第1話 過激派の殺し方教えます Act.3 ファイヤー・ソード 5
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五島だった〈モノ〉は最初、女の子たちのキックに反応していたが、やがてなんにも動かなくなった。
それでも宇江貴美子が五島の上半身にまたがり、殴り続けた、その時に涙を流し始めた。
「泣いてもおまえのしたことはどんなことをされても許されないんだ」
飽きたのだろう、宇江貴美子は立ち上がって、五島にツバをはきかけた。
「おい!その女!逃がすな!」
メンバーの女子高生の一人が叫んだ。
直ぐに二人が駆けだし、捕まえた、四谷雛を。
左翼の過激派の女と女子高生の、どう考えても後者の方が弱い存在だ。
だが、ついさっきまで一人の、大の大人の男を殴る蹴るの暴行を加えていたのだ。
そのアドレナリンとテストステロンの濃い味に口内を支配されている。
その鬼気迫る7人の女の覇気に四谷雛ともあろうものが完全に打ちのめされていた。
「まぁ、まぁ、な、まぁ、まぁ、わたしだって被害者なんだよ。獣ような男たちから酷い目を受けたんだよ。判ってください!お願いします」
そして雛は土下座をした。
「さっきのナイフはどういうつもり?」
この質問者は勿論宇江貴美子だ。
「あれは二村と五島にやれって言われたんです、って、え、五島さん?」
雛はこの時になって初めて、計9人から殴る蹴るの暴行を受けて瀕死の重傷の五島に気づいた。
よく雛は気づいたと思う、とてもひとの顔はしていないからだ。
「うわぁーーーーーー!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!組織の金を全部あなたたちに上げます!だから許して下さい」
土下座に更に額を甲板に打ち付けて、許しを請うた。
その情けない姿に女子学生たちの戦意は喪失しかけていた。
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
この異常な状況下にあり、女たちはマリンドラゴンが近づいてきたことに気づかない。
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
だが火炎放射される時に出る特有のプラズマ音に何人かは気づき、あたりを見渡す。
次第に皆もつられる。
だが一人、雛だけはそれを好機とみた。
「バーカ!おさらばさっさ!」
脱兎のごとく駆け出し、甲板を乗り越え、海に飛び込んだ、かのように見えた。
「ぎゃああああああああああああああああー!!!!!!」
耳をつんざく凄い悲鳴が聞こえる。
女の子たち6人が下を見る。
そこには漁船の大漁旗等を支える3メートルばかりの柄が出ていて、雛の右ふとももを貫いて、1メートルばかり深々と刺し、中途で止まっていた。
「痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!」
さすがにかわいそうと思った女の子たちだが、だがどうすることもできなかった。
その、雛を百舌鳥の餌のように突き刺した漁船に別の漁船が向かってきた、激突する。
激突の衝撃がこの場合、問題なのではない。
このブツかった漁船はマリンドラゴンのファイヤーソードによって焼かれ、全範囲が炎に包まれている船であった。
それは当然ながら延焼を起こす。
「熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!」
かつて四谷雛だった〈モノ〉が炭化していく。
少女たちは家族や友達たちと行く焼肉屋でよく嗅ぐ肉の焼ける香りを嗅いだ。
―やはり悪いことをしたら天罰が当たるんだな。
誰となくそう思った。
そして黒焦げとなり、永久に黙った。
あたりが燃えて、海上でも熱くなってきた。
四谷雛の髪の毛が燃えた匂いが今でも残る。
「き、きみたち無事かね!?」
三十路くらいの男たち7名がデッキに上がってきた。
少女たちは怪訝そうに男たちを見る。
「ぼくらが直ぐに助けを呼ぶ。ぼくらは騙されて連れて来られた。湾につけば電波も回復する。助けを呼んで直ぐに救出してもらおう!」
