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転生したら奴隷になりました[魔力を得て楽しく暮らます]  作者: アル治


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第17話  ヴィソーン

いつも読んでいただきありがとうございます。

しばらくの間、ジンは放心していた。


あの魔物の目が、頭から離れない。


ジン

【……怖かった】


しかし、すぐに我に返る。


ジン

【ッ! 看守が来ちゃう!】


ジンは慌てて布団をめくり、中に入れていた石や枝をアイテムボックスへ収納する。


ジン

【……とりあえず、これで大丈夫】


片付けが終わった、その時。


ガチャッ。


小屋のドアが開いた。


看守

「少しは良くなっ――」


「どうした!?」


「汗だくじゃないか!」


ジンは川から戻ったばかりだった。


服が濡れているだけではない。


冷や汗が止まらず、身体もまだ震えていた。


ジン

「だ、大丈夫です……」


「もう少し寝れば治ります……」


看守

「そうか?」


「すまないが、こっちは何もしてやれないからな……」


ジン

「分かってます……ありがとうございます」


看守は小屋を出る。


そして、振り返ることなく言った。


看守

「……死ぬなよ!」


ジンは小さく頷いた。


看守が出ていくと、ジンはその場に座り込む。


ジン

「……ヒール」


身体の疲れと痛みを癒す。


体調は落ち着いた。


それでも――。


ジン

【あの目……】


【なかなか忘れられないな……】


やがて夕方。


3人が小屋へ戻ってきた。


ラック

「ジン!」


レイ

「大丈夫か!?」


ブライ

「どうしたんだ?」


3人は、ジンの顔を見るなり異変に気付いた。


ジン

「……お帰りなさい」


「大丈夫です」


ラック

「……何があった?」


ジン

「……魔物に……会いました」


ブライ

「肉を手に入れたのか?」


ラックとレイが、もの凄く冷たい目でブライを見る。


ブライ

「…………」


「……すみません」


3人は改めてジンを見る。


ジン

「……倒せませんでした」


「牛……?」


「バッファロー……?」


「そんな感じの魔物が、2本足で歩いてました……」


ラック

「牛か⋯⋯バッファローってのは分からないけど……」


「たぶん、ヴィソーンだな」


ジン

「ヴィソーン……?」


ラック

「かなり強い魔物だ」


「肉はかなり美味いらしいけどな」


ジン

「……魔法を使おうとしたら、場所がバレて……」


ラック

「ヴィソーンは魔法に敏感らしい」


「魔力と何か関係があるのかもしれないな」


ジン

「……すみません」


「肉……取れなくて……」


ラック

「そういう意味で言ったんじゃない!」


思わず声が強くなる。


ジン

「ッ……!」


ジンの身体がビクッと震えた。


レイ

「ラック!」


ラック

「……すまない」


「ジン、お前は悪くない」


「ヴィソーンは、普通はパーティーを組んで倒すような魔物だ」


「いくらジンが魔法を使えても、1人で立ち向かう相手じゃない」


ジン

「…………」


レイ

「今日はもう飯食って寝よう」


ブライ

「魚……」


ラック

「ブライ」


「今日は我慢しよう」


「いつもの奴隷飯でいい」


ブライ

「……はい」


3人はジンを気遣いながら、いつもの生活へ戻っていった。


その夜。


ジンは眠る前に、今日のことを考えていた。


ジン

【俺の考えが甘かった……】


【魔物だって生きてる】


【死にたいわけじゃない】


【俺には……命を奪う覚悟が足りなかった】


そして、もう1つ。


ジン

【魔物は魔法に反応する】


【でも、あいつはすぐに襲ってきたわけじゃない】


【魔法を使う前から近付いてきたわけじゃない……】


【なら、動きを封じれば……】


ジンは布団の中で目を閉じる。


ジン

【次はやれる】


【……いや】


【やる】


【でも、無茶はしない】


【勝てると思える作戦ができた時だけだ】


そう決意し、ジンは眠りについた。


翌朝。


3人が起きると、ジンは全員にヒールを掛けた。


レイ

「ジン、大丈夫か?」


ジン

「はい!」


「もう大丈夫です」


「魔物も……次はやります!」


ラック

「ジン!」


ジン

「ッ!」


ラック

「命を賭けるようなことはするな!」


「俺達が肉、肉って言ってたのが悪い」


「肉なんかのために、ジンが命を掛ける必要なんてない!」


「肉は忘れろ!」


いつもなら何か言い返すブライも、今日は何も言わなかった。


レイも同じだった。


ジンに何かあってからでは遅い。


ジン

「ラック!」


「命は掛けません!」


「次は、ちゃんと作戦を考えてから行きます!」


「ラック、信じてください!」


「俺は勝って帰ってきます」


「そして、みんなに肉を食わせます!」


ラック

「…………」


「……ジン」


「作戦がダメだと思ったら、すぐ戻ってこい」


「確実にいけると思った時以外は、絶対に戻ってこい」


ジン

「分かってます!」


小屋の中に、張り詰めた空気が流れる。


すると――。


ブライ

「今日は土運び、2日分だけどな」


ジン

「……ハハハッ」


「そうですね」


「さすがに今日も探索には行けないです」


「土運び、頑張ります!」


ラック

「よし、今日は真面目に働くぞ」


レイ

「いつも真面目だけどな」


ブライ

「俺はいつだって真面目だぞ?」


ラック

「それはどうかな」


「お前、昨日まで肉しか言ってなかっただろ」


ブライ

「…………」


「今日は言わない!」


4人は笑いながら檻へ入った。


現場に着くと、それぞれ仕事に取り掛かる。


ジンにも2日分の土運びが待っている。


さすがに1日で2日分を終わらせるわけにはいかない。


今日は少しだけ多め。


1.5日分ほどの仕事をこなす。


そして――。


その日の夜。


仕事を終え、小屋へ戻る。


ジンは、昨日作った石鹸を確認した。


指で少し触れてみる。


ジン

「……固まってる」


ラック

「お?」


レイ

「使えるのか?」


ブライ

「……食える?」


ジン

「食べ物じゃありません!」


3人

「ハハハッ!」


ジン

「じゃあ……」


「使ってみましょうか」


4人にとって、初めて作った石鹸。


それは、奴隷生活の中で手に入れた、小さな贅沢だった。

今後もよろしくお願い致します。

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