12.誘拐
「う〜ん………ん?」
目を覚ました。
どこだ?ここは。てか、なんでこんなところに?天井も壁もすべて木造だ。こんな場所、少なくとも学園内にはなかったはずだろ。
いや、ここがどこかは外に出ればわかることだ。
「………あれ?」
上半身がロープで縛られている。
どうしよう、このままじゃ外に出れない。
ガチャ
「お、目覚めてんじゃん」
ガラの悪い男が2人部屋に入ってきた。
誰だ?こいつら。俺をいじめてた連中にこんなやつらはいなかったはずだ。
「どなたですの?」
「は?誘拐犯が名乗るわけねぇだろ」
そうか、俺は誘拐されたんだ。
目的はなんだ?いじめ?身代金?命?
そうだ、なっちゃん。俺が攫われる前、トイレの前にはなっちゃんがいたはずだ。なっちゃんは無事なのか?
いや、なっちゃんも大事だが今は俺が無事に生き残るのが最優先だ。
「貴方達、こんなことしてただで済むと思ってないでしょうね」
「ハハ!どうなるってんだ?」
やっぱり、こいつらは俺を舐めてるんだ。
そりゃ、身体を縛られたJKなんて怖くないわな。
だが、油断してくれるなら逃げるチャンスも訪れるだろう。
「バカなんですの?貴族である私を誘拐するなんて、バレたら即極刑ですのよ?これだから下賤な平民は………」
「テメェ!殺す!」
こういう気性の荒い人間は、下に見てる人間からバカにされたらすぐに手が出る。
こいつらが身代金目的なら、俺を殺すわけにはいかない。少なくとも、金が手に入るまでは。
俺の命を狙ってるならとっくに殺されているはずだから、身代金目的かもしくは誰かに依頼されたか。
「おいやめろ。殺すなって依頼だろうが」
「す、すまねぇ」
依頼って言ったな。
つまり、誰かが俺を誘拐させたってことか。わざわざ殺すなってことは、何か死んだらまずい理由でもあるよのか?
「依頼ってなんですの?」
「お前を攫って殺さずに心をへし折れって依頼だよ。相当嫌われてんだなお前」
殺さずに心をへし折る………とんでもねえ依頼だな。
俺、そんなにそんなに恨まれるようなことした覚えないんだけど、新手のいじめか?にしては手が込んでんな。
「さてと、それじゃあお楽しみタイムといくか。約束通り、俺が先な?」
「あ、ああ」
「しっかりと見張っておけよ」
「おう」
男が俺の服に手をかけた。
彼らの言うお楽しみタイムとは、そういうことなのだろう。
赤の他人に肉欲を押し付けられる。
俺の中身が男だからだろうか、嫌だし気持ち悪いのに意外と恐怖は感じない。
なぜだろう、前にも同じようなことがあった気がする。
「ちょっと待ってください」
「………なんだ?」
「依頼者の倍のお金払うので見逃してくれませんか?」
「ハハハ!そりゃ無理な話だ!金も貰えてその上こんないい女と遊べる仕事なんてそうそうないからな!」
イカれてんだろこいつ。貰った金で娼館にでも行けばいいものを。
あ、でも今の俺は超絶美人の現役JKだったわ。
クッソ、俺が美しすぎる弊害がこんなところで出てくるなんて………。
「そうですか、ならばお好きになさってください」
「へへ、物わかりがいいじゃねぇか」
「ただし、私に少しでも触れたら、指なり耳なり陰部なり、どこか身体の一部を噛み千切ります」
「おお、おお、怖ぇ姉ちゃんだ」
こいつは、完全に俺のことをただの女の子だとおもってるだろう。だが、俺の中身は男。
その上、魔法の実技の時間がずっと筋トレだったおかげで、そのへんの一般男性を余裕で殴り倒せるくらいの筋力はある。メイド服だと分かりにくいが、袖の下には逞しい筋肉が収納されているのだ。
さて、こういう身体目当てのクソ野郎の対処法は心得ている。いじめられていた経験がこんなところで約に立つとは皮肉なものだ。
「死ねぇ!!」
男の股間を全力で蹴った。
もう、いじめられていた頃のか弱い乙女じゃないので、相当痛いと思う。なんなら、潰れていてもおかしくない。
「おい!大丈夫か!?」
外で見張っていた男が部屋に入ってきた。
「テメェも死ねぇ!!」
入ってきた男の股間にも蹴りを入れた。
2人とも悶え苦しんでいるが、油断はしない。
ここで背中を見せれば、後ろから組み付かれかねないからだ。
確実に、顔面にも蹴りを入れて気絶させよう。
「それじゃ、おやすみなさい」
さて、ようやく自由に行動できるようになったが、まずは上半身のロープをどうにかしないことには始まらない。
いや、手首から先は動くから、さっさとここから出て助けを呼びに行く方が先決か。
「どこだよ………ここ」
部屋の外には辺り一面の森が広がっていた。
まずいな、ここがどこかもわからないんじゃ助けの呼びようがない。とりあえず、でかい声で叫び声ながら歩くか。
「たーすーけーてー!」
周りからは何の音もしない。これが遭難ってやつか。
「シルフィはここにいますよー!」
ガサッ
何か音がした。動物か?クマとかだったらヤバいな。
「シルフィ!」
「殿下?」
音の正体はアレックスだった。
もしかして、かなり大掛かりな捜索になってたりするのかな?
「無事か?」
「ええ、一応。それと、あそこの小屋の中に誘拐犯がいますわ」
「そうか。わかった」
アレックスがどこかに連絡してる。
「シルフィ!大丈夫ですか?」
「アイリス、私は平気よ」
最初にアイリスがきた。
物凄く心配してくれている。心配している顔のアイリスも可愛い。
「ぐすっ……シルフィ!ぐすっ………ごめんなさい!私のせいで………」
「なっちゃん、私は大丈夫だから気にしなくていいよ」
なっちゃんが泣きながら謝ってきた。
やっぱり、自分が一緒にいたのに攫われたから、罪悪感感じてんのかな。
「シルフィ!」
「シルフィちゃん!」
「お父様!お母様!」
パパンとママンが抱きついてきた。
「本っ当に無事でよかった………!」
「お父様………ぐすっ……」
両親に触れて緊張の糸が切れたのか、涙がこみ上げてくる。
「うわーーーーーん!!!!」
年甲斐もなく、赤子のように泣いてしまった。




