第1話 過激派の殺し方教えます Act.3 ファイヤー・ソード 7
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―私はその男の顔を写真で知っていた。
歌村時代の販促としての写真が数枚、手に入ったからだ。
日左連には各地の左翼のアブレ者が所属する団体だったが、そもそもに二村は日左連に直で入会した珍しいクチであった。
瀬戸内海のあらゆる島や港町に派遣されていたのだ。
アジトは海上の船。
片目になってから、その特徴からアシがつくことを怖れ、前線に立たなくなっていた。
それがようやく伴賀が知れた情報だった。
―では日左連を壊滅させないといけない。歌村の逃げ場を潰さないといけない。いや、でないといつまでもヤツらの蛮行がやまない。
東大の学部生だった伴賀の七つ上に年齢で、大学院生だったのが、綾川伯父、綾川士仁、当時から既に教授決定と云われていたので、プロフェッサーのあだ名だった。
情報工学、専門は有史以来の諜報活動戦、インテリジェンスを得意とする。
「マスコミや法曹界にも日左連のシンパは大勢いるといいます。私からもそこいらにアプローチをかけましょう」
当時未だ30を超えていない綾川伯父はこの調査を基にして、伴賀と2人で、情報産業シャーク・インベスティ・ゲイションの碑を築いた。
甥の博志が参加するのはずっと後年になってのことである。
綾川と伴賀はこのような仕事を始めたこともあって、護身術よりはもうちょい攻撃的な体術も習い始めた。
表向きは企業診断が本職だが、この頃のシャーク・インベスティ・ゲイションは左翼の非合法活動を追うこともあって、闇の情報屋として、ひとかどの会社になっていた。
これが伴賀が重工業産業と不動産業を始めるにあたって非常に役立つことになるが、別の話。
だから、フリーランスの傭兵や元侠客を雇入れ、日左連の漁船や陸上アジトを襲ったこと数回、でも二村には出くわさない。
―やはり、一網打尽にしないとムリなのか。
「あんたは、そうか、復讐のためか、明るく見えたのに、暗いヤツだな」
「そういうおまえの目的はなんだ!?」
「汚名返上!」
と言って吉祥は少し笑う。
吉祥はこの日左連のアジトの一つが自分の汚名返上に役立つと強襲した時に出くわしたのだ。
飛び道具は使わない、セラミック式の伸び縮み警棒を使用していた。
こちらのプロの荒事師が三人、やられた。
「コイツらの一人が撮影していたそうな。その歌村ってヤツじゃねーか?」
吉祥が差し出した画像こそ二村が眼帯をして歩いていたもので、ここの下っ端が盗撮したものだということだ。
マリンドラゴンの建造が復讐だけが目的ではないが、その最重要の一つであることは間違いない。
プロフェッサー綾川(実際その頃には本当に教授になった)と剣士・吉祥光世、メンテナンスや操縦要員に最低あと三人は欲しいところ、そこで、詳細は後に明かされるが、綾川の甥・博志、房望太郎、西谷くんが参加することになった。
「あなた、伴賀さんだろう?私を雇ってくれないか。追われているんだ」
綾川伯父からは逃亡者を矢頭のはやめろと云われたが、同じような目的を抱えているようなこの男を重用し、専用武器ダーツボムを渡し、烏賊偉という偽名も与えた。
背が高く・殺気溢れる吉祥とは別に諜報活動を陸で行ってもらうと云い、各地の地方紙や地裁に潜り込んで、日左連と繋がり濃い極左な人物を把握し、ヤツらの動向を探って・把握したのだ。
すると二村らしき男の目撃例も増える。
サングラスをしていると、目撃証言が増える。
日左連も組織的に後継者不足とメンバーの高齢化と離職(?)率が高いので壊滅の危機に瀕していた。
そこでテロや密漁ではなく、久々に船上売春をやってハデに盛り上がり、軍資金も貯め、新入りにも女を抱かせて組織の安寧を企んだ。
その募集できたのがタノムサクやツーブロックだったのだ。
細胞と呼ばれる末端が計画の全体像も知らず、盲信して悪事すら働くとは匿名・流動型犯罪グループ、通称、トクリュウと似たようなもので、最近都心や都会で起きる上級国民テロと似たような人種が集まってきた。
―おれの実家、周防大島で起こしたことが又起ころうとしている。今度はどこだ?
