第1話 過激派の殺し方教えます Act.1 炎の剣 7
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直刀!
遼斗は中学時代に剣道部だった。
同じ部活のおたく君が武器マニアだったから、刀に関する雑談をよくした。
―古代では儀礼・式典用で、戦国~織豊期には簡単にできる大量生産品と云われていたでごわす。
そう聴いていた。
だが、
―これが、儀礼用?量産品?確実に暴力と凶状のオーラが濃く見えるようなのに!?
河川敷の月夜、月光に照らされ、その直刀は黒光りしている。
その遼斗の視線に煽られてか、吉祥も左手の鞘を下げ、右手のその真っ黒な直刀を月に映えるよう、高らかに掲げている。
「遼斗くん、だっけかな」
直刀を見せびらかしていた吉祥がそう話しかけた。
タンクトップにバミューダというラフないでたち。
「はい、それ、銃刀法違反じゃないですか?刃渡り、何センチですか?」
遼斗がそう云うと吉祥はオーバーアクションで直刀を鞘に納めた。
「銘は〈鉄心の太刀〉、そして」と左手の親指でくいと鍔を押し出す。
そして自分の右手薬指を刃に当て、勢いよく引く!
―!
目をそらす遼斗。
「ふふーん、きみもやってみて」
吉祥がそう云うと近づいた遼斗は右手親指で刃を少し触り、大丈夫だと気づくと軽く撫でた。
―!?
「そう、研いでいない」と吉祥。
「では、これは鉄で出来た真っ黒い木刀!?」と遼斗。
「そんなトコだな。鞘入れる意味、あんのかね」
と云いかけた時にバミューダのポケモンにあったスマホを取る吉祥。
その受話部と会話をかわす。
「さっきの連れからだ。四人中一人がいつの間にか姿を消したらしい。ちょっと見てくる」
―キューン!
数センチ、鍔と鞘をかち合わせただけなのに、いい音が響く。
「また、会えますか?」
遼斗はちょっとはにかんだ様子。
「うん、多分、遼斗くんとは縁あるよ」
と云うと吉祥は足早に去る。
見送る、まさにその姿が見えなくなるまで見送った遼斗だった。
鉄ではなく、木でできた木刀で遼斗は背後から殴られた。
気配なのか、少しの影の変化で気づいたのか、3年間、剣道に明け暮れていたからその経験から、とっさの反応が取れたのか、高校に上がった時に剣道を続けなくなっていたのは、母親の弁当屋を手伝い始めたからだ。
そんなことを遼斗は思っていた。
少しのかわしで直撃はまぬがれたが、右耳から血が出ているのが判る。
―切っ先で切れたか!?
ようやく混乱した自分の意識を元に戻した。
「おまえ、殺してこいと歩きながら、仲間で話し合い、そう決定した」
〈水かけ〉がそう発音した。
―殺す!?思った以上にヤバいヤツらだった!?
得物を持った敵の強さを剣道経験者であった遼斗はよく知っていた。
―当たれば重症!それなのになんの躊躇もなく、木刀を学生に振り下ろせる!その殺意がなにより恐ろしい。
「吉祥、烏賊偉、こういうトコでさ、オレを超えられない。まっ!オレもオレの右大臣と左大臣のままでいてもらいたいけど」
そう、あの焼肉屋であった集団のリーダー格だった男。
確か、名前は伴賀だったハズの男。
身長は、185越えの長身、襟は銀色のピンホール、袖口はワイン色のカフスボタンというワンポイントどもが映える清潔そうな・真っ白なワイシャツ、藍色のズボンは特に特徴はない。
「さっきの二人、キッショウとイカイ、か、二人とも殺す」
―中華屋で出会ったのがくみ子と出会った一年前くらい、一年でこんなにひとは変わるか!?
何かそう、洗脳を受けた狂信者のような雰囲気を遼斗は感じていた。
中華屋のの時にも遼斗に水をかけるくらいだから、クズには変わりないが、それでも陽キャの悪ノリみたいな感じがしていて、ノリで許されると思い込んでいる軽さがあった。
「大丈夫だ。おまえはここでリタイアだ」
そう云うと伴賀孝夫38歳、は右手を水かけの前に晒した。
手をジャンケンのパーのように広げ、5本の指をしっかりと広げ、水かけの眼前2メーター手前にその状態の右手を固定した。
「なんだ、そりゃ!?かめはめ波かよ!?」
「あーーーーーーーーーー!バレてる!」とおどける伴賀。でもニヤリ!
