第2話 決戦!瀬戸内海国立公園 Act3 真水3
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♪どうだ思い知ったか! 俺たちの底力
今日も堂々勝利の大行進
空を焦がしたまっかな炎は
正義を守るかがり火だ
♪弱い相手はもうあきた
強い相手にはどこにいる
われら最強 われら最強 最強マシンロボ!
われら最強 われら最強 最強マシンロボ!
「これを、選んだかーーーーーーーー!?なんで!?」と伴賀。
マリンドラゴンの艦橋の面々、いつくしまのクルーたち、そしてタンカーの仲間たち、皆呆然。
だがスタンドマイクで、タンカーの中央で歌う亜樹子に迷いなど、ない!
♪行くぞ 行くぞ 攻めるぞ! 勝まではどこまでも
やるぞ やるぞ 見せるぞ! がんばるぞ
「急に作詞家、やる気失せているな」と望太郎。
♪負けて逃げ去る 背中に向かってー
落ちる夕陽を 投げてやれ
「卑怯じゃないか、それは」と遼斗。
♪友よ一緒に腕を組め
そしてあしたの戦いへ
われら最強 われら最強 最強マシンロボ!
われら最強 われら最強 最強マシンロボ!
♪友よ一緒に腕を組め
そしてあしたの戦いへ
われら最強 われら最強 最強マシンロボ!
われら最強 われら最強 最強マシンロボ!
はやしお型潜水艦内部。
「いやぁ、がんばったよ」と秋山。
「陸に残してきた娘、離縁した妻と暮らしている娘、をね」と桶谷。
そして氷室は無言。
―まだこどもなんだなぁー。
そう、挑発に乗って、津波で脅すマネをして後悔していた。
それは隙といってよかった。
この脱力、狙ったものではなかった。
確かにこの意外な選曲とギャグではなく、かなり情感たっぷりに歌った亜樹子だったので、非難する・笑うものなどいなかった。
だからある意味、意趣返しとなったし、亜樹子は氷室から一本とったことになる。
何故ならば、この歌により、緊張の糸がぴんと張られていたはやしお型の艦内は言葉に詰まったのだ。
それを、海底にいる敵部隊の心情を伴賀は見逃さなかった!
だから、命令を出した!
「ファイヤー・ソード・レクイエム!!!!!!!!!!!」
綾川伯父が凄い速さでキーボードに入力していく。
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
続けて伴賀は「マリンドラゴンの全乗組員に告ぐ!衝撃に備えよ!!!!」とインカムに発声する。
遼斗は固定バーをしっかりと握り、何が起きているのか知りたくて、辺りを見渡す。
すると周囲の外の景色が燃えている。
艦橋は四面が超硬密度のガラスを張り巡らされ、それでもできる死角はディスプレイで補助される、それが全部燃えている!
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
「おいおい!おじさんの船!大丈夫なのか!あじゅこ!」と希雄。
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
「す、すごい!!!これは火祭りだ!海上でこんなことが!これは薪能だよ!巨大で、常軌を逸した薪能なんだ!」と天鱈。
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
「で、これ、何になるのか!?」と冷静な零子。
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
「伴賀ーーー!おまえを信じていいんだろうなぁ!?」と栗久。
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
結局攪乱しかできないレーザー・リフレクター、いくら3㎏とはいえ、巨大な潜水艦にぶつけてもかすり傷もつけれない。
せいぜい、ちょこまかと動きまわるが、亜樹子の歌を聴かすくらいだ。
だから、残ったもう一つの特殊能力、ファイヤーソードを使った、しかも負けることが嫌いな駄々っ子のように360度に振りまいている。
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
遼斗は、人生でいちばんの危機を伴賀に救ってもらった。
いちばん好きな女の子の命を救うことを手伝ってこらい、いちばん大切な女の子とお腹の子に未来をくれた。
だが、伴賀がいかにマジであろうが、滑稽に見えていた。
―海の過激派組織相手ならばいい、しかし!プロの軍人に対しては完全にういてしまっている!遠吠えする負け犬のよう悲しいほど滑稽に見える!
「いや、信じるんだ、遼斗くん」と房望太郎が遼斗の手を握りしめながら、云う。
「でも、もう勝機がまるでないー」
「そういう勝機がない時に信じることが本当にひとを信じることだとは、ぼくは伴賀さんから教わったよ」
「!」
―そうだな、そりゃそうだ。
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
「あ、暑い、この距離で暑いとは、どれだけ放熱しているんだ」とは栗久の言。
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
そう、この海域の温度を狂わせるほどの暑さ!
