第14話 美味しいだけでは足りない
いつも読んでいただきありがとうございます。
カリッ!
カリッ!
カリッ!
良い音が重なった。
ラック
「ッ!!」
レイ
「ウッ!」
ブライ
「なっ!」
3人
「美味い!!」
ラック
「なんだ、この味……軽いな!」
レイ
「これは……知っていれば食べるな」
ブライ
「バクバクいける!」
ジンは3人の様子を見ながら、微笑んでいた。
ジン
「美味しいでしょう?」
ラック
「最高だよ!」
「……酒飲みてぇ」
レイ
「だな。これは確実に酒が合う」
ブライ
「飲みたいな……」
ジン
「ブライさんはダメでしょ?」
ブライ
「何言ってるんだ?」
「ジンは10歳だから知らないのか?」
「酒は15歳から飲めるんだぞ」
「ジンは飲めないな」
ジン
「5年後か……長いな……」
ラック
「これと酒と女がいたら最高だな」
レイ
「女の話はするな!」
「もう何年も手すら触ってないんだから……」
ブライ
「娼館行きたいな……」
「ジンはまだダメだぞ」
ジン
【酒も女もお預けか……】
するとブライが、何かを思いついたようにジンを見る。
ブライ
「ジン!」
「移動して娼館に行けない?」
ジン
「無理ですよ」
「お金もないし、奴隷だし……」
「何より、俺が娼館に行ったことがないから移動できません」
ラック
「…………そうなのか……」
レイ
「ラック……期待してたのか?」
ラック
「そ、そんなこと……」
「……してたさ!」
「レイだって娼館行きたいだろ?」
レイ
「……そうだけど」
ジン
「出来ないことで揉めても仕方ないですよ」
「ここで出来ることをしましょう」
ラック
「そうだな……すまん、ジン」
ジン
「ご飯を食べて、お風呂に入って寝ましょう」
「明日には、アレが出来そうなので」
レイ
「灰の話か?」
ジン
「そうです」
「明日、完成させます」
ブライ
「食えるのか?」
3人がブライを見る。
ジン
「さ、ご飯食べましょう」
ブライ
「最近、俺に冷たくない?」
3人が笑う。
その日は、笑いに包まれて暮れていった。
――翌日。
いつものように、黒い木の実とキノコを集める。
しかし、食事の時間になると――。
ブライ
「ちょっと、木の実とキノコ……飽きてきたな」
ラック
「ブライ!」
「そんなワガママ言うなよ!」
ブライ
「でも正直……」
「食材は一緒、味付けも塩だけだぞ?」
「飽きないか?」
ラック
「…………」
ラックは何も言い返せなかった。
同じものを食べ続けていれば、どれだけ美味しくても飽きてしまう。
しかも味付けは塩だけ。
飽きて当然だった。
ジン
「……そうだな」
「飽きるよな」
「調味料と食材が欲しいな……」
「レイ、何かアイデアないかな?」
「肉を手に入れても、同じ味付けじゃ結局同じことになるし」
レイ
「調味料か……」
「材料がな……」
「スパイスみたいなものなら、木の実があったはずだ」
ジン
「辛いものですか?」
レイ
「そう」
「辛くて口の中がピリピリするんだ」
「香りもあるから、味変にはなる」
ジン
【山椒のことなんだろうな】
【魚、キノコ、木の実、蟹は手に入る】
【でも……】
ジン
「野菜とか手に入れば、かなり違うんでしょうけど……」
ラック
「野菜か……」
「ここでは厳しいな」
ジン
「ですよね……」
「せめて近くを探索できれば、何があるのか分かるんですが」
ブライ
「だったら、ジンが現場を休んで1日探索してくるとか?」
ラック
「…………」
「ありと言えば、ありだな」
レイ
「1度行けば移動できる」
「それに、看守が休んでいる奴隷を確認に来る時間は、ほぼ決まっている」
ブライ
「ただ……次の日、ジンの仕事が2倍になるぞ」
ジン
「そうですね」
「でも、周辺の確認はしておきたいです」
「野菜、果物、スパイス、穀物……」
「もし人が住んでいる場所があれば、物々交換もできるかもしれない」
ラック
「……行ってくれるか?」
ジン
「行きます!」
3人
「翌日の仕事は手伝うからな!」
ジン
「ありがとうございます」
こうして、翌日の探索計画を立てた。
その日の現場仕事を終え、小屋へ戻る。
ジンは昨日から作っていた灰の入った水を確認し、上澄みを取り出した。
そして――。
フローガ。
上澄みを火にかけ、ひたすら煮詰めていく。
一方、ラックとレイは昨日から作っていた油を火にかける。
ラック
「なんか……料理してるみたいだな」
ジン
「間違っても口にしないでくださいね」
「特にブライ!」
ブライ
「分かってるよ!」
「美味しそうな匂いもしないし……」
レイ
「でも、本当にこれ食べられないのか?」
「もう料理にしか見えないぞ」
ジン
「ダメです!」
煮詰めた上澄みを、温めた油へ少しずつ入れる。
そして、ひたすらかき混ぜる。
ラック
「…………」
レイ
「…………」
ブライ
「…………」
少しずつ、とろみが出てくる。
ジン
「……いいかな」
ジンは新しい石の器を用意する。
そこへ完成した液体を流し込んだ。
ジン
「完成です!」
ラック
「おおー!」
「……って、何が出来た?」
ジン
「石鹸です」
ラック
「これが……石鹸?」
レイ
「石鹸って、結構高価なものだぞ」
ブライ
「食えないのはいらないです……」
ジン
「まだ熱いので、明日には使えると思います」
ラック
「そっか……」
「使うのは初めてだな」
レイ
「娼館のとき使っただろ?」
「風呂入れって」
ラック
「あー……アレか!」
ジン
「汚れが酷いから、石鹸が欲しいなって思ってて」
レイ
「流石ジンだな!」
「本当に奴隷とは思えないよ」
ブライ
「ジン……ご飯!」
ジン
「はいはい」
「今日は魚とキノコの炒め物です」
昨日使った揚げ油を石のフライパンに入れる。
切った魚を入れ、火が通ったところでキノコを加える。
ジュウゥゥ……。
ブライ
「いい匂い……」
レイ
「蟹のエキスが入った油だからな」
「かなりいい感じだ」
ブライ
「これは……美味い!」
ジン
「良かった」
「明日は何か手に入ればいいんですけどね」
ラック
「そんなに気張るなよ」
レイ
「そうだぞ」
「こんなに美味いものを食ってて、飽きたなんて……贅沢すぎるよ」
ブライ
「ジン……すまん」
「俺、ワガママ言って……」
ジン
「いえ」
「このまま生活するなら、いつかはぶつかる問題です」
「早めに解決する方がいいと思います」
3人は黙ってジンを見る。
そして――。
ラック
「……本当に、ジンが来てから変わったな」
レイ
「だな」
ブライ
「……明日は何が見つかるかな」
ジン
「さあ、どうでしょう?」
4人は顔を見合わせて笑った。
明日――。
ジンの探索が始まる。
今度もよろしくお願い致します。




