第2話 決戦!瀬戸内海国立公園 Act2 海水3
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「学生気分でやるとかじゃなくて、ちゃんと当局にスジは通さないと」とは希雄が「そういうのアドリブとかゲリラでいいっしょ!」と云っていたのに対しての亜樹子の反論だ。
だから今、水島海上保安部にいる。
海上イベントの申請を既に出しており、今日はその許可証をもらい受けに来たのだった。
亜樹子は例のヨーロピアンなオートバイで、希雄と零子は東京から乗ってきて・調理器具を仰山積んだトラックでこの水島湾までやってきた。
あ、でも、もう調理器具は材料と共に既にタンカーの甲板に運んである。
―ハデなことやウケることをやる必要はない、というかハデなことも・ウケることも実は泥臭い・ジミなことの繰り返しでしか達成できないんだよ。
これは亜樹子が伴賀や綾川教授から学んだことの一つ。
待たずに直ぐに窓口に立てたが、押印が必要なため終わり次第お呼びします、と制服姿のお姉さんに云われた。
三人はソファに希雄、零子、亜樹子の順で待つ。
「なんかさぁ、高校の頃の学園祭を思い出すよ」と零子。
「おれは力仕事ばかりだから体育祭の気分さ」と希雄。
こういう時、気が利いた・面白い三段オチが巧い亜樹子が無言だった。
少しの間の後、零子が「アキはなんかないの?高校時代の思い出」と云った。
「ないねー、私高校行ってないから」と亜樹子、即答。又間が開いたので、それを意識してか「大検取ったんだよ」と云う。
「東大を大検で入るひと、珍しくねぇーか?」と云うがこれは気を遣ってとかではなく、本当に疑問を持って問うたのだ、希雄はこういうトコは重宝される。
「うん、だから大検の勉強と受験の勉強二つしたからタイヘンだった。だから、今はスゴく楽しいんだよ」
―そう、高校受験なんて、しているヒマなんて私にはなかった。
庁内のスピーカーがハウリング音を強烈に出す。
職員が数名立ち上がり、部下や客を気にする素振りを見せる。
急にその不快な音はやみ、ノイズのやたら入った男の声が始まる。
『私、氷室由紀夫が命じる!国民全員を軍属とする!そして、ネット環境の絶滅した世界で、郡県制を取り、日本を七ブロックに分け、それぞれで切磋琢磨し、貿易を発展させる!』
マリンドラゴン甲板。
元々、氷室からレスポンスを待っていたので、聴き易いように船内アナウンスには繋いでいたが、まさかここまでの声明が出されようとは、伴賀や綾川も、投降を促した吉祥にも予見できなかった。
「ダメだこりゃ!」と伴賀。
「アキちゃんの件もあるし、早めに退治しないとな」と吉祥。
場所は例の鬼ヶ島のドッグ島で、シーピッポーが到着する。
最早専属操舵主となった遼斗に伴われ、三人の男がやってきた。
「吉祥さん、お久しぶり」とシャーク・インベスティ・ゲイション、会長室室長(つまり伴賀の私兵・間者)の大和田である。
「なんか、退場かと思ったら、もう登場しちゃいました」と元マリンドラゴン・クルーの西谷。
「昔みたいだな、吉祥案件で捜査するのは」と陸幕の南郷。
大和田は綾川と伴賀とも挨拶をかわし、西谷は博志と望太郎と旧交を温め、吉祥は南郷に仁義を切った。
「あの放送、聞かれましたか?」そう遼斗は口火を切った。
「うん、だから、少しづつ解き明かしていくんだ。あんな足場を崩すような大改編がうまくいくハズない!みんな!冷静に考えよう!オレたちは海保と組んで、氷室の潜水艦を食い止める、だが!今度の一件は5年前の高橋二佐の殺人事件が大きく絡んでいる。その点では、あの氷室という男もその呪縛の内にあると思う。オレのその仮説を証明したいが、オレたちはVS氷室がある。マリンドラゴンクルーはこの7人でしかあり得ない」
そう、ちょっと伴賀の宣言を中断して説明すると、マリンドラゴンを管理・運用するにあたり、7人が必要な最低人数であった。
海保の大型巡視艇が20~30人必要なので、1,500㎡のマリンドラゴンを運営するにあたり、7人では少なすぎるのではないか?
