言葉の脈動と、疾走する機関車
無事に『星屑の軌道』へと戻り、重い鉄扉を固く閉ざすと、廃墟の冷気と静寂が嘘のように遮断された。
ルカは呼吸を整えながら、かますに入れた青黒い大結晶を両手で抱え、機関室へと走った。鋳鉄製の炉の扉を開けると、先ほどまで燃えていた薪の火種が小さく揺れている。
「……行きます!」
ルカは力いっぱい、大結晶を炉の深部へと投入した。
次の瞬間——。
ゴオオオオッ……!!
これまでのどんな結晶とも違う、重厚で美しい「音の旋律」が炉の中から巻き起こった。
青黒い炎が爆発するように燃え上がり、その炎からは無数の光の文字のような残像がチラチラと舞い上がる。真鍮パイプを通じて列車全体にエネルギーが巡ると、壁の真鍮ランプがまぶしいほどの輝きを取り戻した。
カタコト、カタコト、カタコト……!!
車輪の回転音が、これまでになく高らかに、力強く夜空へと響き渡る。
止まっていた古時計の針が猛烈な勢いで巻き戻り、規則正しいチクタク音を刻み始めた。さらには、車内の壁や木製棚の滑らかな表面から、かつてこの列車に乗った人々が交わした言葉の余韻——楽しげな笑い声や、ささやかな挨拶の残響が、かすかな鈴の音のように聞こえてくるようだった。
「すごい……! 列車が歌ってるみたいだ……!」
居間へ戻ったルカは、力強く揺れ始めた車内で目を輝かせた。
窓の外を見やると、大図書館の廃墟と雲海が、猛烈なスピードで後ろへと去っていく。言葉を取り戻した夜行列車は、滅びゆく世界の闇を切り裂き、再び果てしない線路の上を疾走し始めていた。
「よし、ルカ。無事に脱出完了だ」
ソファーに深く腰掛けたヴィンセントが、コートの胸元を緩めながら言った。
「命がけで守ったあの詩集と、本日の記録を整理しなさい。お前が命を張った意味を、手帳の上に証明してみせるんだ」
「はい!」
ルカは自分の定位置である革ソファーに座り、卓上に自分の手帳と、先ほど拾った小さな詩集を並べた。




