第1話 過激派の殺し方教えます Act.2 マリンドラゴン出撃 10
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伴賀、吉祥、烏賊偉、綾川中也・博志、太郎、西谷はあたかもヘッドフォンの片割れのようなイヤパッドを右耳に付けていた。
本来ならば、情報提供は視覚情報のよいに決まっているが、目を〈戦闘〉中に覆うのは害アリと判断したため、本作ではこれからもこのイヤパッド型デバイスが多用される。
伴賀は遼斗にそのデバイスをつけてあげて・使い方を教える。
主にAIがあらゆる情報提供と主に索敵を届け、艦橋に残った綾川コンビがそのフォローに回るという寸法だ。
勿論イヤパッドにはマイクもついており、8人の仲間同士、音声による交流が可能だ。
「オレらと比べて、お二人は矢面に立つ。ホント、尊敬します」
スカイピッポーの操縦席で西谷。
「根性の別れみたいだな、ニッシー!?」後部座席の烏賊偉。
「いやいや、よい機会だ、な、ニッシー」と隣の吉祥。
「はい、何があるか判らない仕事でしたしね」とコンソールシステムの調整に余念のないニッシー。
本機も大半はAIが操作を行う。
その土台ありきで、指示を出す方法を取る。
「伴賀に付き合っていたら、いつ死ぬか判らんよ。この3年、死者が出なかった方がフシギなくらいさ」と烏賊偉。
「そうそう、海上の作戦は少しのゆるみが即、死に繋がる。ニッシーだって、よく生き残ったもんだ」と吉祥。
「でも、お二人は地上で間者としても潜入していて、それで今回の集合を予期できたワケでしょう」と西谷。
つまり、吉祥と烏賊偉は日左連の関係者から今夜の大集会を聞き出し、裏まで取っていた、ということだ。
「オレらの前歴が間者や斥候向きんだよ」と吉祥。
「でも、でもですよ、勝てなかったら、どうするんですか?」
西谷は伏し目がちに小声で問うたが、後部座席の二人にはそこまでの仕草は気づいていないかもしれない。
「海保の栗久さん、会ったんだろう」と烏賊偉。
「そうそう、海自との連携があったから、ギリギリになるって伴賀さんはおっしゃってましたねー」と吉祥。
「え、それはどういうことですか?」と西谷。
「オレらは所詮民間だ。負ける可能性だってある。出たとこ勝負?そう、じゃあ、負けたらどうするか!?海保と海自でこの宇和海で挟撃する手はずを整えたから、伴賀、動いているってことよ」の烏賊偉。
「負けることを、あの伴賀さんが考えている!?」
西谷、声色はそんなにわざとらしくない。
「そうだ、負けるなんて伴賀は嫌うが、でも奥の手を用意していない男でもない。それに、まだある」と吉祥。
「まだある、って、まさかあのユニット」と西谷が云いかけた時に烏賊偉は右足で、吉祥は直刀でスカイピッポーの床を大きく叩いた。
「西谷、それは言うな、言っちゃあいけない。作戦の手段でなく、動機の方をおれは言っている」と感情を押し殺して吉祥。
「ふふ、わたしと吉祥さんと違い、伴賀は結局のところカタギ。いくら敵がクズ中のクズでも悪の上を行く〈極悪〉にはなり切れないものだ」と烏賊偉。
「あ、それで遼斗くん、か」
西谷はそう返答しながらもスカイピッポーの全ての器官にはもうエネルギーを充填させていた。
「そう、遼斗という少年に昔の自分を見ているのだろう」と吉祥。
「おいおい、吉祥に烏賊偉、おれはそんなあまちゃんじゃねーよ」とスカイピッポー内の3人のイヤパッドから伴賀の声。
「この湾内でヤツらの計画が知れた段階で、また被害者が出ることは知っていた。だが、見ず知らず相手のために正義の味方気取るつもりはない、だがどうせヤる相手は同じ、覚悟決まったヤツがいれば、共闘したいと思っていただけだ」
