第1話 過激派の殺し方教えます Act.2 マリンドラゴン出撃 8
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流線形の大型クルーザー、60人が収容できる観光船払下げを組織が入手した、今回の八幡浜湾での旗艦である。
内装を変え、客席を巨大な寝室にしてあるのは、海上を行く・走るラブホテルにしたかったからだ。
二村と五島と四谷雛が漁船からこの旗艦クルーザーに移る。
高齢の一条はこの船から船の移動ができないため、別の漁船に鎮座している。
難儀ではあったが、海に身を投げられては困るので、二村と五島が担いで若菜を運んだ。
「な、ここでおまえら全員処女を見知らぬおじさんに捧げるんだ。かわいそう」
五島、若菜の元カレが云う。
「絶対に歯向かってやる!」
若菜、五島を睨みながら。
すると、その返事に呼応したように、巨大な寝室の壁上部の通風孔から黄色い煙。
「これは視覚的に見え易いように着色している。無味無臭のガスだが、これが睡眠ガスならどうする?反応がなくてつまらぬが、ペドフィリアとネクロフィリアは同根だ。大して変わらぬであろう」
これは二村の発言。
若菜は四谷雛に船倉に押し込められる。
そこには宇江貴美子ら五島に篭絡された女子高生が6名。
「若菜!」
「冬月さん!」
と皆が口々に若菜の来訪を喜ぶ。
「私たちがなんで、おまえらをこんなトコに閉じ込めているか、教えてあげなよ。みんな、ビックリするよ!」
四谷雛、満面の笑みをたたえながら。
「それと、これ」
ごて、と下に下る階段に投げ出されたのはグルカナイフと呼ばれるゴツい凶器だ。
「女の私から、せめてもの手向けだ。決心ついたヤツはそれ使うのもいいかもね」
と地下へ続くドアを閉めて四谷雛が去る。
みんなだって、もう薄々知っているのだ。
若菜は自分を見つめる12の瞳が鬱陶しかった。
「メインディッシュが女子高生の生娘、7人って、俺の頃にはなかったよ、五島」
それは明らかに二村が五島の今回の実績をあてこする発現である。
「らしいですね、二村さんが前線に立っていた頃は、JCが主な出荷されていたとか」
「ああ、そりゃ、女子高生より女子中学生の方が騙し易いもん。コーネリアスとか中田ヤスタカの音楽や魚喃キリコや浅野いにおの漫画、サブカルな都会的センスだけで騙される。この30年、何人、いや、何十、何百人、そんな進歩的なメスガキを苦界に落としたことか」
「この港を去る時に、誘拐しても騒がないメスガキをラインナップしてあります。その中の半分はJSです!」
「でかした。五島!そうだ!意外と知られていないが、子どもが神隠しに遭うような謎の失踪、実は俺たち左翼の仕業が8割を占めているからな!」
「そうそう、北朝鮮の拉致被害者で、左翼は拉致を水道の蛇口をひねるように・平然とできるとアレだけ報道したのに、なんで、公にならないんでしょうかね」
「そりゃ、俺たちみたいな、警察や自衛隊とは違う、自分らのための暴力装置をマスコミや法曹界の連中が欲しているからよ。今回の売春瀬戸内海ツアー、そんなお偉いさんがいっぱい来るゼ」
そう、別の高級クルーザーで、この船を目指している最中なのだ、新聞社社主、テレビ会社会長、高等裁判長、東大教授、等。
「あの妊婦のメスガキ、どうしやすか?」
「警察や学校に言っても、ムダムダ。だって、ここ沖合だもの。雛に口封じから拉致らせるのは明日以降でよかろう」
「でも以前、網本も娘が気の荒い漁師たちに頼んで、一帯の漁船に囲まれたって話、聞きましたよ」
「ああ、アレは這う這うの体で逃げた。でも、細工は流々仕上げを御覧じろ!」
二村が云う細工とは仲間の漁船、50隻には火炎瓶や簡易式ダイナマイトがかなりの数積まれていることを差す。
