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瀬戸内マリンドラゴン  作者: 井田雷左
序部 マリンドラゴン現る
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13/17

第1話 過激派の殺し方教えます Act.2 マリンドラゴン出撃 3



     3



遼斗が伴賀からハンカチを受け取る。

だが、ハンカチは握りながら、彼は両腕の素肌で涙をぬぐった。

「悪くない推理だ!」と伴賀が泣き止み、今は呼吸を整えている遼斗に言い、続ける。

「確かにオレたちは今夜やるべきことがある。しかもきみにも関係がありそうだ」

そう伴賀が云うが、後にこの夜のことを思い出して遼斗は思う。

―そもそもが、おれとくみ子と若菜の関係を知っていて、それで周囲を当たっていたとも考えられる。

今の遼斗は切羽詰まり過ぎていて、そこまで考えが及ばない。

スマホで話していた西谷が切った後、伴賀に話しかける。

感情の高まりが激しい遼斗は二人の会話を注視するほどの繊細さを今は持ち合わせていなかった。

「今回の件で首魁クラスが二人、港からの道を軽自動車で北上している。その先には何がある」

伴賀は遼斗に問う。

「おそらく愛宕山の方です」

やっと遼斗は発音できるくらいに気持ちを落ち着かせることができた。

「この港町に詳しい人物がいた方が、やはり、いいな。その方向での目的はなんだと思う?」

「おそらく高校。僕の通っている高校。他には墓地や森しかありませんから」

伴賀の目があやしく光る。

なぜなら、一人は既に伴賀たちもリークしている五島先生だからだ。

「案内して、と云いたいトコだが、一つ確認したいことがある」

伴賀は既に口許に笑みを浮かべている。

「なんでしょうか」あらたまる遼斗。

「そのきみのくみ子さん。もしお腹の子がきみの子じゃなかったら、どうするんだ」

伴賀はもう笑っていない、かといった睨んでもいない。

ただ遼斗を見つめている。

「育てます。僕の稼いだお金で産んでもらい、僕の稼いだお金で育てたい」

そう、強がりではなく、遼斗はこの目的を未だ捨てていなかったことは彼の心では当たり前のことだった。

「うん、そうだ、それがいい」

伴賀はそう云って、西谷を見る。

西谷はどうもテレたふう。


くみ子と若菜は既にその高台の母校にいた。

五島から若菜は教員用のセキュリティのテンキー入力を教えてもらっていたので、た易く侵入することができた。

そして照明をつけず、スマホの懐中電灯アプリを使わず、二人は細かい常夜灯のみで校内を進んだ。

若菜はその暗闇でくみ子を気遣うことを忘れなかった。

五島が個人で使っていた化学実験室にも未施錠だからた易く入れたし、PCは若菜が覚えていたpassword「1234」でた易くやはり開いた。

最初にコレを見つけたのは若菜にとって不幸だったのか?いや、他人の情報を見るの方がやはり彼女には許せないと思ったに違いない。

そのくらいの矜持はこんなデータ化されても若菜にはあった。


冬月若菜(17) B80W78H82(推定) 

初めてのカレシ(バイタの息子)に捨てられたが処女は確定(本人に確認した)。

スレンダーだが色白で、自分から舌を絡めてくるから、そうとうな好き者。

乳首だけでイカせることに成功。


そして痴態の画像が幾枚か添付されている。

No.3とあり、それが合計No.23まである。

それらの大半は例の五島科学部の女子生徒だった、が、なるべく若菜は文章と画像を見ずに、流し読みし、顔写真と名前だけで読むように努めた。

―年上の、しかも教師の男の人が、私が悲しむと悲しみ、私が怒ると困る、それが心地よくて始まったのだが、気づけば、そうか、周囲の同性のクラスメートらと競争されていたのか。そんなくだらぬ姦計にも気づかないほどに私は愚かだった!

