第1話 過激派の殺し方教えます Act.2 マリンドラゴン出撃 9
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大き目の漁船ほどの大きさ、シーピッポーは約10mの体長。
船舶免許が必要だったが、今夜起こす違法行為の前ではそんな微罪はかわいいものだった。
無免運転をさせた伴賀が右腕をさすっている。
無免運転している遼斗は、驚いていた。
島影に隠れているものの〈姿〉をようやく目視できたからだった。
それは彼が左旋回できたからであって、伴賀はこの10数分で遼斗にシーピッポーの運転のイロハをさせた、自分は袖口の細工を整えながら。
遼斗が目視したもの、それは全長約200m、幅約30m、それは中堅のオフィスビル、ワンフロアくらいの平米数。
鷲より鷹を思わせる艦橋を合わせると高さは7階建ての雑居ビルほどの大きさ、おそらく25mほど。
鷹のような頂上部から2フロアくらいのあたりにある艦橋にひとがいることを遼斗は見た。
「正面に移動。できる?」
伴賀の声が後方からする。
遼斗はこれみよがしに・なめらかに云われた通りにした。
「ぶつかりますよ」
遼斗の問いに伴賀が無言なのは、船首の下部がシーピッポーの気配を察知したように、観音開きで開いたからだ。
その内部、そこがこのシーピッポーという小型クルーザーのメンテナンス格納庫であることは遼斗にも、様々な機器により知れた。
格納庫兼カタパルトハンガーなのはこれだけの巨体でも、まだまだ収納スペースを減らしたいから。
二本の鋼鉄製ラインが海上に伸ばされる。
「大丈夫、ここからはもうAIが車庫入れしてくれる」
そう、遼斗が不安そうにしているとスルスルとシーピッポーはその日本のレールを登っていく。
海上での着艦、勿論、波と波しぶきが船首の船内に押し寄せる。
だがその観音開き、猛禽のくちばしを横にしたようなシャッターはバツンと閉じられた。
「伴賀さん、お疲れさまでした」
伴賀に倣って遼斗も降りてくると、少し肥えた男の子、遼斗は、少し年齢下かな、と思って、実際、学年考えだとしたら二つしたの男の子が伴賀に労いの言葉をかける。
「太郎、シーピッポー、今夜はヴァージョン2で頼むよ」
「はい、換装、おそらく10分あればできます」
「10分後に艦橋でミーテイングだ。8分で頼むよ」
伴賀にそう云われた、肥えた、ツナギをだらしなく着た肥えた少年はニッと笑うことを返答とした。
備え付けのディスプレイが格納庫の上から吊るされていて、そこには船尾が映され、船首の下部が観音開きするのでなく、くぼみの上部から四本のクレーンが出て、ランドピッポーを吊り上げ、くぼみの先にあるカタパルトハンガーに収納していく姿が見られた。
「うん、あっちの海上移動はオマケみたいなもんだから、このシーピッポーの速さの半分以下だから、この到着時刻さ」
伴賀が説明を入れると、ランドピッポーのコクピットから西谷が出てくるのが見える。
「スゴく見えるだろうけど、動く歩道もエスカレーターもついていないから徒歩で移動しかない。チャリがあるけど、初めてだし、歩いて行こう」
伴賀がそう云うと「おつかれです!」と黒縁メガネで身長160ほどの小ぶりな男が声をかけてきた。
「ドクター、どこへ?」
「スカイピッポーの後方スタビライザーが巧く機能しないんです。もう一回見てきます」
「じゃ、艦橋で会おう」
「ええ、急ぎます」
そう云うと〈ドクター〉は足早に幅1mのハシゴを登っていった。
「今ほひと、直すからドクターなんですね」と遼斗。
「それもあるけど、名前が博志だからな」と伴賀。
ハシゴを5フロア分も二人が登り切ると大型エレベーターのドアがある。
