をしたこと。
弟が生まれた日のこと。
楽しい思い出は、いくらでもあった。
だからこそ、父親はほとんど口を開けなくなっていた。
やがて――
父
「ジン……」
「着いたよ……」
目の前には奴隷商会の建物。
奴隷商会の男
「おー、来たな」
「確か10歳だったな?」
父
「……はい」
奴隷商会の男
「子供を手放すのはキツいよな」
「でも、お前が決めたことだ。責任はお前にある」
父
「……はい」
ジンは父親の前に出た。
まるで、父親を庇うように。
奴隷商会の男
「小僧、親父を守りたいんだろうがな」
「こいつが悪いんだぞ?」
「自分の子供を売るんだからな」
ジンは何も言わなかった。
ただ、父親の前から退かなかった。
父親は金を受け取る。
最後にもう一度、ジンを抱き締める。
ジン
「今までありがとう、お父さん」
父親はジンを強く抱き締めた。
父
「すまない……」
「恨んでくれて構わない……」
「全部、俺が悪い……」
ジン
「恨まないよ」
「お父さん、今まで俺を育ててくれてありがとう」
ジンは優しく笑った。
父親は何も言えなかった。
ただ、何度もジンを抱き締めた。
そして――
父親はジンを残し、帰っていった。
何度も振り返りながら。
ジンは最後まで笑顔で手を振った。
父親の姿が見えなくなってから、ジンは奴隷商会の男を見る。
奴隷商会の男
「さて……」
「お前は能力がないから、土木系の開拓地に行ってもらう」
ジン
「分かりました」
奴隷商会の男
「女だったり、能力があったりすれば、また違ったんだがな」
「まあいい」
「馬車が来るから、それに乗れ」
「仕事のことは向こうで聞いて覚えろ」
ジン
「はい」
ジンは言われるまま外へ出た。
ジン
【……能力?】
【能力、能力って何なんだ?】
【この世界には、何か特別なものがあるのか?】
しばらくすると、1台の馬車がやって来た。
その後ろには檻が取り付けられている。
中には数人の若い男たちがいた。
奴隷商会の男
「挨拶して乗れ」
ジン
「はい」
ジンは檻の中に入り、頭を下げる。
ジン
「よろしくお願いします」
奴隷の男
「……随分若いな」
別の男
「10歳くらいか?」
ジン
「10歳です」
男
「ここから行く場所は重労働だぞ?」
ジン
「はい」
「でも、他にないみたいなので」
男
「能力がないのか……」
ジン
【また能力……】
【やっぱり何かあるんだな】
やがて馬車は走り出した。
しばらくして――
目的地に到着する。
檻から出されたジンが目にしたのは、広大な山だった。
そこでは何人もの奴隷が働いている。
石を運ぶ者。
木を切る者。
土を掘る者。
開拓作業は想像していた以上に大変そうだった。
だが――
ジン
【……鞭を持った人はいない】
ゲームやアニメで見たような、
「働け!」
と怒鳴りながら鞭を振り回す人間もいない。
ジンが周囲を見回していると、近くにいた奴隷が話しかけてきた。
奴隷
「初めてか?」
ジン
「はい」
奴隷
「殴られたりはしない」
「助けてもくれないけどな」
「ここは全部、自己責任だ」
「働かなければ、後で自分が大変な目に遭う」
「だから……ちゃんと働けよ」
ジン
「はい」
ジンは山を見上げる。
ジン
【思っていたより……酷くはないのかな】
もちろん、この時のジンは知らなかった。
ここで出会う3人の奴隷――
ブライ。
レイ。
ラック。
そして――
自分の中に眠る「魔力」の存在を。
こうして、ジンの奴隷生活が始まった。
今後もよろしくお願いします。




