第1話 過激派の殺し方教えます Act.2 マリンドラゴン出撃 7
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「15年間、ですか?」
遼斗は静かに暗闇の中で問うた。
「うん、長かった。カタキを探すことも時間と労力と資金を必要としてが、いざ探し当てて、カタキが取れないで失敗するなんてもう勘弁。だから、そのくらいの年数が必要だった」
伴賀が答える。
色々な名称で呼ばれたり、色々な変遷を持つが、ともかくその日左連は、公式な党でも、公に流布された組織でもない、過激派と呼ばれる反体制グループの寄り合い所帯の名称で、その表の左翼の政党や組織の構成員が地下に潜るといえばその組織に加盟したことを意味する。
表とは相合扶助の関係にあるが、表自体がかなり衰亡の危機ある中、日左連こそ存亡の危機にあった。
その度に未成年の女子にむりやり売春をさせてきた歴史を戦前から持つのだ。
最も大きな組織売春が今夜から開始される。
以降、海上の売春宿で働かせられる。
一網打尽にできる千載一遇のチャンスが伴賀に到来したのだ。
「くみ子さんの言っていた二村があの歌村に間違いない。ようやくアイツを仕留められる」
伴賀はまた凶暴な瞳。
「くみ子を狙い・危険な目に遭わせ、今!若菜を浚って・危機におとしめている五島を始めとするヤツら!おれだって、殴る責務はあります!」
遼斗、伴賀のその瞳を見るのでなく、睨む。
「よしっ!遼斗くん!いくゼ!」
その時に二人がいる大通りにハイビーム。
そもそも二人はタクシーをつかまえる予定だったが、いつの間にか伴賀の思い出話を聞き終わってしまった。
ハイビームの出元は西谷が運転する、遼斗も一度乗っているランドピッポーと呼ばれる水陸両用車だ。
「お二人さん!急ぎでしょう!乗ってきなよ!」
こうして、巨大な水陸両用車で一瞬にして湾内に着いた伴賀と遼斗だった。
「今夜はピッポーシリーズ全機発進となろう。だから、西谷くん、ランドピッポーで先に母艦へ帰っていてくれ」
大海原にそのまま出ていく様は遼斗に少しシュールなものを思わせた。
「遼斗くん!僕らは千丈川の河港にあるシーピッポーで母艦に変える。若菜ってコが心配なのはよく判るが、その前にもうひと準備必要なんだ。もう来るだろうし、待っていてくれ」
伴賀がそう云って、どこから取り出したのか双眼鏡で海を見渡すと海面から潜望鏡。
そして直ぐに艦橋が姿を表す。
「ええっ!?潜水艦!!」
遼斗、男の子なだけあり、それだけで海中の存在に気づいた。
その艦橋からてきぱきと男たちがゴムボートを作成していることが判り、ゴムボートなのに船外機を付けているので、直ぐに伴賀と遼斗の元にやってきた。
ボートの上には男が一人。
陸に上がろうとしない。
「こちらは海上保安庁第六管区海上保安本部所属、巡視船いつくしま艦長、一等海上保安正、栗久光義さんだ。遼斗くん、ご挨拶」
遼斗がつられて挨拶仕掛けた時に「伴賀、民間人の少年でアリバイ作るなよなぁー!」と初めて発声した。
海上保安庁の白の半袖がよく似合う、長身の偉丈夫、それが栗久艦長。
「俺のことは忘れろ、少年!」
「栗久さん、今夜で日左連は壊滅するらしい。内ゲバでいいんじゃない?朝にまた来てくれ。用件はそれだけだ」
「協力は、いらんのか?」
「いらない。ジャマしなければいい。手柄はアンタとそっちのディーゼル潜水艦で分けてくれ」
この栗久と伴賀の会話で遼斗にも納得したことがあった。
海上保安庁もこの海を荒らす日左連には手を焼いていた。
しかも各地の左翼、つまり法曹界やマスコミのシンパから賞賛されるどころか、左翼の船を拿捕すれば糾弾される恐れもあるし、いや、実際そんなコトもあったのだろう。
それを私費で建立し、運営する民間の伴賀が退治すれば、内輪揉めで片付くハズだ、と踏んだのだ。
―でも、まて?