調査の結果、それがここ、八幡浜湾であった。
この町によそ者が多くなってきているのが判った。
特にあのタノムサクやツーブロックは目立った。
厨多遼斗という少年、そして彼の家族も学校の知人らも知らないくみ子というカノジョ、それくらいは把握し始めた時に、焼肉屋で遼斗とマリンドラゴン一行は出くわすことになった。
実は伴賀だとて、この20年間、復讐のことばかり考えてきたワケではない。
仲間といると楽しかったし、マリンドラゴンやその搭載機が完成すれば嬉しかった。
今はもう引退した状態だが、関係会社それ自体にもそこで働く部下にも愛着がある。
20年は長い、だから、鈍る、復讐の心が、そして今この目の前にいる男、二村、命乞いどころか虚勢で笑ったりもしない。
サイコパスだから人を殴っても罪悪感がわかない分、二村が有利だが、8台のドローンを使える伴賀も不利ではない。
―ぼ、ぼくが命令します!伴賀さん、カタキをとって下さい!
右手内のコントローラーによって、伴賀はその8台のドローン・キッドを地面に落下する。
その時に初めて二村は伴賀に笑いかけた。
伴賀は二村を殴ろうと間合いに入り、右拳を叩きつけるが、いともた易くかわされ、むしろふところに入りこまれ、伴賀の腹に拳を叩きつける二村。
地面に転がる伴賀。
腰から刃渡り20はあるナイフを取り出す二村。
「絶対になにか持っているかと思っていたよ」
地面に未だ転がる伴賀。
「復讐だろう!?何のか知らぬが、内ゲバやヤクザとかではない。復讐目的のヤツ、過去数回、オレんとこに来たゼ」
間合いを取るために二村が歩を進める。
その刹那、8台のドローンが一斉に2mは急に飛び上がる。
2台づつがセラミック製のワイヤーを持つ。
4組8台、1組目がナイフを持つ右手首に、2組目が左足首に、3組目が顔に、4組目が左肩に、それぞれ相棒のドローンと協力して、何度も交差して、ワイヤーでそれぞれの部位を固定さす。
この状態のヤバさに気づいた二村はナイフを手首だけで放った。
5m先にはナイフは飛んだ。
だが伴賀はナイフを追いに行かない。
つかつかと二村の元へ歩いて行く。
右足を猛烈な勢いで蹴る。
左足がドローンのワイヤーの固定されているので、いとも簡単に倒れる。
顔にかかったワイヤーは鼻下から額にかけて何重にも回されている。
伴賀は二村の腹に座った。
二村の口内に右手を突っ込む。
だから、下の歯を含む下口唇から下顎を右手で掴むようなカタチとなった。
それを力を入れて掴んでいる伴賀。
その右手の袖口が何かがのぞく。
そう!〈水かけ〉が木刀を振り下ろした時の態勢。
袖口からのぞくものの正体は直径3㎝ほどの鉄製の筒。
その筒のヤバさに目視できないのに、ヤバさに気づいた二村はようやく抵抗を始めた。
上部の歯並びで伴賀の右手指を咬み始めたのだ。
その筒から二村の喉までの距離、わずか5mm。
伴賀は左手で右手上腕から出たエナメル質の線を掴む。
―速射破壊砲。
勢いよくそのエナメルの糸を引く。
筒の先端からは恐ろしく凝縮した空気の圧の塊が吹き出す。
「亜希の、カタキだ!」
射程距離、ほんの1cm、4cmではもう肌に触れても息を吹きかけられた感じすらしない。
だが、射程距離内ならば、鋼鉄すら破壊する。
その証拠に二村の喉には直径2㎝の穴がぽっかり空いていた。
残った一つ目を大きく見開いて二村は即死だった。