しかも、全員が極左の過激派、殺すことを恐れていないのは、体制や公僕は殺すべきと考えているからだ。
そして彼らに反抗の狼煙をあげない愚民も殺していいと思っているし、女子供は自分らの滋養のためにいくら犯してもいいと心底思っている。
そして自分たちは〈良い人〉だと思っている。
「メインディッシュが女子高生の田舎娘、数人で、あとは広島から和歌山の間で拾ってきた中卒のクソ臭いギャルばっか!全員、プロじゃねーか!ゼロ年代頃までは〈海上プチエンジェル〉状態だったのによう!最近の左翼はたるんどるよ!」
「それはむしろ〈海上エプスタイン〉では!?」
「そうよ!『ママー!』や『お母さんー!』と泣き叫ぶ少女たちがオレたち闘士の目をかいくぐって海に身を投げた自殺する様は俺たちにすら右翼的心情を感じさせた忘れない思い出です」
そう、これだけの所業を続けるのにはさすがの組織も弱体化していたのだ。
彼らの強味はネットではなく、実地で密漁、麻薬の横流し、拉致、今回のような組織売春だったが、今、左翼はネットにいて、左翼志願者はこの日左連まで、来ない、というか落ちてこないのだ。
「ネットで、現政権批判や女系天皇肯定をつぶやいてりゃ、左翼って、オイ!左翼も安くなったもんだな!」
ここいらはもう五島だか二村だか発言者はどうでもいいように書いてきています。
「左翼って、何か?問われたら、ひと言、〈敵は殺す・女は犯す〉ってことなのにね」
「ハハハ、その通り!来年の今頃は俺たちが政権奪取しているだろうよ!なぁ、書記長!」
「ええ、総統!」
「ねぇ、若菜、その話が本当だとしたら、何が嬉しくって、五島先生は私たちにそんな酷い目に遭わせるの?なんで?なんで、そんなことができるの?」
「なんかさ、子どもの時に親とかから酷い目に遭ったとか?そういうトラウマがあるとか?」
「そうそう、初恋のひとに自殺された、とかさ」
自分らのような生徒を毒牙にかけるため、わざわざ教師になるため、大卒の資格を取り、教員免許を取り、赴任して、こんな悪質な犯罪に手を染める、とは地方の10代の女の子たちには埒外なお話だったのだ。
「これ、養殖の牡蠣の研究のための集まり、そう!そうだよ!若菜は何か、勘違いしているんだよ!」
「もうやめよう、みんな」と若菜。「これから見ず知らずのオトナにエッチなことされるだけじゃないんだ。このままこの船で色んなトコ行かされて、もっと・毎日・死ぬほどに酷い目に遭うってことなんだよ。お願い受け入れて、そして助かる手段を考えたいんだ」
若菜、祖父より習い覚えた柔術は未だあの左翼たちには披露していない。
―あすこでガスを嗅がされたら一発で終わりだ。
この暗い・湿度の高い地下の船倉はとても不愉快な場所だが、ここから一歩出るように催促されたら、死ぬより強い現実が彼女たちには待っている。
―それをなんとか打開したい!
そう若菜は思って、皆を説得する。
「私、五島先生に頼んでみるよ」と宇江貴美子。
「もうやめな。もう、そこはみんなとっくに通過しているんだよ」
「うん、そうなんだろうけど、そうなんだろうけどさ、わたし、みんなと違って、五島先生しかいなかったから」
「宇江さんがそうだというのは知っているよ」
「そして、五島って男にとってはどうでもいい存在なのも知っている」とこのキツい発言者は若菜。
「だから、私は一人死んでも五島先生には、どうでもいい。でも、ここで、みんなで死ねばさ、かなりその五島先生とその組織にダメージを与えられる」
何を宇江貴美子がしでかすのか、いちばん最初に気づいたのは若菜だったが、遅過ぎた。
早く動いた宇江貴美子は四谷雛が落としたグルカナイフを手にした。
「みんなで、死のうよ。キレイなうちにさ。私がみんなを今から殺すね」