「あのー、栗久さん、質問一つ、海上保安庁なのになんで潜水艦で来たんですかー?」
「あー、少年!ザンネン!大人の男の会話の裏目読みできないとは、おじさん、情けないゾ!では帰る!伴賀、死者は出すなよ!健闘を祈る!」
と話の内容は勇ましいが、自分でいそいそと船外機を操作して栗久は潜水艦の艦橋を目指したのでした。
「どういうことですか?」
「それはね、潜水艦の持ち主はどこ?って話さ」
「この海にいる潜水艦と言ったら、海上自衛隊って、ハッ!?」
「そう、栗久さんが既に海自に話をつけたって、証で潜水艦で来たってこと。ま、もっとも、ヘリコプターで来れば、日左連にバレバレだからって意味もあったろうけど」
「でも海上保安庁と海自って、仲悪いんじゃあ」
ちなみに海の子・島の子はここいらの海上の防衛の話に敏い。
自分たちの海を守るのが第六管区海上保安本部とは誰もが知っている。
「同じ敵を相手にした時、相反する組織はいちばん仲良くなれるもんさ。職業犯罪者でも、他国からの侵略でもない、今回の相手はこの二つの組織が戦後再統合されてからの宿題、さーて、きっちり恩を売りつけてやりましょう!」
そう云い終わらぬうちに伴賀は千丈川に河口にくくりつけたシーピッポーに搭乗。
丸みを帯びたクルーザーのようなデザイン。
いや、甲板を外せば潜水艦に似た形状を持つ。
大型のダンプカーくらいの大きさ。
黄色を基調とする。
「運転、頼むよ」
「えー!普免すら持ってないのに!」
「大丈夫!直ぐに覚える!」
そう、その操縦法は単純なものであった。
しかも、速い!
「そう!特別なエンジンと軽量化の結果、これより早い海上保安庁の船は一艘もない!」
八幡浜港の湾内、保内町の丸みを帯びたでっぱりの部分を真ん中に右側に諏訪崎、ここで栗久が伴賀と遼斗と出会った千丈川の河口があった方の湾で、住吉鼻の半島で構成される湾の左側に日左連の数十隻の漁船が展開されている。
諏訪埼の先にある佐島近海にいた栗久が乗船していた海自の潜水艦で攻撃すればよいではないか?とお思いであろう。
まず彼らが漁業組合の構成員で資格も持っているグレーな存在であること、そして一隻二隻ならば拿捕できるだろうが複数の場合、確実に半数以上は確実に取り逃すこと、更に先ほども語られたように逮捕後に腕のいい弁護士と偏向報道を行うマスコミに守られることは、この戦後80年の瀬戸内海史で覆られなかった。
だから、伴賀の私兵集団がどこまでやられるかは海上保安庁も、海自も眉に唾であった。
だが、栗久じしんは違う。彼はこの瀬戸内海で起きたいくつかの事件で非公式ながら、伴賀とその一党に解決してもらっていた。
その成功譚での結果と頭脳と人柄で栗久は伴賀を信じた。
その説得で、上司と海自の友人たちを黙らせた、イリーガルだが。
黙らせはしたが、海上保安庁は佐多岬灯台付近に巡視船を四隻配備している。
四隻は第六管区海上保安本部の全巡視船の半分である。
海自は高知県沖の島近海に複数の船を展開しているが、その数とその種類は不明。
だが、佐島付近にディーゼルとはいえ潜水艦を海上保安庁のためという名目だが、出動させているので、それなりの戦力は投入しているハズであるし、というより、瀬戸内海側にも・太平洋側にも逃がさない密約は確実に海上保安庁と海自の間にできていると考えた方が利口だろう。
「鳥島、アレがオレたちの今のアジト」
シーピッポーの後部ソファにふんぞり返り伴賀が説明。
「だから、八幡浜までこの船やあの水陸両用車でしょっちゅう出かけに来ていたんですね」
運転に慣れてきた遼斗。
「ああ、だがあの鳥島のようにマリンドラゴンのメンテナンス用要塞に購入した無人島が瀬戸内海中に30ある」
鳥島は日左連が集まりつつある湾の左側にある住吉鼻の先約3kmある小島。
「エッ!アレ買った!?しかも複数!!」
「マリンドラゴンは贅沢を好むのさっ!」




