学園生活
注意
いじめ描写があります。
あの決闘から数ヶ月。
「またか………」
俺はいじめられていた。
机や私物に落書きされたり、魔法で水をかけられたり、結構いろんなことをされた。昨日なんて、『シルフィ・ローズは誰とでも寝る女』って張り紙が廊下に貼ってあった。
こうなった原因はわかっている。あのバカ王子×2が俺を取り合ったからだ。
あれがあった次の日から『シルフィ・ローズはアレックスとエドガーに二股をかけている』という噂が学園内に広がった。
その結果がこれだ。
「まーじで舐めやがってよぉ。これを魔法無しで消すのがどれだけ面倒くさいかわかってんのか?クソ野郎共が、名誉毀損と器物損壊で捕まれってんだよ」
「シルフィ、大丈夫ですか?」
「アイリス、私に近づくなと言ったはずよ」
最初はアイリスが助けてくれていた。
けど、ある日からアイリスの机にも落書きがされるようになった。だからアイリスに冷たく当たった。それなのに、毎日話しかけてくれる。なんていい子なんだ。
「もうチャイムなってるぞ。席につけ」
オリバー先生が教室に入ってきた。
全員が席につき授業が始まるが、いじめは授業中にも行われる。
「いてっ」
後ろから何か投げられた。
「なんだ?」
おそらく俺に対して投げられたであろう紙を丸めたものを広げる。
『死ね』
授業中になると勝手な行動ができなくなるため、こうやってゴミや暴言を書いた紙を俺に向けて投げてくる。幼稚な奴らだ。
「腹減った〜」
噂が広がってからというもの、なっちゃんやアイリスとご飯が食べられなくなった。
その原因がこれだ。
「シルフィちゃんってさ、いろんな男と遊んでるんでしょ?俺とも遊んでよ」
張り紙とかにあったように、生徒達の俺の認識は誰とでも寝る女らしい。その結果、こういう身体目当てのクソ野郎に毎日と言っていいほど絡まれる。
マジでウザイなこのクソ野郎が。何がシルフィちゃんだよ初対面で勝手にちゃん呼びしてんじゃねぇよ気持ち悪い。
「嫌です」
「え〜いいじゃんちょっとくらい」
クソ野郎が肩を掴んできた。
女性の身体に勝手に触れるとか、こいつ絶対もてないだろ。中身が男の俺でも気持ち悪いと思うのに、俺が女の子だったらと思うとゾッとする。マジで気持ち悪い。
犬の糞でも踏んでしまえ。
こういうクソ野郎の対処法はただ一つ。
「死ねぇ!」
日頃の恨みを込めて股間を蹴ること。俺も男だったからわかる。たとえ女性の力でも、一切手加減をしない本気の蹴りを股間に食らえば、最低でも数分は悶え苦しむ。なので、その間に逃げられる。
「シルフィさん、少しいいかしら」
俺に声をかけてくるのは男だけじゃない。
「よくないです。消え失せてください」
「っ!!!殿下達に好かれてるからって調子に乗ってんじゃないわよ!!」
こんな感じで、バカ王子×2に好かれてる俺に嫉妬した女共も絡んでくる。
大抵の場合、ビンタされたり、水をかけられたりする。
こういう女の恐ろしいところは、バカ王子共と絡んで無くても来るところだ。
実際、一緒にいたら俺がいじめられるから王子達には距離を置いて貰っている。彼女らに目はついていないのだろうか。
「用事はそれだけですか?私はもういきますわね」
「待ちなさいよ!」
待てと言われて待つバカはいない。ここで待ったら、人気のない場所に場所に連れて行かれて、昼休みの終わりまで殴る蹴るの暴行コースだ。
「貴方達のくだらない嫉妬に付き合ってる暇はないんです。さようなら」
「このっ!!」
バシャッ
水をかけられた。魔法というのは、いじめっ子からすれば物凄くいいものなのだろう。今みたいに水をかけたり、私物を土まみれにしたり、替えの服が燃やされていたこともあった。
「………」
「ふふっ、いい気味だわ!」
びしょ濡れのまま歩く俺を見て女共が笑っている。
濡れて肌に張り付くシャツの感触が気持ち悪い。
俺に向けられる生徒達の下卑た視線も不快だ。
それでも、連れて行かれるよりはマシだ。肉体的な痛みもないし、お昼ご飯も食べられる。
だが、濡れたまま食堂には行けない。一度寮に戻って着替えなければ。
寮で着替えて学園に戻ろうとするが、足が重たい。
どれだけ行こうと思っても足が動かせない。
学園が怖い。行きたくない。
そんなことを思いながら少しずつ歩みを進めると、誰かにぶつかった。
「あら、ごめんなさい」
「シルフィ………」
「………殿下?」
目の前にアレックスがいる。彼と一緒にいるところを誰かに見られたら、またいじめられる。できるだけ早くこの場を去りたい。
「ぶつかって悪かったですわね。ごきげんよう」
「待ってくれ!」
「言ったはずです。貴方と一緒にいたら私へのいじめがさらに過激になると。用があるのでしたら夜にしてください」
「………わかった。夜、学園の中庭で待ってる」
ここまでしても因縁をつけられるのだから本当に訳がわからない。
アレックスの話も気になるが、今は食事の方が重要だ。
「おばちゃん、日替わりBお願い。中で食べていい?」
「いいよ。早く入りな」
食堂は唯一俺が安心できる場所だ。
俺がいじめられた時に、教師達は助けてくれなかった。相談しても無駄だし、現場を見ても知らんぷり。
そんな中で、食堂のおばちゃん達は俺の味方をしてくれた。いじめを見かけたら止めに入ってくれたし、俺を自分達の休憩室に匿ってくれた。
この癒しの時間が終われば、また地獄が始まる。
魔法の実技だ。
魔力測定でErrorが出た俺は、安全面を考慮して魔法の実技は受けられなかった。ずっと見学というわけにもいかないので、実技の時間は筋トレだ。
ただ、実技の時間は他人をいじめるのに便利な魔法が使い放題だ。
手元が狂っただとか、適当な理由をつけてこちらに魔法を飛ばしてくる。
火球が飛んできたときは死を覚悟した。
これが、俺の学園生活だ。




