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瀬戸内マリンドラゴン  作者: 井田雷左
序部 マリンドラゴン現る
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21/25

第1話 過激派の殺し方教えます Act.3 ファイヤー・ソード 1



     1



「チキショウ!なんでオレたちがいちばん後発なんだよ!上陸して偵察していたのはオレらじゃん」

「早くしねーと、上玉の女子高生、取られちまう!」

「どうせ、ベンチャーのCEOたちに献上された後だろうよ!?オレらにくるのは立ちんぼの海上版みたいなすれっからしさばかりさ!」

これはツーブロック、空気、眼鏡の3人。

今、漁船で移動中。

運転しているのは組織内でも彼ら3人より、更に下の階級の2人。

「なんか、音しねぇ!?」

「しないよ。それより、タノムサク、どうする?」

「どうせ、もう殺されてるよ。いいんじゃねぇ?もう、どうせお払い箱さ」

タノムサクは例の〈水かけ〉である。

タイからの出稼ぎ者で、昨今、ひとが集まらないのは過激派左翼も同じで、こんな外国人労働者をオルグっていたのだ。

おそらく多くの者が左翼もマルクス主義も理解していないだろう。

3人は運転を下級左翼に任せ、デッキに出て、缶ビールを飲んでいた。

今回は組織売春に商売を鞍替えする第一夜、無礼講ムードが漂っていた。

「なんかさ、やっぱ、音しねぇ!?」

「そんなことより、FC2観て準備しようぜ」

「あれ、コレ、タノムサクだ」

そう、拘束衣を着せられたタノムサクがマスクと猿ぐつわをされたいきなり3人が囲むテーブルに現れた。

酔っている3人もさすがに身構えたが、時既に遅し、ツーブロックが右肩に大なる衝撃が走った。

スカイピッポー、上空6mからの飛び降りからの袈裟懸。

鞘はちゃんと吉祥の左腰に吊るされている。

だが、この直刀〈鉄心の太刀〉、刃が元々ついていない。

だから衝撃だけが走る。

だが、斬り抜けることが出ないから得物を使う剣士の両手にもその衝撃は重く走る。

だから、右肩から首に直ぐにやいば部を返し、そのまま喉に走らせる。

肩への上空からの衝撃に、喉潰し、ツーブロック、撃沈。

そして返す刀で、その直刀は空気と眼鏡の手の甲を叩く。

確かに武器は持っていない二人だが、研がれていないとはいえ、その鋼鉄の直刀で籠手を食らえば、もう当分何も掴むことはできまい。

この物音にさすがに運転する細胞二人が登場。

だがドアを開けた瞬間に烏賊偉のダーツが飛ぶ。

拳銃のような殺傷能力も、吉祥の持つ〈鉄心の太刀〉のような破壊力もないダーツ。

だが、それは刺さった衝撃で、爆発する!

重症を与えるほどではないが、刺さった箇所一帯を火傷と水ぶくれを作るくらいの爆発。

細胞二人は海に飛び降りた!

その間、吉祥は空気と眼鏡を直刀でタコ殴りし、戦意喪失させる重症を負わせた。

烏賊偉は直ぐにコクピットに立ち、運転を再開させ、日左連の漁船の群れを目指す。

その上空では西谷が操作するスカイピッポーが追う。

その先には50隻もの漁船!

どれもこの瀬戸内海界隈から来た船だ。

この内海で長いこと、海賊の真似事をして、生き繋いできたのは、アジトが海上であるために直ぐに逃げられるからだ。

漁船に偽装しているし、実際漁船を使っていて、腹が減ったら漁船の装備で漁をすればいい。

左翼たちが最後に逃げ込む組織。

北海道と沖縄こそ左翼のメッカと云われてきたが、違う、この瀬戸内海にはこの日左連が戦前から幅を利かせてきたのだ。

「みんな、資本主義に勝つためには我らが資本主義以上の価値体系をこなさねばならん!だから、瀬戸内でこの海女郎を始めたのだ!」

一条翁、この古い左翼は若人と交流を持ちたいとか宣うので、旗艦のクルーザーでなく、漁船の一台に若手、(とはいってももう皆五十路だが)と一升瓶に珍味系瓶詰で飲酒していた。

誰かが「一条同志!では、ハイパーキャピタリズムは誰を・どうすれば打倒でますか!」と云ったので、他の者共はよけいなことを!という表情をした。

「かんたん、かんたん、資本主義を裏から操っている者共、それはロスチャイルドやロックフェラーのユダヤ財閥だ!」

―え!?ザッカーバーグとかラリー・ペイジでなくて?

