魔力測定と面倒事
「お前ら席に着け」
20代くらいのイケメンが教室に入ってきた。もしこの世界が乙女ゲーの世界なら彼は隠しルートのキャラだろう。
「せんせー、自分の席がわかりません!」
「お前はふざけているのか?」
「シルフィ!こっちだよ!」
アイリスが俺の席に案内してくれた。ホンマにええ子や。それに比べてこの教師は入学したばかりの生徒が自分の席分かるわけないだろうが。
「さて、まずは入学おめでとう。君達の担任を務めるオリバーだ」
「これからやることだが、君達も知っての通りここは王立魔法学園。まずは、魔力測定を行ってもらう」
ここって魔法学園だったんだ。試験も手続きも俺はしてないから知らなかったわ。魔法学園ってことはこの世界では魔法が使えるってことか。
「測定結果はA〜Eで表示される」
なんか高そうな水晶玉を持ってきた。なんでも、あれに手をかざすだけで魔力量がわかるらしい。
「まずは、アイリス」
「はい!」
測定結果 A
Aってことは、アイリスの魔力量はめちゃくちゃ多いってことか凄いな。さすが推定主人公。
「次、アレックス・アスフォデル」
「はい」
測定結果 C
あのバカ王子の名前アレックスっていうんだ。そして、意外と魔力量少ないんだな。物理攻撃の方が強いタイプか?
「次、シルフィ・ローズ」
「うい」
測定結果 Error
Error?この水晶玉壊れてんのか?それとも俺に魔力がないってことか。
「せんせーError出た」
「ふざけるな。そんなもの出るわけがないだろう」
「いいから一回見ろよ」
このクソ教師が。生徒の言うことを確かめずに即否定とかテメェがふざけてんだろうが。
せんせーは水晶玉を確かめた後少し悩んでからもう一回やれと言った。
測定結果 Error
「もう一回だ」
測定結果 Error
「もう一回」
測定結果 Error
「無理だよせんせー。全部Errorだもん」
「仕方がない。お前の魔力量は測定不能としておく」
みんな物珍しそうに俺を見てるけど、そんなに珍しいことなの?そういえば、ここって魔法学園だったわ。試験で魔力測定とかやっててもおかしくないな。
魔力測定というのは意外と時間がかかるらしい。というより、俺のError連発のせいなんだけど。もうお昼になってしまった。
「お昼になると朝より人が多いですね」
朝でも空いてる席を探すくらいには人がいたのに、今は明らかに朝よりも多い。まあ、最悪の場合は中庭とかで食べればいいか。
俺が嫌われてるのか、アイリスの主人公パワーかわからないけど、すぐに空いてる席が見つかった。
「アイリスは何が食べたい?」
「日替わりセットが美味しいって聞きましたよ!」
「それにする?」
「はい!」
ヤバいわ、マジで可愛い。食堂は無料で飯が食えることが悔やまれるわ。有料なら勝手に奢ってたのに。
「おばちゃん、日替わりセット頂戴」
「日替わりならAとBがあるよ」
「なら、AとB1個ずつ頂戴。それと、そっちの定食についてる肉って単品でもらえる?」
ドンッ
誰かにぶつかられた。俺は注文してたから、こっちからぶつかる事はないはずだ。人にぶつかっておいて謝罪のひと言もないとかバカにしてんだろこいつ。
「おいこら、ぶつかってんだから謝れよ」
「あ?」
例に漏れずイケメンがいた。身長が高いからだろうか威圧感が凄い。現在女性の身体で、160cmくらいしかない俺からしたら、かなり怖い。話しかけたことを後悔してる。
「何だ?お前」
「人にぶつかっておいて謝らないとか何様なの?」
「ん?ぶつかってたのか。お前が小さすぎて気づかなかったわ」
前言撤回。こんなクソ野郎にビビってたとかバカらしいわ。ぶつかったことを謝罪するどころか煽ってくるとかマジで最低だわこいつ。
「ご自身が加害者であることを理解していませんの?バカなんですか?」
「殿下への無礼は許しませんよ」
黒髪長髪で日本人のような顔立ちのイケメンが割り込んできた。こいつ今、殿下って言ったよな?てことは、この謝罪もまともにできないクソ野郎はどこぞの国の王子ってことか。
「殿下?こんな人間が王子だなんて、国の程度がしれますわね!」
「殿下への無礼は許さないと言ったはずです!」
こいつ、自分のとこの王子が招いたことなのによくこんなに怒れるな。この世界に自業自得って言葉はないのか?
「王族と言えども、他者を貶せば咎められて然るべきでしょう?そんなことも理解できませんの?」
「これ以上の無礼は許せません!貴方に決闘を申し込みます!」
女性に決闘を申し込むとか恥ずかしくないのか?今日って入学初日だぞ?早くない?
