第69話 無事脱出完了したぞっ!
モカが叫んだ。
「ミネ!E327ってどこ!?
もうすぐ!?」
ミネは走りながら端末を確認した。
「もうすぐですっ!!
あの角を曲がれば――」
カタリナが叫ぶ。
「よし!行くよ!!
もう誰にも見られたくない!!」
リルが元気に言う。
「でもいっぱい見られてるよー!」
「言わないで!!」
三人は角を曲がり、停泊地の一角――E327へ飛び込んだ。
そこには、ロウが手を振りながら立っていた。
「おーい!こっちだ!……って、え!?
なんで下着!?」
三人は同時に叫んだ。
「「「説明はあと!! 早く乗せて!!」」」
ロウは慌ててハッチを開けた。
「わ、分かった!!
早く乗れ!!
追っ手が来るぞ!!」
三人と一機は、羞恥と疲労と臭気を抱えたまま、E327の宇宙艇へ飛び込んだ。
停泊地の作業員たちは、最後まで呆然と見送るしかなかった。
・ ・ ・
ロウが操縦席に座り、その後ろではカタリナ、モカ、ミネの三人が膝に手を当て、肩で息をしていた。
リルはとりあえず近くの机の上にちょこんと置かれる。
ロウは操縦席から振り返り、三人の姿を見て、困惑した顔をした。
「……なんで三人とも下着なの?」
モカは息を切らしながら答えた。
「はぁ……はぁ……
色々あって」
ロウは眉をひそめた。
「何だろう、こう……
下着の女が目の前にいるのに全くときめかない。
色気の欠片もない。……汚ぇし、臭ぇ」
カタリナが即座に噛みついた。
「うるさい!しばくぞ!」
ロウは肩をすくめた。
「まぁ、とりあえずシャワー浴びてこいよ。
その間に出航して、ちゃんと逃げ切っておくからさ」
三人は同時に叫んだ。
「「「そうだ!シャワー浴びたい!!」」」
その瞬間――ロウが見ているにも関わらず、目の前で三人は一斉に下着を脱ぎ捨てて、素っ裸になった。
そのままシャワールームへ向けて押し合いながら走り出した。
カタリナが叫ぶ。
「私が一番っ!!」
モカが押し返す。
「これ、おねーちゃんのせいなんだから!
おねーちゃんが一番最後!!」
ミネも負けじと叫ぶ。
「そうですっ!!
G被害に遭った私が一番に入らせてもらってもいいくらいですっ!!」
裸のまま、汚れと臭気をまとった三人がシャワールームへ突撃していく。
ロウはその場で完全に固まった。
しばらくして、ようやく口を開く。
「……お、お前ら。
少しは羞恥心を持てよ」
そして心の中でつぶやく。
(……いいもん見れた……な)
机の上のリルが首をかしげた。
「ロウ。
もしかしていいもの見れたとか思ってるー?」
ロウは慌てて振り返った。
「思ってねーよ!!
AIが人の感情を生々しく分析すんじゃねー!!」
リルは楽しそうに笑った。
「ロウ、顔赤いよー」
「赤くねぇ!!」
宇宙艇の中に、ロウの叫び声が響き渡った。
「……リル。
それ……臭いから片付けといてくれる?」
親指で三人が脱ぎ散らした下着を指さした。
「はーい!」
リルロボットは汚いものでも持つように、指先でつまんで運び出した。
・ ・ ・
軍港内。
泡と警報の余韻が残る通路を、ルキウスは苛立った足取りで歩いていた。
「ちっ……逃げられたのかよ。
役に立たねぇ奴らだな」
兵士たちは泡まみれの床を片付けながら、ルキウスの怒気に触れないよう必死に視線を逸らしていた。
ルキウスは最初にカタリナと遭遇した戦艦フロアへ向かった。
「奴ら……一体何をしてやがったんだ?」
そこには、真っ二つになった監査官ロボットの残骸が転がっていた。
それを見つめながら、ルキウスは眉をひそめた。
「まさか……戦艦に何かしやがったか?」
その時、情報士官が駆け寄ってきた。
「ルキウスさん、ご報告することが」
「ん?なんだ?早く言え」
情報士官は息を整えながら言った。
「実は赤毛の偽中将ですが、戦艦の中央制御室で何か作業をしていた形跡があります」
ルキウスの目が鋭く光る。
「中央制御室だと?
おい、行くぞ!」
「はい!」
・ ・ ・
二人は急ぎ中央制御室へ入った。
情報士官は端末を操作しながら、顔を青ざめさせて報告した。
「ルキウスさん……大変です。
かなり巧妙に隠されていますが、中央コンピュータにバックドアウィルスが仕込まれています」
ルキウスは舌打ちした。
「ちっ、無効化できるか?」
情報士官は震える指で端末を操作しながら答えた。
「はい……かなり時間はかかると思いますが、
これならば解除できます」
「早くやれ!
それと他の戦艦にも同じウィルスが仕込まれていないか確認しろ」
「はい!!」
情報士官は慌てて端末へ向かい、複数の戦艦のシステムチェックを開始した。
ルキウスは腕を組み、静かに吐き捨てるように呟いた。
(危ねえところだったな。
俺が気付かなかったら、この戦艦を赤毛どもに盗られてたんじゃねーか?
全く……世話の焼ける公爵様だ)
ルキウスは深く息を吐き、次の指示を出すために通信端末へ手を伸ばした。
・ ・ ・
ロウの宇宙艇。
「はぁ……すっきりしたぁ。何回も何回も洗ったわー!
やっと臭いが取れた。ロウ、順調?」
カタリナの声に応じて、操縦中のロウが振り返った。
「あぁ、順調……だ、ぶふぉ!
なんて格好してんだよっ!」
カタリナはパンイチ姿で、タオルを使って髪を乾かしていた。
そして眉間に皺を寄せる。
「だったら見るなよっ!」
「だから羞恥心を持てよぉ……とりあえず戻るぞ」
そう言いながらチラ見し続けるロウだった。




