第1話 過激派の殺し方教えます Act.3 ファイヤー・ソード 2
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「うわあぁぁ!」と宇江貴美子が女子学生の一人に切りかかるが、それを寸でのトコで止めていた。
脇に居た若菜にも振り下ろしたが、やはり同様で、それは若菜が遮る右手の甲で止まった。
何かに気づいた若菜はその手の甲を思いっきり、引いた。
やはり甲は無傷であった。
その光景をここにいる他の6人の目が見張る。
つまり、刃が無い・刃が潰されているのだ。
「あの女ぁぁ!」誰かが四谷雛に対してつぶやく。
その四谷雛の笑い声が若菜たちを閉じ込めた船倉にこだまする。
だがこういう時は「悔しいだろうねー」とか「死にぞこないが!」と罵倒が続くものだが、それすらなかった。
ただ笑い声だけが室内に響く。
そのうち誰かが泣き出す。
伝染するかのように、その泣き声は連鎖していき、貴美子まで泣き出す。
声には出さなかったが若菜もぽろぽろと泣き出した。
それなのに、四谷雛の笑い声は止まらない。
笑い過ぎて、咳き込み始めもした。
この笑い声は戦意喪失させるのが狙いだったのだろう。
船倉のドアが開くとそこには五島と二村が立っていた。
「さぁ、みんな行こうか!〈恋人さん〉たちがお待ちかねだ!」
二村がが満面の笑みでそう語る。
「てこずらせるなよなぁ!」と現在は二村におもねる五島が貴美子と若菜を引っ張り出そうと、二人の首根っこをそれぞれ掴む。
―これだけの近距離!
そう、若菜はあまり振りかぶる必要がない掌手による突きを五島のアゴに繰り出そうと、手を引いた。
これだけの近距離にいた貴美子がいちばんにその動作を気づいた。
その次が五島だった。
貴美子がその若菜の章手を左頬に受けた。
彼女が床に転がる。
「な、なんで」
と若菜が言葉を詰まらす。
「あぶねー。なんでかって?おまえだって、『先生にならば全部あげます』とか言っていたじゃあないか、このメスガキ!宇江さん、おまえの初めては先生がもらってやるからな!」
その五島に対して二村が「で、センセー、このメスガキがなんかの使い手とか知っていたか!?」と尋ねる。
「いえ、知りませんでした!同志二村!」
「そっかぁ、今まで黙っていたとか、これはおしおきだ!じゃあ、おまえ、輪姦コースな!たっぷりと精神を病んでくれ、明日の今頃はもう、おまえはそれまでのおまえじゃあ、無くなっている!初体験が輪姦だとどんな女もブッ壊れるんだ、知っていたか?」
若菜だけではない、もうみんな、泣くのを止めていた。
みんな、グルカナイフの刃が潰されていたことが悔やしくてしょうがなかった。
二村たちの組織は、ひとの希望や意思をへし折って、自分らに恭順させる手はずを何より心得ていた。
それはひとはひとにしてはいけないいちばん悪いことだが、彼らは自分ら以外の人間はそうすべきだという信念、いや傲慢と狂信を至上の命令としていたのだ。
その命令をしたものがマルクスだろうが陰謀論者だろうと誰であってもかまわない。
自分ではなく、誰かに命令されてやっている、自分のせいじゃない、というシチェーションが大事なのであって、つまり自分には責任を取れる主体などないということだ。
組織として長年やってこれたのは、周囲が全員そんな無責任な人物ばかりなので、そこは無責任の大系が完成していたのだ。
だが、ここに強い衝撃。
ここでは仁王立ちしていた五島と二村がよろけることになった。
若菜たちが押し込められた旗艦クルーザーに強襲モードにチューンされたシーピッポーが思いっきり突っ込む。
運転は房望太郎。
「しまった!このまま揚陸しようと思ったら、大型クルーザーだからデッキまで高いじゃないのよ!」
