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瀬戸内マリンドラゴン  作者: 井田雷左
序部 マリンドラゴン現る
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第2話 決戦!瀬戸内海国立公園 Act3 真水4



     4



「魚雷であの火柱使いの船底に穴ぁ!開けてやりましょう!」秋山が冷静さを一切欠いて意見する。

「いや、もうムリだ、浮上しましょう、艦長」と耳を抑えながら桶谷。

そう、スクリューがワイヤーケーブルにより沈黙したが上下移動はできる。

だがそれは同時に投降となる。

いや、投降は海保の巡視船とあの小型潜水艦を積んだ民間船ではあり得ない。

腐っても戦略兵器の潜水艦、魚雷は海上でも発射できるし、体当たりすれば質量からして、海保にも民間船にも負けはしない。

―相手の船を奪って舞鶴基地に戻る、か?いや、違う!

そう、海底の時は見えなかったが、潜行する時にはやしお型潜水艦のクルーはあのファイヤーソードを見ている。

それは、あの時は民間船のタンカーを守るために見えたし、その通りなのだろうが、同時に今度浮上してきた時にはこの炎の剣を叩き潰すという示威行為だったのだ。

―では、秋山の言う通り、この海底にいる時点で魚雷をお見舞いするか?

だが、それも違う。

相手は。もう、さぁ!魚雷を撃ってくださいよ!と云わんばかりのだ。

これまで戦友だった海自の潜水艦三隻にも、友軍で韓国海軍の潜水艦二隻にも魚雷を使用せず、勝ち進んだ。

これは誰もが認める奇跡、そして彼らの勝利条件のいちばんのものだった。

それを民間船相手に窮鼠猫を嚙みで使うとはいちばん大事なもの、命より大事なものを失うことに繋がる。

「諸君!浮上しよう!どうやら我々にはそれしかないようだ」

氷室は自分の声質と声量が弱っていることに発声して初めて気づいて驚いた。

瀬戸内海、この小豆島周辺の水深は約30m。

浮かび上がるには少々時間がかかる。

だがそれも数分のことだ。

綾川伯父がレーダーで敵艦の浮上を知る。

伴賀に目で合図する。

「烏賊偉さん、スカイピッポー発進、ヨロシク!」と伴賀。

既にサブマリンピッポーは浮上を済ませ、海上で待っていた。

吉祥は上半身を艦から出し、上空に現れた烏賊偉に手を振る。

「伴賀さま、敵艦、10秒後に浮上します」とプロフェッサー綾川がインカムで皆に伝える。

スカイピッポーから縄梯子。

捕まる吉祥。

スカイピッポーは高度を上げる、つまり吉祥も上空へ。

サブマリンピッポーを離れる直前に吉祥はAiにマリンドラゴンへ帰還するよう指示。

マリンドラゴンとサブマリンピッポーの距離はもう百メーターないので大丈夫と判断した。

ハッチが開かれて、カタパルトに乗せる時は手動が必要な工程があるが、房望太郎と遼斗がやるだろう。

そして浮上するはやしお型潜水艦、海上に姿を晒した瞬間に、艦橋セールのハッチが開き、氷室の上半身が姿を現す。

―そう、このまま自爆してもよかったが、あの時に、艦首で、仁王立ちし、右手に握りしめた刀で予告ホームランのポーズの旧友を見たのだ。ああ、これは未だ死ねないと思い出した。

氷室は全身を潜水艦の甲板の上に現す。

右手に持つ得物は〈関の孫六〉、あの三島由紀夫の割腹で有名な市ヶ谷事件の折に、陸自総監に見せるために持参したもので、あのクーデタの引き金になった室町時代の名刀。

市ヶ谷記念館に飾られた三島由紀夫の関の孫六はレプリカで、氷室のこの刀こそ、あの事件を象徴する日本刀。

勿論、研ぎ直しや改修を施してある。

未だワイヤーケーブルが巻き付いているスクリュー近くの甲板後部にスカイピッポーから垂らされた縄梯子に掴まる吉祥、その地に静かに降りる。

あの高橋二佐暗殺事件から初めて再会する2人。

つかつかと歩いて、2人の間は距離10mくらい。

その時に、デバイスから伴賀の「烏賊偉さん!やってくれ!」と叫ぶ声。

烏賊偉、氷室が出てきたハッチが幸い開いたままなので、そのまま、スカイピッポーより落下する。

氷室、烏賊偉の出現に気を取られない。

―そうか、おまえらのボス、怖ぇなぁー、そこまで先を読んでいたか!

