第2話 決戦!瀬戸内海国立公園 Act1 世情9
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海保と接触する。
しかも今日中、早いうちにということで、マリンドラゴンは急遽、鳴門海峡を越え、太平洋に出た。
室戸岬の更に先、百カイリあたりで待つこと30分、海上保安庁のヘリコプター・あおるりが飛んできた。
マリンドラゴンの甲板には最大4機のヘリを着艦させることが可能。
実はジェット機も発進させることが可能なように設計されているが、その能力が発揮されるエピソードは今のところ準備されていない。
栗久を先頭に3人降りてくる。
『次は菅田健三郎、海自一佐だ。日本の海軍で最高首脳の一人だ』
海保のヘリを見上げる伴賀の耳には例のイヤホンのデバイスがはめられており、海軍からのはみ出し者の吉祥はこの場におらず、見晴らしのいいバードヘッドに隠れ、伴賀と連絡を取り合っている。
『おっとこれは意外だな、正直驚いた。南郷隼人、陸幕の間者、陸自の服部半蔵が来たってことは海と陸のセクト主義を飛び越えてのトラブルってことだ!』
この三人が降りて来て、ヘリがローターの回転を止めると、伴賀、綾川、その甥・博志が出迎える。
伴賀が右手を差し出すが、菅田はそれを無視する。
栗久がその無作法にフォローを入れようとするが、遮るように菅田が話し始める。
「この船上には私はいない。だから握手もお辞儀もしない。だが貴殿と貴艦の早めの対応に心より感謝する」と右手を挙げるだけの海軍式挨拶をした。
伴賀と綾川2人もその挨拶にならったが、しょせん、文系の民間人、サマにならない。
綾川が「艦橋のブリーフィングルームに案内を」と言いかけたところで、菅田が「いや、いい、天気もいいし、盗聴の心配もないから、この甲板にしよう。すまんが人数分のイスを用意してくれ」と綾川に云い、甥が艦内に戻り、望太郎と遼斗と共に準備をする。
「あとさ、伴賀さんだよな!マイク、このくらいの声量ならば、拾えるか?吉祥光世!出てこいよ!夏の八幡浜湾での一件、おまえも参加していることは日左連の漁船に潜入したエージェントからの報告で知っている!今回の依頼はおまえにも関係あることだ!降りてこい!」
―さすが、一国の海軍の佐官、こういうヤツと会うと自分のチンピラぶりを思い出すゼ!
とやさぐれる伴賀。
十数秒後、遼斗と望太郎と共にパイプ椅子を運んでくる吉祥の姿があった。
博志と烏賊偉が艦橋に残っている。
「吉祥さん、おひさぶりです」とこれはこうべをたれながら南郷隼人。
陸自と海自の別あれど、南郷と吉祥は旧知の仲であった。
この二つの〈軍隊〉を上手く動かすために情報を教え合っていた関係にあったので、友人といっていい。
一瞥をくれたのは菅田一佐。
無視するでも・話しかけるでもない、これくらいでよかろうという余裕が見える。
「で、ひとを呼び出して、なにようかな、菅田さん。階級つけなくていいよな、オレは今、民間人だし」
だが吉祥が口火を切った。
「そう、民間人に協力を自衛隊は仰がない。だが海保は別だ。海保は文官、海の警察だ。空き巣に入った賊を捕まえるのに協力したら、その民間人は表彰される。だがテロや上陸してきた軍隊を倒すのに民間人が協力するふうを見せた瞬間、その者は排除されるか殺されるであろう。だから、ここには海保の栗久くんしかいない。私と南郷くんはいない」
だからなのか、栗久は紺の上下による海保の制服だが、菅田と南郷はノーネクタイに藍色のジャケットを着ている。
菅田とその台詞に戸惑う面々だったが、綾川が口火を切った。
「ああ、南郷くんでしたか?わたしを憶えていますか?」
「は、はい。会って直ぐに思い出しました」
会談のテンポがズレたようであった。
だから見かねてか、菅田が話し始める。
「率直に言おう、きみの友人である氷室由紀夫三佐が連絡を絶ち、既に20時間が経過している!」
「!」
続けて吉祥は「未だあいつははやしおの艦長ですか!?」と問う。
「ああ、だから活動限界、いや、この場合、目的を達成するのであれば、敵対する艦への迎撃も考え、バッテリーの残量で戦闘するのであれば、四日が限界であろう」
「で、その氷室艦長は何を企み、海自の潜水艦を持ち出してやろうとしているのですか?」
伴賀、ようやく発言のイニシアティブを取り戻す。
菅田、だが口が重い。
「セオリーだと核攻撃、いや、非核三原則からそれはリアルじゃあない。エッ!細菌兵器!?」
名だたる大人の男たちを前に意外にも遼斗は疑問を投げかけた。
「そうだな、少年、その通りだ、その二つではない。じゃあ、なんだろうねぇ」菅田、遼斗をからかった様子でなく、ため息混じりに。
「何か秘密を握っていて、それをマスコミに売ったり・ネットでバラまく、とか?」と望太郎が答える。
「それならば、潜水艦を強奪する必要がない」とこれは南郷が答えた。
「そうか、南郷、怪盗紳士じゃあないんだから、犯行予告なんてしない。氷室の目的を捉えたのは貴様か!?」
マリンドラゴンの面々は海軍将校が〈貴様〉と呼ぶのを初めて聴いた。
「ああ、吉祥さん、氷室さんの目的、そもそも俺らの部署が彼の不自然な行動をリークしていた。そして今回の一件が起こったのと同時に彼が調べていたことが発覚した」
「だから、それはなんだ!?」
「海底ケーブルの切断!」
―!!!
