第2話 決戦!瀬戸内海国立公園 Act2 海水2
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準備はマリンドラゴンがメンテナンス中でもちゃくちゃくと進んでいた。
吉祥から氷室への電文が作成され、それは栗久から菅田に渡され、今氷室のはやしおを付け狙う潜水艦そうりゅう型のリーダーの方に行き、水中音響通信で送られることとなる。
自軍の潜水艦同士、そうりゅう型からはやしお型へはしょっちゅう「投降せよ」だの「停止せよ」と投げかけられていた。
その中に突然、「吉祥元一尉からも伝言」と混じった。
あの暴れ馬のようなはやしお型が止まった。
そう、そうりゅう型二隻の艦長は共に氷室と吉祥が仲がいいことを知っている者であった。
だから、これ以上追わなかった。
なぜならば、氷室が次に何をするのか予想がついたからだ。
はやしお型が広帯域衛星通信のための浮きブイを出すこと、果たして停止した氷室は直ぐにそうした。
電波をほぼ通さぬ海水、このような通信手段がもっと音声がクリアになる。
追わなくなり、様子を見るというのは自軍の潜水艦の武士の情け、韓国海軍の潜水艦二隻は頼むべくもない。
韓国海軍の二隻がこの海域に100キロ圏内に入るのは15分後、それまでに氷室は吉祥の伝言を聴き、レスポンスがあるならば、レスしてもらいたい。
氷室は個人で潜水艦を動かしたのだ。
いくら誰も傷つけていない、未だ海底ケーブルを切断していないとはいえ、軍法会議は免れないであろう。
だがそれでもそうりゅう型の2人の艦長は氷室に戻ってきてもらいたかった。
それは氷室の正義感と温情家であることが人気であることもあったが、海自では、5年前の高橋二佐の殺害とその事件で詰め腹を切らされた吉祥一尉と有能なサブマリン・ライダーを2人も失っていたのです。
潜水艦一隻、原潜より安いとはいえ、ディーゼル潜水艦でも一隻500億円はかかる製造費だ。
だがそれよりも貴重なのが潜水艦艦長である。
天性の才能と弛まぬ努力と負けぬ根性と底なしの知識の四つを持って初めて一流のサブマリン・ライダーと言える。
赤旗は怒るかもしれないが、500億円なんて、一流の艦長に比べれば安いのだ。
それは潜水艦が現在の地球において最強の兵器だからに他ならない。
潜水艦に勝てるのは、空母でもジェット機でも戦車でもイージス艦でもない、潜水艦だけである。
(つまり、それだけマリンドラゴンは無謀なのだ)
だから高橋と吉祥に続いて氷室が海自から去るのは回避したい、が、氷室を直接的に・間接的に知る曹士以上の階級の隊員の思いでもある。
リーダーのそうりゅう型がメインタンクバラストを解放し、海上に姿を現す。
電波状況は確認済、良好。
そして艦橋のセールを開け、双眼鏡で浮きブイを確認する。
タラップの下にいる部下に送信の合図を送る。
氷室のはやしお型に流れる音声は二隻のそうりゅう型にも動画付きで流れる。
マリンドラゴンの甲板で、タンクトップにバミューダというラフないでたちに灰色のカーディガンをはおる吉祥が現れる。
『氷室、久しぶり。時間がないから手短に、三つ言う。一つ、今直ぐにその二隻のそうりゅう型潜水艦に投降してくれ、全力で以降の処遇は力を貸す、二つ、高橋二佐の件、誰が犯人であろうと、もういいじゃないか、オレは今それなりに楽しくやっている、なんならおまえも付き合えよ、最後、ケーブルを切断してそりゃ、ひとの命を扱う病院や軍事施設ならばバックアップをとってあるだろう。しかし全日本規模のネット回線の破壊は予想もつかない破局が待っているとおまえほどの男が何を持って気づかなかった?おまえの頭脳でも予想つかないことだってあるだろう。だからつまり投降してくれ、以上だ』
プツンと画像も音声も切れる。