伴賀がこれに今気づいた。
吉祥と烏賊偉は後に語られるように戦闘や作戦立案はプロだったが、伴賀は素人であるから、このように詰めが甘い時がある。
この一刻を争う時に!と今まさに伴賀への尊敬の念が強くなっていた遼斗には少し恨む気持ちが生じた。
「西谷くん!直ぐにスカイピッポーをよこしてくれ!ハーケンを直ぐ出せるようにしておいて欲しい!」
この海域、というか、八幡浜湾内、スカイピッポーは30秒で現れた。
吉祥と烏賊偉が船を跳び移り、潰せる乗務員を次々と潰している。
都市伝説として語り継がれるこの八幡浜湾海戦、そのスタートはスカイピッポーがいったん吉祥と烏賊偉のサポートを離れたこの時期を指す。
伴賀が云うハーケンとは海底に打ち込み、伴賀と遼斗を簡易エレベーターの如く運ぶ、鋼鉄製の綱。
太郎のシーピッポーから西谷のスカイピッポーに伴賀と遼斗は乗り移りることになった。
だが、その模様は二村と五島には筒抜けであった。
確かに急ごしらえの大型クルーザーと漁船で作った海戦団だが、いたる場所にカメラを設置し、モニターして、官憲や非関係者の侵入に備えていたのだ。
明らかに、新型の、しかも世界のどの軍隊にも配備されておらず・企業が開発したと知らされていない、シーピッポーと、その後に飛来したスカイピッポーの存在。
明らかにヤバい組織が介在してきたと五島と二村だけが、モニターできる小型デバイスで認識した。
二村は船倉から出ると脱兎のごとく、駆け出した。
低いシーピッポーから高いクルーザーへの移動は難義だが、逆に高いクルーザーから低い漁船へのそれは平易な行われる。
二村はそうした。
そして、乗り移った漁船で一条翁が死んだことを知り、組織のトップに着けたことに気づいた。
―だが、今は逃げなければ!
そう、二村は伴賀ことは知らないし、その友達のお姉さんのことなどとっくに忘れたが、スカイピッポーとシーピッポーを装備する謎の組織には警戒したのだ。
―そうだ、警察ならば関係団体のマスコミに糾弾してもらればいいし、裁判になったら人権派のヤツらに動いてもらって冤罪を掲げ、面倒な裁判闘争を相手がウンザリするまで長引かせればいい。だが、ありゃあ、なんだ!?官憲でも民間でもない、ちょいと個人の意思を思わせる思想を感じる!
二村、クズ中のクズではあるが、組織内で生き抜き、全国の教育機関に潜入して疑われずに女児を篭絡していっただけあり、防衛本能と気を見るに敏の発想は大したものだった。
それは片目になった失敗でよけい学んだのだろう。
だが五島は違った。
拳法だか空手を使い手であることを、あれだけ洗脳したのに自分で言わなかった若菜を許さない。
改めて支配下に置くためか、この騒動のどさくさに紛れて海へ突き落すかは五島じしんも判らなかったが、五島は未だ茫然自失中の若菜の手を引っ張り、船倉の外へと引きずり出し、逃げた。
2人の男が逃げ去った90秒後に伴賀と遼斗は船倉に現れた。
「眼帯の男と教師の五島はどこに行った!?」
船倉でうずくまる女子高生たちに遼斗は叫ぶ。
眼帯の男はいち早く単身で逃げ、五島先生は若菜を連れて直ぐ後に逃げたことをいち女子高生が伝えた。
心神喪失している女の子たちを遼斗は後ろ髪を引かれる思いで断ち切り、伴賀と船倉から出て、まずはデッキでは戻った。
「伴賀さん!どうやって探す!」
「そのためのこれだ!」
右手に握られた銀のコントローラーを手中だけで操作し、右目のイヤパッドにオプションとしてのデバイスのグラスを付け、数回叩く。
40台もの銀盤形状のドローン、通称キッドが伴賀の周囲に飛来する。
「キッドだち!今送った画像の男二人を直ぐに・適格に探すんだ!」
伴賀の命令にキッド40台は四散する。