「それがモチベーションの補強だろうに」と云うセリフを吉祥も烏賊偉も飲み込んだ。
それがあの厨多遼斗という少年をこの漁港の町に着く前からリークしていた目的だと知っていたし、このイヤパッドを付けての会話は筒抜けだと知っていた。
―そう、復讐の気持ちは長く時間経ると劣化するんだ。
それはこの機内の3人、いちばんのカタギである西谷でさえ、そう思ったのだ。
「おれの想いなんて、どうでもいい。やるべきをことをやるだけだ。そろそろ行こうか、仲間たち!」
伴賀のその言葉にスカイピッポーは動き出す。
「伴賀、終わったら南海町の温泉だ!汗かいてたまらん」と吉祥。
「その後は、酒に太刀魚の刺身だ」と烏賊偉。
「スカイピッポー、テイクアウト!」
西谷がそう云うとそのマシンは浮力を持ち始める。
シーピッポーの格納庫内、房望太郎は出発前に作戦内容のAIへの書き込みチェックに余念がない。
スカイピッポーに比べ、クルーザーのシーピッポーは余裕あるデッキを持つ。
そこには大きなディスプレイもあり、まさに発進せんとするスカイピッポーが映し出される。
各種ローターが高速回転をし、糸が切れた凧のように、弾かれるように暗闇の空へ舞い上がる。
「あの形状、あのローターの数、ヘリコプターじゃあ、ありませんよね?」
後部座席のソファに伴賀の隣りに座る遼斗。
「うん、違うね。なんだろう?」と嬉しそうな伴賀。
「まさか!?」少し思考した後にとある単語を想起した遼斗の口から、漏れる。
「そう、いわゆる空飛ぶクルマさっ!」
「まさか!?実用化には未だ何年もかかるって、ネットも識者も言っている!」
「うん、それは法整備や安全性を鑑みているからで、実際にああいふうに跳んでいるじゃないの」
「どうやって、作ったんですか!?」
「作ったんじゃない、マリンドラゴン建造以前からもいろんな事件に関与して解決してきた、さっきの海保の栗久さん、彼の難問もいくつか解決に導いてコネができた。アレは世界的自動車メーカーの会長からそんな探偵の真似事をして、報酬として受け取った。マリンドラゴンの意義と能力を理解してくれた数少ないスポンサーの一人でもある。アレはね、ヘリコプターやグライダーの系統ではない、エアモビリティ、ドローンの範疇だよ、搭乗者3名だけど」
こうして、ようやく、遼斗は今までどこかで気づくべき質問に、そう、ようやく、その質問を想起し・発言することに至った。
「伴賀さん!あんた!いったい何者なんだ!」
伴賀は笑う、そしてソファ上で足を組む。
「情報産業シャーク・インベスティ・ゲイション代表、重工業メーカー・ツィマットエンジニアリング社主、不動産デベロッパー・伴賀レジデンスCEO、研究機関ネオ・アチック・ミュージアム主催、伴賀孝夫、それがオレだ!」
―!!!!!
遼斗、開いた口、塞がらず。
どれもこの作品世界内では誰もが知る有名企業で(最後のアチック以外は)、この3企業が同じひとがオーナーだと知る者はほぼいないから、それが遼斗、驚愕の理由。
―復讐を一つ、やり遂げるために、この人は、約20年の間に、これだけの偉業を果たした、ってこと、か。
遼斗、茫然自失。
「太郎、調整はどう?」
「終わってますよ、陛下」
これは太郎の皮肉、遼斗への追い打ち。
太郎が伴賀に渡したものは4センチ程の頭部が無い十字架のような器具、ステンレス製なのか銀色。
その十字架モドキを伴賀が右手で握る。
すっぽりと十字架モドキが右手のひらに隠れる。
すると、ソファの更に後部から、洋風のお盆、つまり銀色のトレイ、直径40センチくらいが飛来。
「これはドローン。そしててのうちにあるのはコントローラーだ。いくぞ!瀬戸内マリンドラゴン、発進!!」
その声は艦橋のプロフェッサーとドクターに伝わり、意外と古風な舵を伯父の方が、切る!




