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瀬戸内マリンドラゴン  作者: 井田雷左
序部 マリンドラゴン現る
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第1話 過激派の殺し方教えます Act.1 炎の剣 8



     8



伴賀が動揺しているのも遼斗には判った。

本来ならば、向かいにくる西谷とやらに遼斗を送らせるとことを考えていたようだが、吉祥が外してしまい、それで遼斗は危険な目に遭った。

だから伴賀は遼斗を誘って行動を共にすることを選んだ。

読者はのちのち伴賀らのチームのこの機密漏洩やら守秘義務にどれだけ本気なのか判らなくるだろうし、それはもう既にそう思っておられるかもしれないけど、そういうものだとしか云えないものがある。

むしろ妙な憶測を伝えるのではなく、事実を教えることにより、その相手を審査しているところがある、とやがて知っていくだろうと思う。


「雛さんは?」

ツーブロックが五島に尋ねた。

そっけない礼儀もなっていない聴き方だが、五島は気にせず「行きたくないんだとよ」と答えた。

「そりゃそうでしょうねー、迎えに行くのはあの二村さんっしょ、雛さんもそうとう、フフフ」

これは眼鏡。

空気もいることはいる。

フェリーの入る八幡浜港では目立つからだろう。

付近の漁港に五島ら四人はいた。

遠洋ではないが、釣客を運ぶような小型船ではないくらいの近海漁船が入ってくるのが照明で判る。

漁港に漁船、なんら間違いや不釣り合いはない。

五島が懐中電灯をぱちぱちとオンオフし、合図を送る。

その近海漁船からも合図の光が送られる。


それらのやり取りを見ているのが烏賊偉と吉祥の二人で、そこに伴賀と遼斗も合流する。

「って、伴賀!なんでそのコ連れてきた!?」

例の〈鉄心の太刀〉を右手に持つ吉祥が云う。

「この計画に3年かかっているんだゼ!伴賀!」

ジャケットを着た烏賊偉の台詞。

「おまえらがこの、えーと?遼斗だ!そう!遼斗を置いてきぼりにしたから、あいつらの三下に狙われたんだぞ!だから、連れてくるしかねーだろう!」

伴賀がそうかばう。

「あのー、おれ、帰りますよ」と遼斗。

「いや、この時間のこの場所、オレたちとあいつらしかいない。今港を出られる方が迷惑だ」と烏賊偉。

吉祥がのぞく双眼鏡を伴賀は肩を叩くことにより受け取る。


「二村さん、お久しぶりです」

と五島が笑みを浮かべて挨拶する。

「しっしっ!そばによるなよ、色情狂!おまえからする漂うメスガキの愛液の匂いが臭くてたまんねーよ!」

二村、コントのような真っ黒な眼帯を左目にかけ、アロハシャツを着ている、四十路後半の男。

供を連れず、港の地面に足を付ける。


「バカっ!やめろ!」吉祥がそう云って伴賀の両肩を両手で抑える。

伴賀が双眼鏡を吉祥に付き返した時に、伴賀の表情が一変したのに遼斗も気づいた。

『丈さん!直ぐにマリンドラゴンを発進!須田漁港の全ての漁船に攻撃を加えてくれ!』

イヤホンが通信デバイスになっているようで、伴賀はそう云い放った。

『丈さん!伴賀は今取り乱している!その指示はチャラだ!』

そう云うのは同じ通信デバイスで語りかける烏賊偉。

「じゃあいい!俺一人で行く!」

だが吉祥は羽交い締めにして食い止める!

「伴賀!オレたちはこの3年かけて準備期間がムダになる!やめろ!それにおまえ、その香り、ついさっき、遼斗くん守るために〈小型空気砲〉使っただろう!?アレは一発しか使えない!どう相手するつもりだ!?

