第12話 魚の為に
いつも読んでいただきありがとうございます。
翌朝。
ジンは朝食を食べながら、3人に話しかけた。
「そっちのは仕事が終わってから作りますね」
「今日は魚を試してみますからね」
ラック、レイ、ブライの3人が揃って頷く。
「はーい」
3人の素直な返事に、ジンは思わず微笑んだ。
【……子供なのか?】
【素直でいいけど】
するとブライがジンを見る。
「今、子供っぽいって思っただろ?」
「お、思ってないですよ!」
「顔に出てたぞ」
ラックが笑う。
「ジンが一番下なのにな」
レイも笑いながら言う。
「確かに、子供っぽさが全然ないよな」
そう言いながら、ラックとレイがジンの頭を撫でる。
「ちょ、ちょっと……!」
ジンの顔が赤くなる。
「やめてくださいよ!」
「ほら、こういうところはちゃんと子供だ」
「可愛いな」
「やめてくださいって!」
3人が笑う。
それを見ていたブライが立ち上がる。
「とりあえず仕事片付けちゃいましょう」
3人が一斉にブライを見る。
「……何ですか?」
ラックがニヤニヤする。
「いや、凄くまともなこと言ったなって」
「俺、いつもまともだろ!」
「そうだったか?」
「ラック! 酷くないか!?」
4人は笑いながら檻に入り、現場へ向かった。
現場に着くと、いつものように仕事が振り分けられる。
ラックとレイは倒木。
ブライは石運び。
そしてジンは土運びだった。
ジンは周囲を見渡す。
【あの騒いでいた奴隷達も、少しは落ち着いたか?】
【あまり見られていても厄介だ】
今日も余計なことはせず、普通の奴隷として仕事をする。
昼食の時間。
4人が集まると、ジンが小声で話す。
「午後は回収なしでお願いします」
「接触出来るか分からないですし、俺は予定通り川に向かいます」
「バレそうになったら、何とか誤魔化してください」
3人はすぐに頷いた。
「判った」
ブライが少し不安そうに聞く。
「でも、そんなに長くは持たないぞ」
「ちょっと考えがあります」
レイが聞く。
「短時間で魚を取る作戦か?」
「はい。ちょっと後が面倒ですが、バレる方がマズイですから」
ラックが笑う。
「判った。小屋に戻ってから手伝うから、やってこい」
「はい!」
3人の笑顔に送り出される。
午後。
ジンは仕事を早めに終わらせた。
そして昨日と同じように、少しフラついてみせる。
看守が気付く。
「今日の仕事が終わってるなら、向こうで休んでろ」
「……はい。ありがとうございます……」
【よし、上手くいった】
ジンは奴隷達から離れた場所へ移動する。
周囲を確認する。
誰もこちらを見ていない。
ジンは小さく息を吐いた。
「メトイキシス……パオ」
次の瞬間。
ジンの姿が消えた。
――川。
「……」
ジンは周囲を見渡す。
現場の方は騒がしくない。
【ビンゴ】
【シナゲルは現場周辺に張られた警戒範囲みたいなもの】
【その範囲の外なら反応しない】
昨日、ギノースコーで調べた結果は正しかった。
「さてと……ちょっとやってみよう」
ジンは川の中へ入り、手を水の中へ入れる。
「収納!」
一瞬。
ジンの周囲にあった水が、大量に消えた。
「……入った」
アイテムボックスを確認すると、魚が入っている。
「よし!」
ジンは何度か同じことを繰り返した。
魚を収納し、必要のない川の水をアイテムボックスから外へ出す。全部を出すことは出来なかった。
【何とか魚を持って帰れる】
【しかも、かなり早い】
十分な量を確保すると、ジンはもう1度魔法を唱えた。
「メトイキシス……パオ」
――現場へ戻る。
時間にして約30分。
誰にも気付かれていない。
すると、ブライがジンを見る。
