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瀬戸内マリンドラゴン  作者: 井田雷左
序部 マリンドラゴン現る
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40/60

第2話 決戦!瀬戸内海国立公園 Act1 世情10



     10



ー三機の潜水艦が付いて、一機が氷室の超絶操舵力により海底に座礁を余儀なくされ、残機は二機だが、将官から全権委任されている菅田一佐がはやしおの迎撃を決めていることから、あと一機航行不能になれば、迎撃できる潜水艦は残り一機!今この瞬間にもその一機がはやしおに魚雷をブチ込むかもしれない!ということだ。

菅田の指示で、南郷と栗久が今回のミッションに必要な情報、詳細な経緯、潜水艦の能力、氷室の経歴、戦場になりそうな海域などの説明を始める。

―しかも第500軍事情報旅団とは!つまりこの2人の説明によると米海軍だけは氷室の目的が海底ケーブル切断だと知っている。まずケーブルを切られれば、周辺地域や太平洋の先にある米国も無傷では済まされない。米海軍がこの件に関与する錦の御旗を与えるようなものだ。現在の世界情勢的には、北朝鮮と中国を阻止するためならば、米国にとってはその方が有利だ。日本は米国に再度占領される!

これは皆が穏当に思いつく、弁証法であった。

『そうか!判った!直ぐに戻る!』

菅田一佐はかかってきたスマートフォンにそう答えた。

「米国の太平洋第七艦隊から原潜が本邦に向けて出撃された。氷室の潜水艦を拿捕するためだろう。まずは牽制するだろうから、俺は日米海軍協定会談の真似事をして時間を稼ぐ!吉報を待つ!」

そう云って敬礼すると南郷を連れて、ヘリコプターが飛び立つ。

栗久は勿論、辞めた吉祥、若人の望太郎と遼斗まで敬礼で、飛びあがるヘリコプターを見送る。

「あの背の高い・年齢も皆より高い男、なんの知り合いか?」

機内の菅田一佐が南郷に。

「はい、陸自大学校でインテリジェンス、つまり諜報戦のゼミに教えに来ていた講師でした。えらく切れる先生でしたが、妙に情緒不安定なトコがあってよく覚えていたのです」

これは綾川士仁のことである。

マリンドラゴンの甲板には烏賊偉が降りてきた。

代わりに望太郎が艦橋に戻り、いつ出航か判らぬので、博志と2人で準備を始めている。

「ネットやAIが突然国内の8割が使えなくなったら、この国はどうなるんでしょう?」と素朴な疑問の遼斗。

「まぁ、復旧はひと月くらいで済むだろうけど、その経済損失は数十兆円だろうね、今ネット無いとなにもかもが回らないし」とあっけらかんと伴賀。

「どこまで本気でしょうか。吉祥さまは氷室をいかに考えますか?」と綾川が烏賊偉の煎れてくれたコーヒーを飲みながら。

「ブラフではないと思う。海自の現状を憂いていたからな。道徳的・倫理的な悪が許せないから、核ミサイルや細菌テロとか使わない・死者を出さない手段に出たんだろう」と眉間に皺寄せて吉祥。

「だとしたら資料にある海底ケーブルの重要拠点四か所、見えてくるものはあるな、これを見て。そう四か所中、三か所は日本海や太平洋、他所の国にも繋がっている。だからここを切れば韓国に、こっちだと台湾にそれぞれネットが崩壊し甚大な被害を与える。そこで出来れば最初は他国に迷惑をかけないトコから切るだろう。じゃないとその国の海軍も敵に回すのだから」とiPadを見せながら栗久。

「だったら、ここしかあり得ないじゃあないですか」とやはりコーヒーカップを持ちながら、烏賊偉。

―瀬戸内海!

