第1話 過激派の殺し方教えます Act.3 ファイヤー・ソード 4
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名うての吉祥と烏賊偉もケガは負っていなくても、疲労していた。
実質50倍の敵を足場の悪い船上で何人も相手にするのはいくら猛将の2人でも分が悪い。
この乱戦は既に30分経過している。
そして二人は笑顔が多くなっていた。
「なぁ、烏賊偉。未だ倒していないのか?」
「ああ、吉祥さん、伴賀さんに星取らせるまでが私らの役目です」
だが、違う、ここで一人たりとも逃がしてはいけない。
今夜までこの作戦が立案されて3年もかかったのは、この組織が二度と再生できぬくらいの大幅にダメージを与えることを勝敗ポイントと決定していたからだ。
つまり二村クラスの幹部、いや、五島クラスでもノウハウとシステムを知っていればまた再生してしまうのだ。
だから殺すか再起不能にするかにかかっていた。
官憲にはできずいて、海自とコネを持つ海保の栗久が判断して、伴賀に任せたのはそんな意味もあるのだ。
吉祥、再度居合い抜きで、先頭の細胞を二人同時に刃のない太刀の直刀でブン殴る。
ピストルで撃ってきた方角にすかさず、烏賊偉がダーツボムを投げる。
この膠着状態に割って入ったのが、地上では大地震と呼ばれるようなスゴい揺れ。
吉祥と烏賊偉、プライドからかよろけることもしない。
だが細胞連中は床にくずおれる。
剣士とダーツ使いは甲板に出る。
そこにはマリンドラゴン!
マリンドラゴンが漁船40隻をかき分けてその密集地帯に入ってきた!
「なんだ、アリャ!」
「おかしいんじゃねーの!?あの大きさとデザイン!」
「船マニアのオレがこのデカブツの形式も系列もさっぱり判らねぇー!」
細胞たちが口々に驚嘆。
確かに旗艦の大型クルーザーより更にふた回りはデカいのだ。
しかも鷹のような艦橋に漁船をた易く押しのける凄まじい馬力。
パワーと見た目は左翼の細胞たちを、初見、威圧した。
そう、直ぐに細胞たちは気づいた。
「我らは直ぐに四散し、各個で攻撃を開始するのさ!」
「そう!これがフツーの漁船ならば、武器なんてねー!」
「だがオレたちは左翼!あるんだよ!おあつらえ向きの武器が!」
そう、マリンドラゴンに向かって投げられたのは火炎瓶、モロトフカクテル!
「ハハハハハ!この刀使いとダーツ投げに船上で使えば相打ちだが、こんなデカいマト!当ててくれろ云わんばかりだ!」
「確かに一発二発では効かないかもしれないが、いつか引火すれば火を消すだけでおまえらは重労働さ!」
「この漁船一台には50本のモロトフカクテル、手榴弾、炸裂弾が配備されている!2000発の爆弾雨あられに耐えられえる船舶などねぇ!」
「なんとかならないんですか!」
細胞たちの一発めの火炎瓶をくらいひるんだ遼斗がプロフェッサーの方の綾川に声をかけた。
遼斗が綾川伯父に進言している横のデッキチェアでは疲れた若菜が座している。
このブリッジは艦橋の4階部分に位置する。
5フロア分あり、5階にはその鷹のような顔が模されている。
「だから、例えば、謎の粒子を基礎におく大砲とかミサイルランチャーとか!?」
「ミスター厨多、これはしょせん民間の船、そんなものを装備したら、即廃船です」
綾川伯父は、顎髭をなでながら、囁くように云う。
遼斗、黙る。
「伯父貴、新入りイジメはらしくないゼ!早くやろうゼ!さすがのタフガイ二人も今は息切れしているハズだしな!」
ドクターこと綾川甥がいちばん戦闘の席が両脇を囲み、コクピット状態となり、「ファイヤーソード!GO!」と叫ぶ。
「房望!取舵一杯!」とは館長席の綾川伯父が怒声!