「吉祥、こいつを借りるゼ!」

伴賀、吉祥からすり抜ける時に、鞘から太刀を抜き取る。

だが、烏賊偉が右手に持つダーツを伴賀の首筋にチクと刺す。

「い、烏賊偉、てめぇぇ」

「睨め!だが起きたら、おれらに感謝することだろう」

「は、は、おまえら、ふたりがかりでようやく、オレを」

こうして伴賀は気を失う。

バイブレーション機能の振動の音。

『西谷くん、か。伴賀は今おやすみ中だ。ああ、回収したのね。じゃあ、伴賀も回収しに来てよ』

烏賊偉は伴賀のスマホを勝手に出て、勝手に答えた。

「珍しいんだよ。伴賀がこれだけ取り乱すのは。普段はこんな感情的な男じゃないんだ」

吉祥が遼斗に、さびしそうに、云う。

この時に吉祥の足元に落ちている双眼鏡を、遼斗が拾って・のぞくことをしていたら、五島が敵組織の重要人物と判明していたのだ。


「四谷雛?あいつがいるのか?イヤだな。沖に出よう。それに盗聴の心配もない。クルーザーが用意してある。各島・各港の配置状況の詳細が知りたい」

そう二村というアイパッチの男は漁船に戻った。

その後を五島、ツーブロック、眼鏡、空気が続く。

後半三人は電話しても出ない水かけを気にしたが、ほおっておくことにしたようだ。


漁船が目視から消えたことが合図となり、五島と二村が出会った港の対角線上の岸壁にいた吉祥、烏賊偉は近くで待っていてもらった西谷に連絡し、迎えに来てもらった。

「これ、なんですか!?」

遼斗が見たのは西谷が乗るランドピッポーで、軽トラくらいの大きさだが、タイヤが両脇合計六つもあり、ゴツいランドクルーザーを更にゴツくしたような見た目であった、濃いグリーンの車体。

「水陸両用車だが公道を走っても違和感ないように改造したんだよ。ちょっと、伴賀を運ぶの、手伝ってくれる?」

烏賊偉が両脇を、遼斗が両足首を持って運び、刀を携えた吉祥が後部ドアを開ける。

「焼肉屋の時は助けてくれてありがとう。遼斗くんだったよね」

運転しながら西谷という小太りの青年は話す。

「助けたなんて、そんな」

遼斗は恥ずかしそうに返す。

西谷は烏賊偉と吉祥からああいうこともあったので、家まで送るように頼まれた。

くみ子の部屋とも遼斗は思ったが、母親の元へ帰ることを選んだ。

それはこんな夜を味わってしまい、自分の悩みがちっぽけに見えてきたからだ。

吉祥と烏賊偉は伴賀を下ろして、千丈川が八幡浜港に降り注ぐあたりでランドピッポーを降りた。

そこには伴賀たちが乗ってきた〈ユニット2シーピッポー〉が錨を下ろしているのだが、その活躍は次章となるであろう。

―今夜がバイトがなくてよかった。

「ねぇ、遼斗くんは将来どうするの?」

童顔に見えても西谷の方が年上であろうから、マジメに答えるべきだろうが、同級生の女の子を妊娠させたから・母親を捨てて別天地で土方でやろうと思うと素直に答えるのも気が引けた。

「僕さ、こう見えて、実は子ども、いるんだ」

「へ」

そう情けない返事を返した遼斗だったが、それは自分の思考を読まれたような驚きが混じった声であった。

「ようやく暮らせるんだ。この三年間は長かったよ。でもその三年の間にいっぱい資格も取れたし、通信で大検も持てた」

「三年間、どうしていたんですか?」

「伴賀さんの部下になった。なにをするかはナイショ」

家が近くなってきた。

遼斗は今、スゴく重要な話を西谷がしてくれていることに気づいていた。

―それは今夜この目で見た伴賀さんの破裂音、烏賊偉さんのダーツ、吉祥さんの直刀に繋がる、というか、あんなものを使う真の意味に直結する何かだろう。

家の前に着いた。

「遼斗くん、僕の代わりにならないかな」

西谷が運転席から云う。水陸両用車だけあって運転シートの座高が高いため、上体をそらしながら。

「ナイショ、教えてくれたら」

そう云い、二人は笑顔で別れた。

母親はテーブルに突っ伏して眠っていたが、さすがに遼斗が帰宅すると起きた。

遼斗は郁子に詫び、明日ゆっく話そうと二人は眠ることを選んだ。


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