「やっぱ、瀬戸内海になりますか!ぼくらは!」と嬉しそうな伴賀。

「今現在、はやしおは宍戸湖と対馬の間を行ったり来たりしてそうりゅう型潜水艦二機を撒いている状況です。やはり瀬戸内海にどう入ろうかと画策している」と和菓子を食べ、コーヒーを飲みながら栗久。

「鳴門海峡を通って、松山あたりで迎え撃つ!」と吉祥、そう、松山の先、小豆島と淡路島の間あたりに海底ケーブルの束があるのだ。これは九州・四国・中国・大阪京都を結ぶ大動脈だ。切られれば、日本の西国は大ダメージを受ける。

ちなみに和菓子はみんなで両口屋是清のをちこちを食べている。

「なるほど、さすがは吉祥さん、潜水艦乗りだね」とをちこちを食べなら伴賀。

「どういうことですか?」やはりをちこちを食べながら遼斗。

「島というのは浮かんでいるのではない。海底の地下まで土台がある。あすこいらは小さな孤島が数百ある。潜水艦はかなり運航し辛い」とコーヒーで流し込みながら伴賀。

「いや!ちょっと待って!栗久さんは巡視船いつくしま、伴賀さんはこのマリンドラゴン、この二機でディーゼル艦とはいえ、潜水艦の相手って、おかしくないですか?」とコーヒーで流し込みながら遼斗。

それはここにいる大人が全員知っていることだ。

海中で三次元移動できる潜水艦は海上で二次元移動しかできない船に勝つことは皆無である。

「しかも海保の巡視艇の武器って」と遼斗が言いかけると「そう、20ミリバルカン砲と機銃が一丁」と栗久がすかさず答える。

「それでどうやって海中の潜水艦に当てますか?マリンドラゴンのファイヤーソードも、ビームリフレクターも、つまり炎も光も海中の相手には無力ですよ!」と遼斗、いささか興奮して。

「民間船ですから」とをちこちを食べながら綾川が。

「なんか実はビーム砲とか迎撃ミサイルとか、海底の敵にも当たる兵器を隠し持っていたりしないんですか!?」と遼斗だけ激しく。

「無いんだな、これが!」と伴賀。

「そこでいろいろ考えるのが用兵術よ!まず、なんとかしてオレがこの艦にいることを氷室に教えてくれないか。さすれば、あいつの性格上、フェアな戦いを仕掛けてくる、挑んでくる!」と吉祥。

「判りました。菅田一佐に頼んで挑発してもらいましょう」と栗久。続けて「今、その菅田一佐からメール来ました!」とディスプレイを見ながら「なになに、韓国海軍に要請して潜水艦二機を済州島・釜山港間に展開中!と!」だと皆に報告。

「ふん!さすが、菅田のおっさん、韓国に強力なコネあるもんなぁー!」と吉祥。

「四機の潜水艦の援護、群島という潜水艦の操舵し辛い海域、昔のライバルがいることでの煽り、これって案外勝機見えて来ただろう、遼斗くん!」

伴賀にそう言われて、「そうかなぁ」と思ってはいたが、遼斗は「はい」とは返事しておいた。

「あのー、ちょっといいですかー」と烏賊偉。「伴賀さん、関本さん、アキちゃんとの約束はどうするんですか?」

「ああああああああ!忘れていたー!」と伴賀、立ち上がって。「亜樹子に怒られる!どうしよう!」

「伴賀さま、ホーンドドラゴンやホルダードラゴンがあるではありませんか」と古い相棒の綾川。

吉祥と出会った時に乗っていた高速ジェット船でいまだ三機とも健在である。

「でもマリンドラゴンの初お披露目も兼ねているし」とかわいい伴賀。

「伴賀さん、関本さんのイベントは明々後日で、こっちは明日中に片付ければいいんじゃないですか。なにしろ潜水艦のバッテリー切れに米海軍の原潜と勝負を早く済ませたいのはあっちだって同じですよ」

そう云い忘れたが、本日が水曜のAMだから明々後日は土曜、そしてくみ子の出産予定日がちょうど一週間後の水曜だから、来週月曜から遼斗は八幡浜に帰省する。

「そうだ!それだ!それならばいける!」と伴賀、大喜び。「だけど、その前に」と伴賀、吉祥を見据えて。

「吉祥、今回の件に深く関わっているから、もう聴いてしまう。海自でいったい何があった?そしてどんな理由で辞めた?今まで断片的にしか聴いていないから、オレは理解はしたが、納得していない。氷室という潜水艦乗りと高橋のいう名のクーデタ首謀者、吉祥の口から説明、してくんないか?」

こうして吉祥は5年前のあの事件の直後を含めて・初めてマリンドラゴンの皆に語り始めた。

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