マリンドラゴンの面々。
菅田が説明を始める。
「ネット等の通信で使われる海底ケーブル、その所在はテロ対策でどのように張り巡らされているのかはトップシークレット!海自のサブマリン・ライダーにだって知らされちゃあいあないのは吉祥くんも知っているだろう。だがエキスパートであるから、作戦内容によっては情報にアクセスできる権限を持つ。だがそれが不自然なため、陸幕に気づかれた。氷室は、四か所の海底ケーブルを切断することで日本列島の8割のネットワークを不通にさせることを計画していることが発覚した。だが時既に遅し、気づいた時にははやしおが奪取された後だった」
「じゃあ、もう、とっくに一か所くらいケーブルをちょん切られたあとでしょうに!」遼斗でも判ることの重大さに感応した震えが言い方に溢れていた。
「だが、南郷くんがギリギリになって伝えてくれたから、我々は直ぐにはやしおをリークするようそうりゅう型のディーゼル潜水艦三機に追わせたのだ!それが20時間前だ!」
苦虫を嚙み潰したような菅田がその表情のワケをここでようやく暴露したのだった。
「我々としてはそんな現役海自隊員によるテロ行為を予防するために魚雷一発叩きつけることを選びたいが、自衛隊内での同士討ちは避けたい。それに氷室の目的は不安定化工作そのものにある。その後、どうするか判らんのだ。なぁ、判るか、吉祥くん!これはあの高橋二佐のクーデタ計画の再現なんだよ!5年前のあの造反を氷室のバカは再現しようとしている!」
「いや、菅田一佐、氷室のヤツこそは高橋の野心を阻止した功労者でしょう!」
「そして、君は海自を追われた、だったね」
「いえ、自分で出ていったんスよ」
2人の間には過去の後悔は勿論だが、海自独特の寂寥感が確かにあった。
「しかし、こんな民間船になんのようです?超極秘をベラベラしゃべったいますよね?」とマリンドラゴンのオーナーとして伴賀。
「氷室の潜水艦を捕縛か、それこそ航行不能にしてもらいたい」と菅田。
「いやいや、ムリでしょう!あっちはディーゼル艦とはいえ戦争兵器だよ!」と望太郎。
「我々は既にはやしおに潜水艦三機を付けている。しかも中国・ロシア・北朝鮮がはやしおの不可思議な動きに気づき牽制を始めた。それに対応するので手一杯なんだ。最終的に私がはやしお撃沈の号令を出すしかない。だが!それは避けたい!海自は高橋のヤツのクーデタ騒ぎで今も組織として傷を負っている!そこで同士討ちあらば、海自がガタガタになる。それを栗久くんも理解してくれて、今回きみらに託そうと決めた。この艦に吉祥くんがいたことがなによりの僥倖だ!マズいんだよ!本当に!海底ケーブルの場所を氷室が調査していたのに気づいたのは陸幕だけじゃないんだ!」
「それはどこですか?」と話疲れた菅田に吉祥が尋ねる。
「米軍、第500軍事情報旅団」
―米国最強の諜報機関、ファイブハンドレッドエムアイ!
代わりに栗久が答えると綾川や吉祥の軍関係者は青ざめた。
そこに菅田のスマートフォンが鳴る!
『なに!はやしおにそうりゅう型が一機、海底に挫傷させられただとーーーーーーー!?』