ぶわーんとハウリング音が海域とそうりゅう型二隻、そして遠く離れたマリンドラゴンと巡視船いつくしまにも届く。
「諸君!私は海自三佐、はやしお艦長氷室由紀夫だ。今の吉祥元一尉の声聞けて嬉しかったゾ。諸君!私は自衛隊員の皆に、この放送を聴く自衛隊員の皆に訴えたい!」
氷室の低いが通る、同時に華のある声に皆が耳を貸すところ、栗久が最初に反応した。
「彼奴め!ヤバいぞコレ!海自の基地、呉、佐世保、舞鶴、海保の海上保安庁第五、六管区海上保安本部、つまり海保と海自の瀬戸内海一帯に流れているゾ!」
「そうか!あれだけ巨大なCommunication Buoyを使用していたのはこの瀬戸内海で宣戦布告するためだ!」
吉祥は回線を遮断しようとしたが、もう遅いことに瞬時に気がついた。
『私、氷室由紀夫が命じる!国民全員を軍属とする!そして、ネット環境の絶滅した世界で、郡県制を取り、日本を七ブロックに分け、それぞれで切磋琢磨し、貿易を発展させる!この国には武人がいない、武人から政治家も企業家もでない、だからダメなんだ!諸外国を見よ!軍人をケネディ一族も英国の王族も輩出している!だが、日本はGHQにより、軍隊を持てず、軍人がいなくなった!だからこの国は歪んだ!近代国家として致命的にカタワなのだ!まずは武人を育成するのだ、義務教育とは元来、維新明治政府が徴兵のための軍隊に直ぐ編入できるためのシステム、そのシステムが機能していないから、引きこもりやニートが生まれる、つまらない社畜になるのだ!そしてそんな愚民はネットで弱いものイジメをして憂さ晴らし、自己顕示欲を満たす、炎上と称した自分が傷つかない戦争、だったら、戦争を俺が用意してやる!高橋二佐の弟子たちよ!この放送を聴いたら、直ぐに馳せ参じろ!韓国の島山安昌浩級潜水艦二隻の艦長、きみら焼き鳥好きの黄とまどマギおたの朴だろう?きみらも参加してくれ!むしろ、この東アジアを我ら軍属の手で性根叩きなおすのだ!』
すると、直ぐに、巨大ウキから出ていたラインが切断される。
氷室のはやしお型は海底へと更に降下していった。
『おい!足立!しっかりしろ』
足立はそうりゅう型二隻のうちリーダーではない方の艦長で三尉。
そしてリーダーの方の艦長が今足立三尉に声かけた真壁二尉。
そう、真壁は足立が故・高橋二佐のシンパだと気づいていたのだ。
『いや、いやいやいやいや、真壁さん、大丈夫ですって、本当に』
表情が見えないが、動揺が海水を通じて伝わる。
そして黄と朴も通信は取らない(絶えず録音が義務化されているのを知っているから)が、2人とも高卒の職業軍人、そう、大卒以下の職業軍人は尉官までせいぜいで、さすがは学歴社会の韓国、軍隊内の出世にも学歴が関わる。
―そして大卒でも大半は正規雇用の会社員にすらなれない、だったら、徴兵がある我が祖国は軍属をそのままフィードバックした社会作りの方がいいのではないか?
氷室は①ネット環境を破壊することで、ネットで恩恵を受ける特権階級を潰し、ネットに蔓延る悪やキチガイを失くし、②軍属を基とした国家作りを提唱した、そして③日本をブロック分けし、周辺地域にもその体制を奨励していく、これは彼の革命の三本柱である。
通信が切れて数分後、先に栗久が言った、呉、佐世保、舞鶴の海自の基地の全隊員、海上保安庁第五、六管区海上保安本部の全職員のアドレスにメールが回った。
この発案に更に④沖縄や台湾を独立したブロックと認める、⑤ブロックはナショナリズムではなくパトリオティズムで守ること、⑥東アジアは海の基地、これから米国やイスラエルが戦争を起こせば、東アジア連合の〈海の騎士団〉が制圧に向かい、連合の資金はその制圧代と賠償金でまかなうと、これが飛ばせるだけの企業・役所や高校・大学のメインアカウントに送信されたのだ。
「5年かけたんだよ!オレはーーーーーーーー!」
はやしお型潜水艦の氷室の絶叫!




