第2話 決戦!瀬戸内海国立公園 Act2 海水5
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瀬戸内国際芸術祭!
それは瀬戸内海の島々と沿岸部を舞台に3年に1度開催される現代美術の国際芸術祭である!
略称は「瀬戸芸」!
2010年に第1回が開催され、既に5回開催され、亜樹子たちが参加する今回の大会が第6回となる!
アーティスト、地域住民、ボランティアサポーターらが対等な関係として大会を盛り上げ、瀬戸内海は古代・中世は日本の中心、近世までは流通の要、だから史学や民俗学・考古学的にも魅了溢れ、勿論景観も自然も美しく、生産される野菜や肉に・獲れる水産物と食にも一日の長あり、住める・暮らせる・旅する芸術祭として評価が高い!
特にアジア圏のアーティストが多く集まり、古代に瀬戸内海は琵琶湖から始まり、淀川を経由し、経済の上方、日本の中心であった京都、そして瀬戸内海、九州、沖縄、フォルモサ、日本海で半島や済州島にもリンクし、果ては東南アジアやシンガポールに至るアジアの海の最重要拠点であった!
だが、そんな華やかな歴史ばかりではない。
瀬戸内海には〈負の遺産〉もある。
瀬戸内国際芸術祭の会場はまさに瀬戸内海国立公園にあたる岡山と対岸の香川を中心にして17か所ある。
今ラーメン販売のタンカーが停泊してある下津井の港でプレ販売をして、出港の予定だった。
「繰り上げましょう!さすれば夜には別天地で販売が始められます」
亜樹子の言に皆は首を縦に振る。
その理由の一つに全世界のジャンル問わずアーティストを中心に「芸術祭開催中の同じ瀬戸内海でテロ事件勃発」の抗議の声を動画付きで上げた亜樹子たちのチームに称賛の声が噴出していた。
そもそもは金曜の朝から出港し、日曜夕方の三日間、瀬戸祭の各会場がある港や島を回るコースだった。
だが、一日半繰り上げて営業を開始すると動画配信サイトやSNSで告知を出すことにした。
「でも、いいの?」と心配そうな亜樹子。
―私の、自分だけの過去の因縁との決着に仲間を巻き込んでいないか?それは悪行ではないのか?
「動画観て、単調なゲームをして、タダでエロ画像見るだけが、イマドキの若者じゃねぇ!って、社会や世間に見せつける、絶好の機会じゃんかよ!」と希雄。
「タンカーの甲板というキャンパスに食べ物という戦争しながらではススれない画を描く!これはやってみる価値あるよ!」と零子。
「ピカソのゲルニカの例もあるが、桂離宮よりドライアイス工場や刑務所を美しいと言った坂口安吾を想起するよ。きみらが料理するのは見め麗しいフレンチでもなく、麺線の美しい特製つけ麵でもなく、野卑で荒れ狂う二郎系だろう?我ら委員会もカゲながら手助けする!」
「あなたは天鱈さん!」希雄のような芸大生が知らぬハズはなかった。
中高生の頃からアーティスト活動を始め、動画配信サイトやSNSを通じて自己プロデュースでも才能を発揮し、この瀬戸祭には10代頃に第1回大会から関わり、20代の今でも副委員長として、後人育成の先輩として、一人の芸術家として出展し続ける、チューリップハットの偉丈夫・天鱈さん。
「関本さん、亜樹子さん、だったね?これから、きみらは瀬戸祭委員会の名において、この瀬戸内海国立公園を無条件で航行してよく、どの港でも無尽蔵の補給を受けられる許可を出す!護衛として漁船二隻も配備しよう」
天鱈副委員長の背後にいる瀬戸祭関係者も笑顔でうなづく。
「いえ!実はもうとっくにこんなこのもあるかと思って、護衛は手配しているんです。実はその艦長から・さっきからずーっと電話が鳴り止まないので、代わりに話してくれませんか?」