「え、エレベーター、あるんじゃあないですか!」と遼斗は云うが、怒っているふうはない。
「ああ、これは資機材搬入のためなんで、なるべく使わないようにしている」
伴賀が答えると、そのドアが開いた。
中からは烏賊偉と吉祥が出てくる。
「お、少年、やっぱ、来ちゃったか!?」と烏賊偉。
「ハシゴはこれ持って上がるのは至難。少年、持ってみるか?」と吉祥が鞘に収まれた例の直刀を渡された。
それは見かけからの想像の3倍は重かった。
だから、遼斗の右腕が持った瞬間に下がって、そのための驚きの表情にオトナ3人はついついニヤけた。
―コレ、振れるのか!?持って移動するだけで大した運動だぞー。
そう思う遼斗は3人とオトナに促され、艦橋、デッキに入る。
この時に黒い直刀は吉祥に返却されている。
その視界、360度、宇和海を一望できる。
海に突如、5階建てのビルのてっぺんにできたようなもの。
その景色に夜空であるとはいえ、遼斗はある種のカタルシスを感じた。
「厨多さま、このマリンドラゴンにようこそ!」
四十路と見えるが、総白髪、長身の男が、上着はないが、ネクタイをしてそのように遼斗に話しかけた。
遼斗は「こんばんは。よろしくお願いします」と緊張しながら答え、これが大人たちには初々しく映ったのか、またニヤけられた。
だが「私は綾川と申します。裏方のリーダー、皆はプロフェッサーと呼びます」と云った綾川だけは笑っていない。
気がつくと伴賀がブリッジの館長席に座している。
「アテンション!」
そう云うと、吉祥、烏賊偉、綾川が伴賀の正面に並ぶ。
そこに先ほど伴賀に〈太郎〉と云われた少年とドクターとあだ名される男がやってくる」
「綾川くん、スカイピッポーのメンテどうか?」と問う伴賀。
「はい、終わりかけたトコに西谷くんが来て、最終チェックを変わってもらいました。あ、綾川ってさ、そこのおじさんの甥っ子なんだよ、おれ」とドクターがプロフェッサーにアイコンタクトを取るが、それは勿論、遼斗に云っている。
「よし!ならば、それでいい。スカイピッポーは西谷くんが操縦予定だったからな。さて、諸君、私はこの作戦に20年かけた、このマリンドラゴンを建造した後から考えても3年かかった。でも今夜で、ようやく終わる、というか終わらせる。そして計画通りにやれば絶対に終わる」
伴賀のこのセリフに吉祥が「終わりますよ」と云い、烏賊偉が「やったやりましょう!」と叫び、綾川中也が「終わった祝賀会です」と囁いた。
年齢的にこの3人が長らく伴賀に付き従ってきて、西谷、太郎、綾川の甥の方は中途参加なのだろうと遼斗は予想した。
その後に、伴賀は作戦通りだが、そこの遼斗くんの友達の女の子・若菜さんとその友達たちを救出するように付け加えた。
「段取りとしては吉祥と烏賊偉で斥候、プロフェッサーの指揮でマリンドラゴンで突っ込み、おれと遼斗くんでその女の子たちを救い出し、ボスを倒す。まぁ、目的は絶対に変わらずアレだけだから、結局出たとこ勝負だな」
年齢が近いか下であろうから、太郎に遼斗は「目的って?」と小声で尋ねた。
「殲滅だよ!」
艦長席から立ちあがった伴賀は遼斗の疑問に高らかに答えた。
それが作戦開始の合図となった!
激重の直刀を持った吉祥と未だジャケット姿の烏賊偉が艦橋から去る。
「房望太郎ってんだ。よろしくね」
シーピッポーに乗り込む時に太郎から遼斗はそう自己紹介された。
遼斗もフルネームを名乗るくらいに返した。
「ヴァージョン2、これがですか」と思った以上にゴツいオプションが付けられたシーピッポーを見て遼斗は独白した。
「そう、これは対艦用強襲艦モードだ!太郎は操縦、遼斗くんはおれのサポートだ!」
伴賀たちの長年の計画が今、始まる。