いや、AI化にオートマチック化でマリンドラゴンの航行自体は一人でも可能だ(できれば2~3人が望ましい)。
ピッポーシリーズのそれぞれの乗組員で3~4人必要なので7人でもミッションは充分可能だ。
だが多いに越したことはないのに、7人態勢を伴賀と綾川は貫いている。
それは何故か?
まず今のところ出てはいないがケガ人どころか死者が出る可能性もある仕事、それを自社の社員や書類審査で雇ったような連中に任せられない。
だからクルーは全員伴賀のスカウトや綾川や吉祥含めた首脳陣の話し合いでしか採用しない。
だからもし業務上で死亡することがあれば、それは例え、左翼の過激派や自衛官の潜水艦テロで殺されても事故として処理される。
それを最初の時点で納得づくで皆参加しているのだ(だから遼斗に提示した年収1,500万円は特別高いというワケではない)。
つまり被弾した時にそこに一人いれば死者は一人だが、三人いれば三人死ぬことになるので最低限のクルーしか置かない方針なのだ。
「シーピッポーはおそらく必要になるだろうから、西谷くん!きみには隣に停泊しているホーンドドラゴンを使って、大和田室長と南郷二尉を舞鶴基地に連れて行ってくれ」
(また注釈、確かにマリンドラゴンと一緒にホーンドドラゴンらジェット船も参戦すれば戦力は増えるだろう。だがマリンドラゴンは建設コンセプトは〈単騎決戦型特殊発散船〉なのである⦅発散?⦆。つまりマリンドラゴンはシーピッポーやスカイピッポー等の数種の搭載機とファイヤーソードやレーザーリフレクション等の装備だけで作戦実行を完遂できるという理念で開発されているので、護衛艦や友軍機はそもそも必要ない。その運営は八幡浜湾海戦に詳しい)
(ついでにここでもう一つ説明しておくと、烏賊偉のダーツボムや吉祥の鉄心の太刀等、かなり強力な武器をクルーが携帯・所持しているのは、海兵隊の発想である。日本では軽視されているが、米軍には海軍・陸軍とは別に海兵隊が組織されている。その役目は揚陸し、敵地を占拠すること。どんな最新兵器を投入しようと戦争は結局、人力になるのだ)
「そしていくつか行ってもらいたい土地がある。そこで聞き込みをお願いする」
「ちょっといいかい?伴賀さん、これを読んでくれ」南郷は「菅田一佐から転送されてきた」と付け加え、見せた。
他の者もiPadで見始めた。
そこには氷室からメール、例の①から⑧の声明と目的が書かれていた。
「思ったより、気が狂ってるな」と大和田。
「うーん、そうなんだが、こういうストレートな表現、トランプや参政党と同じで人心には届け易いし、そいつらが使っていたレイシズムや好戦感情すら批判する内容、いや、大したものだ」と伴賀。
「ああ、これが10年前ならSFかよ!?で終わっていたが、政治不信に警察権の失墜、上級国民とそいつらの飼犬である自警団会社の暗躍、ペドリストとテロ国家という内憂外患、それがこの国の今のリアルだ!地方でくすぶっているヤツや氷河期世代代のおっさん、何かしたいけど結局ネットで動画見ることしかしないドパガキ、かなり喰いついてくるゾ!」と吉祥。
―こんなことを言って、しまうとオレは氷室を指示しているみてぇーじゃねぇーか!?
「あ、いいですか」と遼斗。
「あのー、難しいことは判りませんが、一つだけ。目的は良いことを云っていると思います。でも」
そして皆が遼斗を見つめる。
「でも、やっぱり目的のために卑怯な手段や方法が正当化されるなんて、許しちゃあいけないんです!潜水艦強奪もケーブル切断も悪い行いです。上級国民へのテロやジャンボジェット機で特攻?おかしくないですか?あんなのタダの魔女狩りですよ!」
伴賀のパチパチという拍手、そして吉祥と烏賊偉が続く、マリンドラゴンの仲間に大和田・南郷・西谷の即席興信所チームも拍手する。
―そうだ、若者はそれでいい!
そこに船内アナウンスから聴きなれた声。
『氷室艦長、私は東京大学公共政策学教育部都市開発学科二回生、関本亜樹子!私たちが運営し・参加する開催中の瀬戸内国際芸術祭に貴方の言動は行いも理念もジャマです!私は貴方に・ここで抗議を表明します!』
亜樹子をよく知るマリンドラゴンのクルーも、即席興信所チームも啞然。
―ここにもナイスな若人!