「ジン、いつ行ってもいいぞ」
「……?」
「魚を取りに行くんだろ?」
「もう行ってきましたよ?」
「えっ?」
ブライが固まる。
「もう取ってきたのか?」
「はい」
「そ、そうか……」
ブライはジンを見つめたあと、苦笑する。
「……仕事早いな」
「ありがとうございます?」
「いや、褒めていいのか分からないけどな!」
ブライは笑いながら仕事へ戻っていった。
その日の仕事を終え、4人は檻に入り、小屋へ戻る。
ジンはウキウキしていた。
【今日は魚が食べられる】
小屋に戻ると、ジンは昨日の焚火で出来た灰を確認する。
灰に水を入れて置いていたものだ。
器の中では、灰が底に沈んでいた。
「……いいのかな?」
念のため、ジンは手をかざす。
「ギノースコー」
「……」
ジンは黙り込む。
レイが心配そうに声を掛ける。
「ジン、どうした?」
「すみません……」
「うん?」
「作りたかったもの……まだ数日必要みたいなんです……」
前世の知識を頼りに作り始めたものの、やはりすぐには完成しないらしい。
ジンが少し肩を落とす。
するとラックがジンの頭を撫でた。
「何言ってんだよ」
「ラック……」
「こんな生活が出来るようになったのはジンのおかげなんだ」
「数日なんて、あっという間だよ」
レイも笑う。
「何かあったのかと思ったよ」
「レイ……」
ジンの表情が少し明るくなる。
そこへ――
「魚は?」
3人がブライを見る。
ラックとレイが同時に言う。
「気にするな、ジン」
「ブライのことは気にするな」
「ちょっと俺の話は!?」
ジンが笑う。
「はい、ご飯にしましょう」
「どうしますか?」
3人が顔を見合わせる。
そして――
「やっぱり最初は焼き!」
「ですよね!」
ジンはアイテムボックスから魚を取り出す。
「8匹あります」
「8匹!?」
「凄いな!」
「久しぶりだ……」
ジンは魚を締め、準備を始める。
ラックは魚を眺めながら呟く。
「楽しみだな……」
レイも笑う。
「なんか、凄く久しぶりに感じちゃいますね」
ブライは魚を見つめたまま――
「……肉」
「まだ言ってるのか!」
4人が笑う。
魚を焼きながら、いつものパンとスープも用意する。
今日はスープにキノコを入れる。
久しぶりのまともな料理だ。
「いただきま~す!」
4人は夢中で食べ始めた。
魚を頬張り、パンを食べ、キノコ入りのスープを飲む。
あっという間に食べ終わった。
ラックが満足そうに息を吐く。
「魚……美味いな……」
レイも頷く。
「本当に美味い」
そしてブライ。
「肉は?」
「お前は魚を食べ終わったばかりだろ!」
「でも肉……」
「ブライは放っておきましょう」
「ジンまで!?」
4人が笑う。
するとレイが聞いた。
「ジン、魚はどれくらい取れた?」
「結構取れました」
「おお!」
「あと、水は捨てたんですが……」
ジンが少し困った顔をする。
「捨てきれなかった分が……」
ラックが笑う。
「お風呂に入れちゃえば?」
「え?」
「飲める水なんだから、大丈夫だろう?」
「そうですね」
ジンは湯船に手を向ける。
「出ろ」
アイテムボックスから水が湯船流れ込んでいく。
――その瞬間。
ポチャン。
「……?」
ポチャン。
何かが湯船の中へ落ちる。
レイが目を見開く。
「ジン!」
「はい?」
「湯船に何か入ってるぞ!」
ブライが湯船を覗き込む。
「……」
そして目を輝かせる。
「肉ですか!?」
「なんで肉なんだよ!」
ラックとレイのツッコミが小屋に響いた。
ジンは湯船を覗き込む。
4人は湯船の中を覗き込む。
――奴隷生活は、少しずつ豊かになっていく。
今後もよろしくお願い致します。