水かけもニヤリ、だが
「ふざけてんじゃねーーーーーーーー!」
とそして木刀は振り下ろされた!
その刹那!
はじけ飛ぶ木刀!
本当に木刀は一瞬で粉砕された。
伴賀の態勢で変わったトコと云えば、左腕をいつの間にか、後方に伸ばしているトコ。
水かけも遼斗もあっけにとられた。
それくらい二人はショックだったのだ。
その放心状態を見逃さない伴賀は直ぐに水かけの首元に重い蹴りをブチ当て、よろけた水かけにすかさずローリンソバットを仕掛けて、見事にヒット!
倒れた先は材木が立てかけてあるスペースで、伴賀は小さい木材で水かけを隠した。
そしてスマホを取り出す。
『西谷くん、ユニット3ランドピッポーで出動して、GPSで光る材木店の中から、失神している男一人、運んでくれ、うんうん、そうだ、睡眠注射を直ぐして、目的日時まで眠っていてもらおう。うんうん、殺してないよ、オレ、正義のヒーローだもんね』
そう云うと伴賀はスマホを藍色のポケットにしまった。
「あのー、助けてくれて、ありがとうございます。なんか、ひどく混乱していて、他にも言いたいこといっぱいなんですけど」
そう、あの木刀の爆発がなんなのか!?いや、そもそもあのダーツの爆発はなんなのか?するとあの真っ黒の直刀は?それよりそれとそれらを使う、アンタらおっさん、何者?
「遼斗くん、だったよね。受験社会は何?」
「日本史です」
もうとっくに大学受験なんて諦めていたのに、即答した。
「そっかぁ、地理じゃないかぁー」
「地理はそうとう珍しいですよ」
「もう20年は前だけど、オレの同級生、現代社会だったヤツいたけどね」
「で、地理がなんですか?」
「うん、ここ瀬戸内海はさぁ」
「いや、八幡浜は瀬戸内海でなく宇和海ですよ」
「いや、環境省のHPではここいらも含めているからいいいんだ!」
「大人げないですね」
「佐多半島がさ、八幡浜一帯を瀬戸内海の荒海からそこにいる猛者たちから守ってくれているんだよ」
八幡浜の北西に位置する佐多岬半島は約50キロ、日本最長の半島である。
―長い佐多半島が守って・隠してくれるような気がしたんだよ。
そう遼斗の母も同じことを云った記憶を思い出し、母を思い出し、ひどい罪悪感が一挙に彼を襲っていた。
そんな哀しい気持ちを察してか、伴賀は続ける。
「瀬戸内海にはいくつも・いくつも賀茂神社がある。似たような名も含めればかなりの数だと網野義彦もどこかで書いていたな」
「いや、賀茂神社や京都や仙台も有名だし、琵琶湖にもあるし、そうは言えないんじゃ」
遼斗の日本史選択は伊達ではなかった。
「多いんだよ!相対的に多いんだよ!そしてまた別の話!八幡船とはなんだい?」
「チャッピーやwikiならば、瀬戸内海の和寇が使っていた船とか。八幡大菩薩から転じて軍神である応神天皇を祀っていたとか」
「今はいいな、直ぐにAI!今の若者は直ぐにこれだよ!」
「いや!僕は初読はそうでもちゃんと知識として知っている!」
―こういう会話、久々!やっぱり好きなコであろうとなかろうと男同士の会話の楽しさに勝るものはないな。
「うん、賀茂神社、それに八幡船。これは古代から中世の話なんだが、これからは現代の話っ」
と云いかけた時に、伴賀のスマホが反応。
『ああ、うんうん。そうか、遂に来たか』
伴賀の表情が曇った、いやそんなものではない、目がらんらんとしだした。
今夜見たものの中で伴賀のその目がいちばん恐ろしく、同時にいつまでも忘れられなくなる。