「ひでぇな。五島先生、いや、五島のクズ」

くみ子の語尾は弱くなっていき、最後の「クズ」はほとんど発音していなかった。

「くみ子、いいよ、百年の恋も冷めた。ようやく遼斗にフラれたことがかなりショックだったと認めることができる。だから、もういいんだ」

若菜の声は怒りに震えていた。

「ちょっと!若菜ちゃん!」

くみ子は別のファイルをクリックすると今ように自分の学校の女子生徒データ化と同じようなExcelに近隣と女子小学生や女子中学生のデータも大量にでてくる。

幸いなことに最後に食事を摂ったのが、ダイエットのために朝食だったため、若菜は胃液しか化学実験室の床に吐くことはなかった。

確かに幼い子どもにまで性的な情報を集めていた行為そのものに嫌悪感がわいたというのも嘔吐の原因であるが、そんな男とセックスはしなくともペッティングまでしてしまったという自分の穢れや汚れが自分も喜んで受け入れたという自己嫌悪の方が強かった。

くみ子は小型のペットボトルを渡す。

中のスポーツドリンクで口をゆすぎ、ペッと若菜は床に吐き出す。

「男も女も、教師も生徒も関係ない、やっぱり悪いことは悪いんだ。それ以上でもそれ以下でもないんだ」

口をぬぐった若菜がつぶやく。

「これって、これらって、つまり、ええっ!?」

無意識でお腹を両手で包むくみ子。

「うん、多分、売春をさせるんだ、そのためのリストなんだ、このリストに載った子はどんなに幼くても、性的なサービスを強要するため販促なんだよ」

若菜、すきっ腹にスポーツドリンクを流し込む。

「せいかぁぁぁーーーーーーい!」とあまり声は大きく発言していない四谷雛が、既に部屋内に侵入している。

「雛、さん?」とくみ子。

でも、ここでもう何もくみ子は雛に問うことはなかった。

この場の空気が重くて、やわな質問を云う気配がなかったのだ。

「私も昔、あんたたちと同じだった!」と四谷雛が語りだす。

「広島のフツーの一家の三人姉弟のいちばん上の姉。実家から通える大学に進学が決まり、予備校の教師にその報告に行ったら、そういう関係になった、その日に。でも前から好きだったからいいけど、借金のためと他の男とのセックスを強要され、反抗したらクスリを打たれた。そのうちそんな女のコがいっぱいいると知り、どうやら騙されていると自分に認めた。そんな女のコたち、自殺したり、オーバードーズで死んだり。だから、私は恭順を示した!売春婦とヒモ男たちの中間に立って調整する役、男たちだって、悪者にはなりたくなかったから、女のコを騙す女のコは重宝したんだよ」

「うわっ!未だ根に持っていたんだ!しつこいなぁー!」

恍惚した表情で長台詞を発した四谷雛の顔が醜く歪んだ。

その発声は二村だった。

四谷雛の真正面に立ち、彼女を手の甲で殴る、殴る。

「だからおまえは組織の中で女ではいちばんの地位を獲得した。オレが救ってやらなければあの予備校教師を隠れ蓑にしていたヤツに未だしゃぶられていたかもな」

「おまえが私を利用して、今の地位を手に入れるためだろう!」

二村の言葉に四谷雛はひとが変わったようだった。

くみ子はその四谷雛の変わり様にとてつもなく寒くて・淋しいものを感じた。

若菜はその時に、売春組織のやり取りを尻目にデカめペンチをポケットの滑り込ませた。

「冬月ぃぃぃー!GPSだよ!マンションに直で行こうとしたら、こっちに反応が出ている。雛も妊婦に逃げられたからとGPSで追っていると言う」

この時には既にマンションへ男性の構成員が到着していた。五島は続ける。

「先生と続きをしようかぁー!?いや、処女を食べたら、この人みたいに片目にプラスドライバーを突き立てられる」

「そう、15年前、売り物のメスガキをヤったら、客が処女じゃない!とバレた。当時の幹部から詰め寄られ、自己批判として自分の目をえぐり出せと言われ、そのようにしたんだ」と二村は無くなってぽっかり空いた顔の中の空間をくみ子と若菜に見せる。


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