愛情込めて
さてさて、お昼だ。今日は早めに出たから、キリコから弁当を渡されていない。だから今日の僕には学食を食べる権利がある。
ホールに行くと、昼休みが始まったばかりだというのに、もう人が集まっていた。噂じゃここの学食はどれも美味しくて、中でも魚系の定食が絶品だと。最近めっきり魚を食べなくなっちゃったから、これを機に食べてみようかな。
券売機の列に並んで待っていると、僕の後ろに並んできた人に密着された。急いでいるのだろうか。空腹なのだろうか。
肩に感じるこの柔らかくて弾力ある感触……まさか、女子か? 気付いているのだろうか、僕の肩に胸が当たってる事に。男と女では気にする接触箇所が違う。男なら股間だけだが、女は全身だ。そのはずが、僕の後ろに並んでる女子は僕の背中に密着している。
興味が湧いた。思い切って振り返ってみよう。
そうして後ろにいる女子の顔をうかがうと、瞳孔ガン開きで僕を見下ろすキリコだった。
「何してるの?」
「何って、並んでるけど?」
「なんで並んでるの?」
「だって券売機で買わないと学食食べれないんでしょ?」
「なんで学食食べるの?」
「お昼だし」
「私のお弁当あるのに? 私が作ったお弁当は食べないの? 食べたくないの? 食べたくないから朝早く出たの? なんで? 私が作ったから? 私が作る物はマズいの? 気持ちが悪いの? ねぇ。ねぇ。ねぇ―――」
券売機の列から離れ、テラス席に座ってキリコのお弁当を食べる事にした。
キリコの監視のもと、弁当に詰め込んでる物を一通り食べた後、感想を述べた。
「いつも通り美味しい」
「当然。君の為に朝早くに起きて準備してるからね」
「ありがと。でも作らない日があった方が良いんじゃない? そういう日は学食食べるから」
「駄目、それだけは。そんな脅し方しなくても、毎日作ってあげる。例え火の中、水の中に居たって」
「脅したつもりはないんだけど……」
「学食に毒が入ってたらどうするの? いえ、きっと毒が入ってるわ」
「みんな美味しそうに食べてるけど……」
「私が作った物なら安心安全。愛情しか入ってないわよ」
「塩とか使ってるでしょ」
あぁ、美味しかった。なんだかんだ言って、キリコが作った物は美味しい。ただのキャベツの千切りでさえ美味く感じる。
僕が食べ終わると、キリコはようやく自分の弁当の蓋を開けた。
そして僕に箸を手渡すと、口を開けた。十中八九「あーんしろ」と催促してるのだろう。別にやってもいいけど、向かいの席に座る人に食べさせるのって面倒だな。
キリコの隣に椅子を移動させ、キリコに弁当を食べさせた。
「美味しい」
「そうでしょ。僕が愛情込めてるからね」
「……恥ずかしい台詞」
「言い出しっぺのくせに何を言ってんの」




