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客人

メイドさんに客間へ案内された。

客人って誰だ?まさかあの金髪バカ王子か?こんな朝っぱらから訪ねてくるとか舐めてるだろ。メイドさんもさ、客人待たせまいとするのはわかるけど、せめて一口でも食事する時間くれてもよくない?俺、まだ何も食べてないんだよ?


「人のお食事タイム邪魔しやがって、誰だ?」

「わ、わたし……です………ごめんなさい……」


勢いよく扉を開けると、アイリスがいた。可愛い。

てっきりあの金髪バカ王子が文句でも言いに来たのかと思って素の状態で喋ってたけど、よく考えたら今は貴族のご令嬢だったわ。


アイリスが怯えちゃってる。怯えてる姿も可愛いとか、やっぱり天使かな?ビビらせるつもりなんてなかったけど、こんなに可愛いなら会うたびに驚かせちゃおうかな。


「あら、アイリス様。本日はどのようなご要件で?」

「き、昨日の件で……」


昨日の件?あ~はいはいなるほどね。あの金髪バカ王子との婚約が破棄された件だ。もしかして心配で来てくれたのかな?優しい娘だわマジで。


「あのカス野郎との婚約破棄の件ならアイリス様が気にする必要はありませんわ」

「そうだけど!そうじゃなくって!」


驚いた。憶病で人の顔色うかがいながら話をするタイプだと思ってたけど、こんなに大きい声だせるんだ。


「え?じゃあなに?」

「なにって、殿下を殴ったことですよ!」


そっちかよ………。でもあれは、あのクソ野郎が先にビンタしてきたからじゃん。この国には正当防衛ってないのかな?それともあれか?上司が絶対に正しい的な昭和の価値観してんのか?


「用事はそれだけ?なら帰ってね。御飯食べたいから」

「待ってください!まだ話したいことはあるんです!」


まだ話あんのかよ。こっちは腹減ってるんだけど………。もう食事しながら会話しようかな。いいじゃん!なんなら一緒に御飯とか食べたいわ!


「アイリス様、朝食は済ませて来ました?」

「まだですけど……」

「じゃあ、お話の続きは食事しながらにしましょう」


メイドさんに頼んだら、すぐに食事がきた。食事と言っても、紅茶と洋菓子というアフタヌーンティーみたいなものだった。


これがこの世界の普通なの?俺ちゃんと食事したいって言ったよね?なんで食事を頼んだら3時のおやつが出てくるんだよおかしいだろ。もしかして俺ってそんなに寝てたの?俺が気づいてないだけでもうとっくにお昼過ぎてるの?


「わぁ!美味しそうですね!」


うん。これが正解でいいわ。ただでさえ可愛いのに、笑顔で目輝かせてんだもん。空腹とかなくなったわ、もうこの笑顔だけでお腹いっぱいなるわ。


「はぁ〜〜〜可愛いわぁ」

「え?」


つい本音が漏れちゃった。急に可愛いとか言い出したら引かれるかな。まぁ事実だからいいか。


「えへへ、可愛い………可愛いかぁ〜〜」


アイリスが笑顔で頬を押さえたままクネクネしてる。やっぱり可愛い子は何をしても可愛いようだ。この世界にはカメラもスマホもないので、網膜にじっくりと焼き付けることにしよう。


「美味しそうでしょう?お好きなものをお食べになってくださいな」

「はい!」


俺も何か食べるとするか。最初から甘い物は食べたくないし、スコーンにしよう。


美味い。貴族だし、お抱えのシェフとかいるのかな?コンビニとかで買うような物とはレベルが違う。こんな物が普通に食べられるとか貴族ってスゲェな。


「美味しい!」


アイリスが美味しそうにいろんなお菓子を食べている。マジで美味しそうに食べるじゃん。CMとかで見たら買いたくなっちゃうよ。


アイリスはハムスターみたいにお菓子を沢山頬張っている。可愛い。見れば見るほど小動物みたいだ。どうにかしてこの光景を後世に残せない物か―――画家だ。ファンタジー作品とかで画家呼んだりしてた気がする。そうじゃん!画家に頼めば後世に残せるじゃん!


