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転生したら奴隷になりました[魔力を得て楽しく暮らます]  作者: アル治


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第23話  ヴィソーン

いつも読んでいただきありがとうございます。

ジンは、岩の上でじっと待っていた。


しばらくすると――


ガサッ!


ドスン!


ガサッ!


草を踏みつける音。


そして、地面を強く踏みつけるような音が聞こえてくる。


ジン

(ちゃんと来たか……)


(今度は逃げない!)


やがて、森の奥からヴィソーンの姿が見えてきた。


その姿を目にした瞬間――


ジンの身体が、また動かなくなる。


戦った経験などない。


それでも、まるで歴戦練磨の達人と対峙しているような感覚だった。


ジン

(……やっぱり凄い……)


(足が震える……冷や汗が止まらない……)


(……勝てるのか……?)


一瞬、弱気になる。


しかし――


ジン

(いや! 勝つ!)


(こっちの方が有利なはずだ!)


ジンには作戦があった。


ヴィソーンを川の中へおびき寄せる。


そして川の水を凍らせ、身動きを封じる。


動けなくなったところを、風魔法か岩魔法で仕留める。


それがジンの作戦だった。


そして、もう一つ。


まだ確信はない。


だが、ジンには気になることがあった。


ヴィソーンは、もしかすると視力があまり良くないのではないか。


前回、目が合ったはずなのに、ヴィソーンはゆっくりとしか近付いてこなかった。


あの時も、ジンが風魔法を唱えようとした瞬間にヴィソーンが反応した。


もしかすると――


目で見ているのではなく、僅かな魔力を感じ取って近付いてきたのではないか。


あくまで推測だ。


ジン

(……これでダメなら撤退して、作戦を練り直す……)


(いくぞ!!)


ヴィソーンは川の近くまでやって来た。


しかし――


川の中には入ろうとしない。


ジン

(仕方ないな……)


(アエラス!)


ジンが手をかざし、風魔法をヴィソーンへ向けて放つ。


シュッ!!


風の刃がヴィソーンへ直撃する。


「グォッ!」


ヴィソーンの腕が、少し切れた。


ジン

(ッ!)


(切れた!)


(倒せる!)


「ウォォォォー!!」


ヴィソーンが雄叫びをあげる。


その声と同時に、ヴィソーンはジンの作った岩へ向かって突進してきた。


ドォン!!


ジン

(ウッ!)


ジンは必死に岩へしがみつく。


魔法で生み出した岩だったが、ヴィソーンの体当たりによって、岩には大きなヒビが入った。


ジン

(この岩にヒビを入れるか……)


そして、ジンは気付く。


(川に入ったな……)


ヴィソーンの足は、すでに川の中へ入っていた。


ジンは川へ手を向ける。


ジン

(パゴメノス・ティホス!)


ジンが魔法を唱える。


その直後――


ヴィソーンが、さらに岩へ体当たりをした。


しかし、その瞬間。


川が一気に凍りついた。


バキバキバキッ!!


ヴィソーンの足ごと、川の氷が包み込んでいく。


ジン

(ヨシッ!)


(作戦通り!)


しかし――


ヴィソーンは動きを止めなかった。


「グォォォォ!!」


ヴィソーンは両手を振り下ろし、凍った川の氷を殴り始めた。


バキッ!


氷に亀裂が走る。


ジン

(知性はあるか……)


(早めに決めないと、叩き割られるな!)


ジンはヴィソーンへ手をかざす。


ジン

(ッ! シエラ!)


――しかし。


ジンはためらった。


前世でも、今でも。


豚肉を食べてきた。


牛肉も食べた。


魚も食べてきた。


それでも――


自分より大きな生き物を、自分の手で殺す。


それを平然とできる方が、異常なのではないか。


ジン

(…………)


「グオォォォォッ!!」


ヴィソーンが雄叫びをあげた。


そして――


ドサッ!


ヴィソーンの身体が、凍った氷の上へ左肩から落ちた。


氷が赤く染まる。


ヴィソーンは右手で左肩を押さえている。


ジン

(…………)


ジンは、ヴィソーンを見続けてしまっていた。


そして――


ジン

(同じ……)


(人間と……同じ……)


ヴィソーンの姿を見ているうちに、ジンの狩る気持ちは失せていった。


殺したくない。


そう思ってしまった。


ジンは悩んだ。


それでも――


ヴィソーンへ手をかざす。


ジン

(ヒール……)


魔法がヴィソーンを包み込む。


出血が止まる。


しかし――


切り落とされた腕が、元に戻ることはない。


ヴィソーンは何が起きたのか分からず、動きを止めた。


ジン

(俺は……何をしている……)


(魔物の腕を切り落として……)


(治療……)


(何やってる……俺……)


ジンはヴィソーンの左肩を見つめる。


ジン

(……腕が無かったら……)


ジンは、もう一度手をかざした。


そして考える。


イメージする。


頭の中に浮かんだものを、そのまま形にする。


ジン

(メガロス・ヒール……!)


ジンが、その言葉を唱えた瞬間――


ヴィソーンの切り落とされた左腕が、元の状態へと戻った。


「……?」


ヴィソーンは、自分の左腕を見つめる。


何が起きたのか、理解できない。


しかし――


次の瞬間。


ヴィソーンは両手で凍った川を殴り始めた。


バキッ!


バキバキッ!


氷が割れる。


そしてヴィソーンは自由になると、そのまま森の奥へと逃げ帰っていった。


ジンは、ヴィソーンの姿をただ見送った。


そして――


ジンはヴィソーンの左腕をアイテムボックスへ入れる。


ジン

(勝った……よな?)


しばらくの間、ジンはその場に呆然と立っていた。


だが――


照りつける日差しの強さにハッとする。


ジン

(……!)


気付けば、かなり時間が経っていた。


ジンは急いで移動魔法を使い、小屋へ戻った。


昼。


そして夕方。


看守が来るたびに、いつも通り対応する。


そしてジンは――


三人の帰りを待った。

今後もよろしくお願い致します。

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