いつの間にか操舵主席に座る太郎が「面舵一杯!」と呼応する。
実際に斜め右に回頭を始める。
そして鷹の顔面のクチバシ部が観音開きに開く。
細胞たちが二発目の火炎瓶を直ぐに投げなかったのにはワケがある。
スマホで取り囲む漁船から、一斉のモロトフカクテル投射の準備をしていたからだ。
23:30になったら、一斉に投げろ!と直ぐに決まった。
周囲、20隻からいっぺんに40弾の爆発物が一斉に投げられる。
それはマリンドラゴンの死を意味する、のか?
いや、違う!
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
ホークヘッドの口から出るのは長い、長い炎!
それはあたかも炎の剣となって、ホークヘッドが瞬時360度回転したことにより、爆発物はほぼ一斉に破裂して、マリンドラゴンには届かない。
『リラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラリラ!』
炎の剣が大気を切り裂く度に上がるのがこの音だ。
マリンドラゴンに届く前にこのファイヤーソードで爆弾は全て霧散する!
「ミスター厨多!な、確かに砲弾もレザービームもついていない。けどね、本艦には虫よけ・虫退治にこの火炎放射器が標準装備されているんだよ!」
綾川伯父、満面の笑み!
―こ、これはあの日、僕が湾内から見た、炎の剣!暗くて艦自体は見えなかったから、海から炎柱が上がっていると見えたのだ!
これはこれなりに精密な兵器なので、度々デモンストレーションの必要があって、遼斗はそれを見たのだ!
―全部繋がっていたんだ!嗚呼!なんいうこの世界の複雑さだ!
『ボンッ、ボンッ!』とか『ボボン!ボンボンッ!』とマリンドラゴンの周囲には破裂音が止まない。
むしろ、直情的にしか動けないミサイルやレーザーでなく、火炎だからいいのだ。
火炎はある時は360度、どこにでも振れる剣として、出力を高低させることで鞭として、爆発物を一つ残らず落としていくのだ。
必然的にその火の粉は漁船に落ちる。
すると漁船上では火事が発生する。
マリンドラゴンの側から離れようとする漁船は焦って、他の漁船と衝突する。
逃げ切った漁船には西谷がスカイピッポーから例の炸裂弾をお見舞いして逃がそうとしない。
次第に貯蔵してある爆発物に引火する。
次々と日左連の漁船は沈没していく。
中にはモーターボートで逃げる細胞もいたが、烏賊偉がダーツでエンジンを壊し、吉祥が〈鉄心の太刀〉でトドメを刺す。
「なんて、美しい。すんっごいきれい」
これは立ち上がって艦橋から火炎地獄を見た若菜の独語。
綾川伯父は何もしていなかったワケではない。
艦の操舵を太郎に、ファイヤーソードを甥に任せ、自分は、伴賀の持つ直径40センチの個人用キッドとは別の艦用キッド80センチの40台を用いて、モニターし、日左連の船が全て撃沈、もしくは致命傷を負わせたかのチェックをしていた。
そしてスカイピッポーが吉祥と烏賊偉を拾い上げている。
「ミスター厨多、これで我らがマリンドラゴン、3年にも、いや、伴賀さまの20年の苦節がようやく報われました」
綾川伯父がそう云って、一礼するが、それは遼斗に云うというより伴賀の代役にした儀式のように見えた。
このマリンドラゴンは確実に攻撃用軍艦だ。
ファイヤーソードという特殊武器にスカイピッポー、シーピッポー、ランドピッポーといった搭載機、そして今艦橋に姿を見せた吉祥と烏賊偉という戦闘要員。
―これは夢の続きなのか、それとも覚めない夢なのか?
遼斗は何度となくつぶやいた。
「さぁ、我らが艦長兼オーナーと合流しますゾ!」
綾川伯父がそう云うと皆は持ち場に着く。