タンカーのみんなもじょじょにその異常性に気づき始めた。
さがさすがに氷室たちには気づかれていない。
更にファルコン・ヘッドから出される炎は強くなり、回転も止まらない。
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
海水は温められ、熱湯に迫る温度!
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
そして、だからこそ、マリンドラゴンは湯気をまとったように他の船から見えた。
「なんやーーーーーーー!火の次は蜃気楼をまとっているようじゃ!」とちゃんといます忍教授。
「そろそろだなぁ!吉祥!ドクター!頼む!」
頼むとは、ピッポーシリーズのカタパルトがある船底と後部のハッチをいっぺんに開けた!開放した!
それは当然化学にある、あの現象を起こす!
バックドラフト!
火の燃焼により、酸素より周囲が二酸化炭素に包まれた時に、溜まっていた酸素が急に開放され、その酸素に引火し、爆発する現象!
だがそれだけではない!
水蒸気爆発!
バックドラフトの発火が更に周囲の水蒸気の触媒となり、更なる爆発を巻き起こす!
何が起こるのか!?
質量550㌧のマリンドラゴンが!
体長200mのマリンドラゴンが!
伴賀の船、単騎決戦型特殊発散船マリンドラゴンが!
マリンドラゴンが空を跳んだ!!!!!
「マジかよ」と栗久。
「誰も考えつかないことをするのが大好きなおじさま!」と亜樹子。
「だが、それをしてどうなる!?」とは真剣な表情の遼斗。
「しゃっ!!!!未だ!吉祥!ユニット4サブマリンピッポー!急速発進!」
そう、マリンドラゴンの飛距離はわずか2メーター、跳んだとはいえ、それは戦局になんら影響しない。
「これを待っていたぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!!!」
吉祥の叫びのワケ。
このユニット4サブマリンピッポーは潜水艦と深海探査艇の中間のようなデザインで、ダンプカーくらいの大きさ、3メートル。
勿論民間所持の建前、魚雷などの兵器は積んでいない。
いや、その前にハッチが開く音とその前の注水音でマリンドラゴンが潜水艦を搭載していることが潜水艦のソナーマンにはバレバレになる。
つまり発進した直後にはやしお型潜水艦の魚雷のエジキになる。
だが、この状況はどうだ!?
あの巨体が着水するだけで、それはデカい音というだけではない、むしろそれはもう衝撃波となる。
秋山はマリンドラゴンが跳んだ5秒間だけ、レーダーから消えたのを目視している。
―レーダーの故障か?
次に着水音=衝撃波がソナーマンの耳を襲う。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
桶谷の絶叫。
この着水音とそれに続く水泡のぶくぶく音。
これでは一切、ユニット4サブマリンピッポーの出撃をはやしお型潜水艦の誰もが気づかない!当然だ!
「全速前進、ともかくこの場から離れよ!」
氷室の指示に総員が動く、働く。
「そうだな、そうくるよなぁ!!!!!!!!!!!!」
この時に、ようやく大量の水泡で見えなかったサブマリンピッポーからの映像がAIによる補助編集で見られるようになり、ディスプレイに映った。
しつこいようだが、サブマリンピッポーはなんの武器も持っていない。
だが、深海作探査艇でもあるサブマリンピッポー、3メーターもあるマニュピレーター、両手を持っているのだ。
そして吉祥の乗るサブマリンピッポーの両手にはぶっとい直径4㎝、長さ30mのワイヤーケーブル!
はやしお型潜水艦は氷室の命令通り、前進を始める。
それはつまり最後部の巨大なスクリューが超スピードで回転を始める、ということ。
だから、吉祥はサブマリンピッポーでそのスクリューの近くでそのワイヤーケーブルを離すだけでよかった。
ワイヤーケーブルは吸い込まれるように巨大スクリューに絡みつき、その運動を止めた。
その様が、マリンドラゴンのディスプレイに映り、それは勿論、いつくしまとタンカーにも流れる。
その三隻で割れんばかりの拍手、拍手、拍手!
―伴賀さん、疑ってごめんなさい!あなたこそ、おれのヒーローだ!
遼斗が伴賀の横顔を見つめる。
その視線に気づき、伴賀が遼斗に右手の親指の指紋を見せつける。
かくして、氷室艦長のはやしお型潜水艦は、この瀬戸祭攻防戦に敗北した。