「そしてその背後には、フリーメイスンという古代エジプトのピラミッドを建設した組合組織がおり、更にその裏にはイルミナティという太古から存在する秘密結社があるのだよ!」

―あ、古っ!古すぎ!

「だがな、彼らのしょせん、資本の走狗に過ぎない、みなの者、耳をカポジってよく聴け!イルミナティに背後にいるのは、異星人!ヒト型爬虫類!レプティリアンじゃあ!コレ、公になったら、マジでヤバいからここだけの話じゃよ」

―・・・。

真実を俺だけは知っている、という状態がいいのであって、革命は未だならず、という革命は革命を準備している時がいちばん楽しいものだ。

敵を俺だけが知っている、それはトカゲ型宇宙人、そう、それは自分だけは最強になれる魔法であった。

そんな陰謀論が繰り広げられる漁船に、吉祥と烏賊偉が乗っ取った漁船が突っ込む。

デッキで宴会中であった者らは信号パターンから味方の船と認識していたし、ここからは同じ組織の船が40台以上ひしめき合っているのである、だから追突されるまで気付かなかった。

直ぐに吉祥が一条の乗る漁船に、義経よろしく跳び移る!

一条という一人元老院の側にいるだけあって、ツーブロックたちと違い、細胞たちは直ぐに銛やナイフを取り出して吉祥に対峙した。

確かに銛やナイフは研がれていて刃があるから、殺傷能力は〈鉄心の太刀〉以上だが、その鋼鉄の棍棒から繰り広げられる鉄の質量は、吉祥という類稀なる使い手の技能も合わせ、物凄い破壊力を醸造しているのだ。

盛もナイフも〈鉄心の太刀〉と刃を合わせた瞬間に弾き跳ばされるか、刃がボロボロになる。

しかもそれは吉祥は刃が無いというのに、鞘にしまい、居合い抜きの要領で、次々と抜刀していくから、細胞たちは瞬殺にされていくのみ。

だが、デッキに出てきた細胞はピストルを持っていた。

それは後方にいる烏賊偉がダーツを投げて援護。

右手の甲に刺さったダーツは刺さったまま狙撃者が床に落ちたピストルを拾おうとした瞬間、右手のダーツが爆発!

そうこれは敵に命中した瞬間に爆発する接触弾でなく、烏賊偉の左手に握られるコントローラーによって爆発する手動弾だ!

その爆発でひるんだ狙撃手を吉祥が後頭部を〈鉄心の太刀〉で殴ると彼は倒れてイヤァな痙攣を始めた。

烏賊偉はツーブロックたちが乗ってきた船に戻り、吉祥はこの船のコクピットに行く。

上空では西谷が駆けるスカイピッポーがホバリングしている。

吉祥と烏賊偉の両漁船が集団の掉尾にいる船相手に二隻で突っ込む!

その衝撃で一条翁は「お助けぇぇぇーーーー!」と云いつつ、海に落ちたが誰も気づく者はいなかった。

吉祥と烏賊偉は直ぐに追突された船に跳び移り、得物の〈鉄心の太刀〉と〈接触弾ダーツ〉を構える。

頭上では西谷がスカイピッポーから煙幕弾を降らせている。

これは下で戦う吉祥と烏賊偉が当たっても平気のように爆発力を落とし、代わりに黒煙と破壊音を高めた特注のいわゆる花火である。

吉祥、そのバックボーンは次話以降で語られるが、ともかく現在に甦った武人のような男。

烏賊偉、伊達者と思われる彼だが、このマリンドラゴンを第二の故郷を思っている侠客めいた男。

そのマリンドラゴンの右大臣と左大臣が、燃え広がっていく漁船約50隻の上で、得意の得物を手に、血みどろの闘いを今から華麗に、且つ、泥臭く、見せる、魅せる。

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