第15話 初めての探索
いつも読んでいただきありがとうございます。
探索の日。
朝食を食べ終えた3人は、小屋を出ると檻の前まで向かった。
ラック
「看守さん、すみません」
看守A
「ん?」
ラック
「8号のジンが熱を出して寝込んでます」
看守A
「分かった」
看守Aは、他の看守たちのところへ向かった。
看守A
「8号、今日は1人居残りだ」
看守B
「分かった。シナゲルを掛けておく」
看守A
「では、私が残ります」
看守B
「役得だな」
看守A
「変わろうか?」
看守B
「いや、俺には退屈すぎる。現場の方が楽だ」
看守A
「ありがとうございます」
話が終わると、奴隷たちは檻の中へ入っていく。
その一方で、看守Aは8号の小屋へ向かった。
看守A
「入るぞ」
扉を開けた瞬間、看守は眉をひそめた。
看守A
「……なんか焦げ臭いな」
「魚……?」
ジン
「看守さん……すみません。俺のせいで……」
看守A
「ああ、大丈夫だ。俺も少し楽できるからな」
ジン
「すみません」
看守A
「昼と夕方に確認に来るから」
ジン
「分かりました。ありがとうございます」
看守が小屋を出ていく。
看守A
「……夜は魚食おう」
ジン
【……バレたかもしれないな】
それでも今は、みんなのために探索を優先する。
ジン
【行こう】
ジンはすぐに移動魔法を使い、川へ向かった。
川へ着くと、魚と蟹を確保する。
そして――。
ジン
【歩いていては時間が掛かるか……】
ジン
「パゴス」
川面に氷が生まれる。
1度、2度と魔法を使い、人が乗れるほどの大きさにする。
ジン
「よし。これに乗って川を下ろう」
氷の上に乗り、川の流れに身を任せる。
途中で見つけた木の実の場所も確認しておく。
ジン
【場所さえ分かれば、いつでも移動できる】
しばらく川を下っていると、前方に小さな村が見えてきた。
畑には小麦や野菜が植えられている。
ジン
【農業で生活している村なのかな】
ジンは少し迷った。
ジン
【見つかるのはマズいのかな……】
しかし、自分が奴隷だと証明するものは何もない。
ジンは氷から降り、畑仕事をしている初老の男性へ声を掛けた。
ジン
「すみません」
村人
「どうしたんだい? どこの子だ?」
ジン
「実は……野菜と小麦が欲しいんですが……お金がなくて……」
村人
「そうか……」
村人は少し考える。
村人
「売り物にならない、形の悪いものなら少しくらいあげられるよ」
ジン
「本当ですか? ありがとうございます!」
「でも……悪いので、川で取れた魚と交換してもらえませんか?」
ジンは枝に刺した魚を5匹ほど差し出した。
村人
「よく取れたね」
「いいよ、交換だ」
ジン
「ありがとうございます!」
ジンはふと思い出した。
ジン
「蟹もいるんですが……食べられますか?」
村人は笑った。
村人
「蟹は食べないよ」
ジン
【川の近くでも蟹を食べないのか……】
【今度、揚げた蟹を持ってきたら……いい交渉ができるかもしれない】
ジンは何度も頭を下げ、形の悪い野菜と小麦を受け取った。
そして、来た道を川まで戻る。
ジン
【下流で、いい取引相手を見つけた】
【あとは上流……山の幸を探そう】
ジンは再び移動魔法を使い、小屋へ戻った。
床下に野菜と小麦を隠し、看守の昼の確認を待つ。
しばらくすると――。
看守A
「入るぞ」
ジンは目を閉じ、寝たふりをする。
看守A
「寝てるか……」
「飯は置いておくしかないか」
看守は小屋の中を見回す。
看守A
「しかし、この小屋……やっぱり……」
ジン
「……おはようございます」
看守A
「おっ、おう。起こしちゃったか」
「飯だ。食え」
「早く治さないと、仕事で死ぬかもしれないぞ」
ジン
「はい、ありがとうございます」
「結構良くなってきたので、明日には仕事に戻ります」
看守A
「若いっていいな」
「俺なら何日か休むよ」
ジン
「はは……」
2人は小さく笑った。
ジンは食事を終える。
看守A
「元気になっても小屋から出るなよ」
「シナゲルを掛けてあるからな」
――シナゲル。
現場の周囲にも使われている魔法。
範囲内から生き物が外へ出たことを知らせるための魔法であり、ジンはすでにその性質を理解していた。
ジン
「はい、分かりました」
【……外、出てきましたけど】
看守A
「大丈夫そうだけど、仕事だからもう1度確認に来るからな」
ジン
「分かりました。俺ももう少し寝ます」
看守A
「そうしてくれ」
「脱走を考えるような奴じゃなくて助かる」
看守が小屋を出ていく。
ジン
【よし】
【あとは上流だ】
【もう少ししてから行くか】
そう思った、その時だった。
ガチャッ。
小屋の扉が開く。
ジン
「ッ!」
看守A
「驚かせたか。すまん」
看守は手に何かを持っていた。
看守A
「これ、食べろ」
「甘くて美味いぞ。他の奴らには内緒だからな」
ジン
「ありがとうございます」
渡されたのは、いつも4人で食べている黒い木の実だった。
ただし――。
ジン
「……大きいですね」
看守A
「川の上流は大ぶりなんだよ」
「ただ、魔物が出るからな」
「なかなか行けないんだが、この前行っていっぱいあったんだ」
「1つくらい構わんさ」
ジン
「ありがとうございます」
「いただきます」
看守A
「おう。後でまたな」
看守は小屋を出ていった。
ジンは手の中の木の実を見つめる。
ジン
【危なかった……】
【移動している時に来られていたらヤバかった】
だが、それ以上に――。
ジン
【いい情報だ】
【上流には大きな木の実がある】
そして。
【魔物……】
ジンの目が輝く。
【肉のチャンスだ】
今後もよろしくお願い致します。