「画家を呼べえぇぇぇぇーーー!!!」

「シルフィ様!?」


めちゃくちゃ怒られた。パパンとママンどころか騎士まで出てきた。この世界の人間には、推しの姿を後世に残したいというオタク心が分からんのか。


「失礼、話がそれましたわね。では、お話の続きをいたしましょうか」

「えぇ………」


すっごい引かれた。そりゃ急に発狂しだして騎士に取り押さえられたらそんな反応になるだろうな。引いてる顔も可愛い。


それはそれとして、話って何だったんだろう。昨日ってバカ野郎を殴った以外になにかしたっけ?


「それで?話したいことってなんですの?」

「いじめの目撃者の件です」


そういえばそんなのいたわ。あれだ、俺に罪なすりつけてきた女だ。モブ顔過ぎて忘れてたわ。あいつがどうしたんだ?


「あのモブ顔女がどうかしましたの?」

「いえ、証拠がなかったので何もされていません」

「じゃあ、何の話なんですの?」

「あの人が、シルフィ様が去った後もシルフィ様の仕業だ、シルフィ様の命令だ、って言っていたんです」


なるほど、クッソ往生際が悪いじゃん。いや、もしかして本当に俺がやったのか?断罪イベントからしか知らないし、いじめってそれより前の話だよな?だったら俺がやった可能性もあるんじゃ………。


「ただの往生際が悪いバカなだけじゃありませんの?」

「それが………ずっと言ってるから周りの方達が本当だと思い始めていじめがシルフィ様のせいだって………」


つまり、俺の評判が地の底に落ちたってことか。あそこにいた奴らってバカなの?一つも証拠なかったじゃん。


「アイリス様がわざわざそれを言いに来る理由がわかりませんわ」

「わたしが殿下に相談したから………ごめんなさい!!」


断罪イベントの原因ってアイリスだったんだ………。でもクソ眼鏡が「アイリスは心を病んでいるんだ」とか言ってたな。断罪イベントに主人公がいないことあるか?バカ共が暴走しただけじゃね?


「可愛いから許しますわ」

「………え?」

「バカ共が暴走しただけでアイリス様は悪くないですわ」


自分のことをいじめてたかもしれない女の評判が落ちたからって、こんなに落ち込んで謝りに来るなんてめっちゃいい子じゃん。顔どころか性格もいいなんて最高に推せるわ。


「でも………なにか償いがしたいです」

「なら友達になってください」

「………え?」

「友達になって欲しいですわ」

「でも、シルフィ様は貴族でわたしは平民です」


貴族だからとか平民だからとかどうでもいいんだよ。こっちは友達にプレゼントって体で推しに貢ぎてぇんだ。


「いいから友達になりましょう?」

「………わかりましたシルフィ様」

「様付け禁止ですわ。私もアイリスと呼ぶからシルフィと呼びなさい」

「でも………」

「呼んで」

「………シルフィ」


俺と友達になるのが畏れ多いとか思ってそうだけど、そんなことは俺に関係ないし、思えなくなるくらい幸せにする自信があるからいいか。


「じゃあ、今度お家に招いてくださいね!」

「そんな!うちは孤児院だし、シルフィ様を招くなんて畏れ多いです!」

「それなら仕方ないですわね。それはそれとして、様?」

「あっ!シルフィ………」


孤児院か………。いいことを聞いたな。アイリスの家が孤児院なら、孤児院へのお布施ってことで大量に貢げるじゃん。孤児院へのお布施も貴族の大事なお仕事だから問題ないよね!


「わたしは帰りますね。それじゃ、また明日、学園で!」

「ええ、さようなら」


え?学園?断罪イベントって卒業パーティーでやるんじゃないの?明日から普通に学園生活送るの?嘘やん………

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