とだけ思った。

まず、烏賊偉の行方を追おう、吉祥はその後だ。

「頼め、烏賊偉さん!一人も死なすな!」と伴賀やイヤホンから。

―まずは一人!

掌手を氷室の部下の男に叩き込む。

カチリ、というわずかな音。

その音がした方角に烏賊偉、ダーツを投げる。

今回は火薬を仕込んでいない。

だが、しびれ薬を仕込んである。

男はとさっと拳銃を床に落とした後に、自らも床に横たわる。

―2人!

歩いていくと烏賊偉、食堂を見つける。

中を見る。

2人の男性が抱きしめ合っている。感動的な光景だが、何かおかしい、そう、二人は匕首を握っていた!

いったん離れる、そして勢いをつけて・・・

―3人め、4人め!

烏賊偉、ダーツをその2人の喉笛の連続して投げ、刺さる。

彼らもプロだ。

艦内に潜入した賊に、今からみんなで死のうと思っていたのに、気づいた。

その殺気に、烏賊偉もプロ、とっくに気づいた。

―さて、何で対抗するんだ!?

そう、さっきの自殺用の拳銃を持った男はいたが、基本、潜水艦内で発砲は全滅するほどの事故に繋がる。

だから、4人はもしもの時に使う武器を携帯していた。

烏賊偉、の右頬にかすめる!

―ボーガンの矢!

相手は4人、烏賊偉の役目はもう皆さまもお気づきのことだろう!クーデタ作戦失敗による自決を止めることだ。

ここで4人を相手にしているうちに他のクルーが死ぬ!だから、この4人を直ぐに制圧せねばならない。

だが、相手は日頃なんの訓練もしていない日左連でもないし、あの海戦と違い、広い海上や船上でもない、とてつもなく狭い潜水艦内で、プロの軍人相手なのだ。

ただでさえ、狭いのに4人囲まれ、烏賊偉の居場所は狭まる。

ボーガンの矢は弩弓と発達したもの、基本は手首で投げるダーツの相手ではない。その威力は比べものにならない程にボーガンの矢の方が上だ。

―だが早く勝たないと伴賀さんとの約束、守れない。

敵の位置は狭いから判った。

だから右手で右の男に、左手で左の男にダーツを両利きで投げ、沈黙させた。

だが奥に2人、もう新しい、ダーツを掴む余裕がない。

ボーガン、弩弓は矢を発射台の上に乗せ、尻部を硬くて・惹かれた弦で叩くことで強烈な殺傷能力を持つ兵器となる。

これだけの近さ、烏賊偉はそのボーガンの発射台の上に乗った矢を掴み、そのまま持ち主の右肩に刺す。

刺した反動で、そのまま烏賊偉は残った一人に跳び蹴りを食らわす。

見事な早業、数秒で4人を制圧。

そして魚雷の発射室に赴くとそこにいたのは副官の秋山とソナーマンの桶谷であった。

「お2人で最後、ですか?」

烏賊偉は尋ねた。だが、2人の戦意がないことを感じとったからか、ダーツは構えず。

「ああ、そうだ」と秋山。

「まさか、私はここにくるまで、8人は黙らせましたが、あなたがた2人に、あなたがたのボス、11人で潜水艦動かせるのですか?」と烏賊偉。

「実際できたよ。なんかさ、ここまで先手を取られると自分ら自身に呆れるよ。ここの魚雷で自爆しようと思ったが、面倒な手順が必要で、あんたも来たし、興を削がれた。氷室さんの勝敗も気になるし、外も空気が吸いたい」

秋山は本当にこの時には烏賊偉を騙すとか皮肉で云ったのでもなく、それは単純に自分が疲れていることに気づいたような感じであった。

それは桶谷も同じことで、3人で烏賊偉が痺れさせた8人のはやしお型潜水艦クルーを外へ抱えて出すことにした。

「まさか、だから眠り薬をダーツの先端に塗らず、痺れ薬にしたのか?」

秋山が問う。

そう、大の男たちが眠り込んだらただでさえ狭い艦内、一人の男に2人の男が抱えなければならない。

だが痺れているだけならば、肩を貸すだけ、一人の男は2人の男を運ぶことが可能。

「確かに、痺れ薬を塗れ!と言ったのは私たちのボスです。はい」

―そのボスがこの件に介入してきた時点で、オレたちの負けは決まっていたってことかよ。

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