「あの、みなさんはどういう方たちなんですか?」
宇江貴美子が尋ねた。
「例えば、僕は東京でコンサルタント会社を運営している。こっちは官僚で、そっちはVR制作会社経営して、ヴァーチャルユーチューバーのマネージャーだっているぞ!」
男たちはこの真夏の深夜の船上であっても着こなしや髪型がイカしていた。
そして素敵な笑顔だった。
「あなたたち、ここで何が行われているか知っていましたよね」
ここからは宇江貴美子が会話する。
「左寄りNPO法人が瀬戸内海で新事業を始めると言われ連れて来られたけどね」
相手をするのは東京のコンサル。
「いや、売春のことですよ」
「へー。きみたちが売るんだ?自分を大切にしないといけないよ」
「とぼけないでください。私たちがどういう気持ちで無理矢理連れて来られたかって、理解してますか?」
「自分の気持ちを判ってくれ、か。そういうのはカレシを見つけていいなよ」
「違います。真っ当な大人だったら、そういう態度も・ウソもつかないってこと、理解できますか?と聴いてます」
「自分が今人生でいちばんキツい目に遭っていると思っているだろうけどさ。そんなの修羅場くぐってきたオレたちからすれば大したことないのよ」
「その大したことない私たちに今、生殺与奪の権利を握られている、いや、私たちがそのことに気づいていないと思っているの!?五島と黒焦げになった女が始末されるまで、隠れていた、何もできなかった男たちに人生訓説かれる筋合いはない!」
「じゃあ、オレたちはそこの男をリンチし、女を突き落したと証言すればいんだ」
「ってさ、やっぱり隠れて見たいたんじゃないか!」
そこにルーター音。
スカイピッポーからハーケンで吉祥が降りてくる。
早く宇江たちを助けたかったが、鋼鉄製で・全高が高いクルーザーならば決戦後と綾川伯父が後回しにしたのだが、やはり綾川伯父がずっと艦用キッドで宇江たちの動きをトレースはしていたのだ。
「ああ、あのさ、きみ、名前知らないけど、この大人の男に圧倒的勝っていたよ。修羅場くぐってきたオレ様、内心涙目だよ」これはその吉祥。
綾川伯父が放った艦用キッドでコンサルとの宇江貴美子の発言を聴いていたのだ。
「おい、アンタ!そんなことより、あのヘリコプターっぽいので直ぐにオレたちを上げてくれ!金なら、いくらでも出す!」
「おまえたち、左翼の少女売春をテキヤの縁日が如く愉しむ特権階級だろう!?裏は取れている。それにあの空飛ぶヤツは定員が女の子で6名だから第二陣にしてよ」
云うのが早いか西谷に促されて宇江貴美子たち6人はスカイピッポーのハーケンに掴まる。
抜け駆けが大好きなブルジョワども、いつ女の子を引きずり降ろして生存権を奪うかもしれない。
だから、吉祥は居合の構えを崩さなかった。
「あのさ、地方在住のパパ活予備校生をオレたちより優先させるってどういうことだよ。オレたちは日本を動かし、世界をまたにかけるエリートなんだぜ」
「あんたらは今回の海戦のマトに入っていない。だから第二陣で助けるって」
吉祥、構えはそのままに。
「アレさ、空飛ぶクルマ、しかもかなりカスタムされている。あの船だってフルスクラッチだ。左翼に対してインテリジェンスで勝り、あれだけのデカいものと最新鋭を作れる組織力、そしてメンテナンス用にいくつものドッグを持っていなければままならない。それだけできるヤツ、日本には数名って、オレら直ぐにピーンのきたゼ!」
コンサル、笑み。
周囲の男たちも笑み。
『吉祥殿!直ぐに海に飛び込んでください!直ぐに直ぐにシーピッポーを出します!』
イヤパッドから綾川伯父の声。
吉祥は直ぐにそうする。
コンサルたち、呆然。
回頭するホークヘッド。
コンサルたち全員にファイヤーソードが浴びせかかる。
『リラリラリラリラリラリラリラリラ』
四谷雛と違い、皆痛いも熱いも言うヒマなどなかった。
『ああ、人からイニシアティブを取って、自分のプライドを保とうとしなければ、こうする必要なかったのに』
綾川甥の声がマリンドラゴンのスタッフ全員に聴こえる。
そしてそのコンサルとは松山でくみ子を抱いた男だと遼斗は知らない。