「遠慮しときます」
「逃げる気ですか!?」
逃げる?バカだろこいつ。普通に考えて男が女に決闘申し込むとかださいだろうが。名誉を傷つけないようにしてやってるんだから感謝してほしいくらいだわ。
「私は昼食をとりに来たのであって、貴方と戦いに来たわけじゃありませんの。昼食後なら考えてあげてもいいですわよ」
「ならば中庭で待っています。昼食をとったら来なさい!」
彼らは昼飯食いに来たわけじゃないの?あの長髪のこと王子の護衛だと思ってたんだけど、護衛が主人のこと振り回すわけないから違うか。
「あ!シルフィ!遅いですよ!何かあったんですか?」
「少し変なのに絡まれて、決闘を申し込まれただけですわ」
「決闘!?大丈夫なんですか?」
アイリスが心配してくれた。わざわざ俺の心配をしてくれるなんてどこまでいい子なんだ。
「昼食を食べ終わったら決闘しにいきますわね!」
昼食を食べ終わって中庭に向かうと、やけに人が多い。
「誰かが、ガーデニアの王子に喧嘩売ったらしいぞ!」
ガーデニア?自国の王子をわざわざガーデニアの王子って言うか?もしかして俺、他国の王子に喧嘩売っちゃった?
「もしかしてシルフィが決闘を申し込んだんですか?」
「違いますよ!ぶつかられたから謝罪しろって言っただけですわ!」
俺から喧嘩売ったことになってない?アイリスにも疑われるし、さすがに俺の信用低すぎて泣きそう。
「なんで私が喧嘩売ったことになってますの?」
「逃げずに来たようですね」
こういう奴らってなんで質問に答えられないんだろ。 自分達のせいで俺の名誉が傷つけられるかもしれないとか考えないのかな?
「さぁ、始めましょうか」
「嫌ですわ」
「昼食後なら受けると言ったのは貴方でしょう!」 「考えるとしか言ってませんわ」
このまま決闘を受けてしまったら、観客達は俺が申し込んだと思ってしまう。俺は、被害者の可哀想な女の子として決闘したいんだ。
「自分から決闘を申し込んだと宣言した上での実戦形式なら受けてあげますわ」
「いいでしょう」
「シルフィ・ローズ!貴方に決闘を申し込みます!!!」
黒髪が大きな声で宣言した。
「受けてあげますわ」
周囲から歓声が上がった。「いけ!」とか「お前に賭けてるんだからな!」とか、いろんな声がする。 一瞬にして、中庭がコロシアムに変わった。
ガンッ
俺はガーデニアの王子とやらを殴った。オーディエンスが驚いている。
「なっ!!何をしているんですか!!!」
「実戦形式と言ったはずですわ。貴方は王子の護衛なのでしょう?」
「それとこれに何の関係があるというのですか!!」
当たり前の疑問だ。自身と決闘を行うと思っていた相手が、突然王子を殴ったのだから。
今の俺はか弱いただの女の子。王子の護衛として他国までついていけるような手練の男性に物理的な戦いで勝てるわけがない。
だから、ここからが本番だ。
「護衛の実戦は護衛対象を守ることです。私の攻撃が王子に命中した時点で、貴方は王子を守れなかった。よって、貴方の負けです」
「開始の合図がなかったでしょう!」
「暗殺者が開始の合図を待って名乗りを上げてから殺しに来るとでも?」
「それは………」
これはただの屁理屈だ。俺がしたことはただの騙し討ちだし、決闘を受けた時点で俺が攻撃するべきは黒髪の方で王子への攻撃は許されない。
だが、ルール違反かどうかはどうでもいい。俺の言葉を相手が納得した時点で勝ちだ。
「ご理解いただけたのなら私はいきますわね」
「くっ!」
悔しそうな黒髪を尻目に俺はこの場を去ろうとする。 こういうずるい方法で勝つときは、相手が冷静になる前に蹴りをつけてその場を去らなければならないから。
「これは何の騒ぎだ?」
聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、アレックスがいた。
「なんだ、お前か」
「ああ、シルフィ。その顔もいいな」
アレックスは俺の顔を見て悦んでいる。本当に無敵なのかこのドM王子は。
「それで?何があったたんだ?エドガー」
「そこのチビとユウキが決闘して俺が殴られた」
このクソ野郎はエドガーで黒髪はユウキか。 そして、なんでこんなに説明が下手なんだよこのクソ野郎は。
「そこのエドガーとやらがぶつかったのに謝らないから注意したら、決闘を申し込まれたから受けてあげただけですわ」
「それでどうなったらエドガーを殴ることになるんだ?」
「実戦形式で護衛と戦いましたの」
アレックスは全く理解していない様子だ。実際に戦ったユウキですら理解出来ていないのだから当たり前だろう。
「お前、面白いな!俺の嫁に来ないか?」
エドガーに求婚された。自分を殴った女を気に入るなんて、どこぞのドM王子みたいだ。
「嫌です」
「俺はガーデニアの次期国王だぞ。それでも嫌か?」
国王の嫁なんて余計嫌だ。王妃ってだけで命とか狙われかねないし、権力争いに巻き込まれたりもしたくない。
「やめろエドガー。シルフィは俺の婚約者だ」
「三日程前に婚約破棄されましたわ」
「婚約破棄されてるなら俺と婚約してもいいだろ?」
「よくない!!」
アレックスとエドガーが俺を取り合ってる。俺の恋愛対象が男性だったら、この状況を喜んで受け入れていただろう。 だが、俺の恋愛対象は女性だ。俺を取り合うのがあいかとなっちゃんだったらよかったのに。
「さて、私が勝ったのですから謝ってください」
「あぁ、悪かったな」