と亜樹子に云われ、なんのことやら判らずにスマートフォンを受け取る。
『はい、瀬戸祭の天鱈副委員長です』
『あ、どうも、マリンドラゴン艦長の伴賀と言います』
『関本さんのタンカーを護衛していただけるということで、そちらは戦艦なのですか?』
『いえ、〈単騎決戦型特殊発散船〉なので戦艦ではありません』
『発散?ですか?』
『はい、戦艦とか自衛艦とも使えないので発散にしました。色々武器や装備はあるんですけど、それは戦っているのではなく発散しているんです、はい』
『あのー、わたし、随分長いこと、芸術とかアートに携わってきているんですが、その類いですか?』
『あー、いや、多分違うと思います』
それから亜樹子はスマートフォンを返してもらい、航行進路を告げたり、通信手段の算段をつけたりして、電話を終えた。
『おじさま、先に行きますわ!』
「エッ!大島って、あの香川県大島かい」と天鱈副委員長が尋ねる。
「はい、三日間しか航行しないから会場全17か所は回れないだろうとオミットした島です」
亜樹子が云う〈大島〉は癩病間者の収容所があることで知られる。
明治の頃に建てられ、名称を何度か変え、この令和の世でも少なくなった患者たちが住む。
「よし!瀬戸祭!アッセンブル!」と何故か一緒に乗り込む天鱈であった。
大島は約7キロの小さな島だったが、港もある風光明媚な島であった。
瀬戸祭スタッフやボランティアは若いだろうが、島の住人である患者は高齢の者が大半、だから、麺量は300と固定、コールはニンニクの有無のみで野菜・アブラ・カラメは平常にこれも固定、但しもう一つのメニューで麺量50~100g(これは少量だから素人は分量を量りかねる際を想定して幅をもたせた)を発泡スチロールの味噌汁椀に入れて、半熟卵を具にしたかやくご飯のおむすびをセットにした〈ジロオニセット〉といういちげんさん・高齢者向けメニューを用意した。
「実家が大阪だから帰省の度にラーメン荘行くけど、まさか瀬戸内海で夕焼け見ながらこの乳化スープを吸ったぼそぼそ麺を喰えるとか!」とボランティアの男の子。
「ああ!二郎って男性向きって思い込んでたけど、家系や魚介豚骨より優しい味じゃない!なによりこれ、かなり味も麺の噛み応えも好みだわー」と高松市内の女子高生。
「こんな食べ物が、こんなうどんがこの世にあったのか、珍しい味だが、いや、どこかで・いつか食べたような気がする。この瞬間にこのスープを飲めることが私の人生にあるなんて、考えたこともなかった」と機用に割り箸で食べる年配の男性。
丼の箸も割り箸だが、300gのメニューの方はちゃんと瀬戸物の丼を使っていて、しかも〈藝大ラーメン〉と刻印までされている。
藝大だから巨大な窯があり、立体物の希雄が春から手製したのだ。
「丼で食べないとサマにならないでしょ!」
タンカーに折り畳みテーブルを並べ、それぞれにパイプ椅子。
簡易版の流しでは零子と亜樹子が丼の洗い物。
動画配信サイトでその光景がライブ映像で流れる。
『なんか、テロとか抜きで美味そうじゃね?』「美味そうもうそうだが、楽しそう(/・ω・)/』『オレ、都城市だし、週末は宇和海渡って行ってみるかな、ラーメン食って・良い景色とアート鑑賞とかwww』
ちなみにやはり菅田一佐が情報統制をひいたから、潜水艦強奪の件はない、と言い張っている。
マスコミには流れないし、ネットの利用者も半信半疑で中には亜樹子たちの仕掛けた売名行為とも揶揄する者たちもいる始末。
だが着実に氷室由紀夫艦長のディーゼル潜水艦はやしお型は瀬戸内海に迫っていた。
「おじさま、夜のうちに小豆島に移動しておくわ」
日付は木曜となる。




