第66話 軍港に強硬突撃するぞっ!
金銀キラキラに輝く、見るからに悪趣味な宇宙艇が宇宙港の片隅で静かに起動した。
船体は宝石のように光り、外装には意味不明な金の装飾が散りばめられている。
どう見ても貴族の道楽で作られた“趣味の悪い高級艇”だ。
そのコクピットで、モカが叫んだ。
「ミネ、行くよ!
軍港ゲート、正面からぶち抜く!!」
ミネは操縦席に座り、目にまだ少し狂気を残したままスロットルを握った。
「了解です。
Gよりはマシですから」
宇宙艇が唸りを上げ、停泊地を低空浮遊したまま加速していく。
近くにある宇宙艇に激突しては弾き飛ばし、停泊地が大混乱になった。
そのままゲートに向けて一直線に進んだ。
ゲート前の守衛たちは、金銀キラキラの宇宙艇が猛スピードで突っ込んでくるのを見て、最初は呆然としていた。
「お、おい……なんだあれ……?」
「止まれ! 止まれ!!
ここは軍港だぞ!!」
守衛たちは必死に手を振るが、宇宙艇は速度を落とすどころか、さらに加速した。
モカが叫ぶ。
「ミネ、もっと踏んで!!」
「了解です!!」
宇宙艇が光の尾を引きながら突進する。
守衛たちはようやく状況を理解した。
「やばい! 本気で突っ込んでくるぞ!!」
「撃て! 撃て!!」
銃撃が宇宙艇の外装に雨のように降り注ぐ。
しかし――金銀キラキラの外装は、見た目に反して異常に硬かった。
それなりに金をかけた高性能宇宙艇だったようだ。
弾丸は表面で弾かれ、火花を散らすだけだった。
小型艇の割にはシールド出力も高く、守衛たちの携行レーザー程度では止められない。
守衛たちは叫びながら散り散りに逃げた。
「無理だ! 避けろ!!」
「死ぬぞ!!」
次の瞬間――宇宙艇が軍港ゲートに激突した。
金属のゲートは紙のようにひしゃげ、フェンスはなぎ倒された。
近くの街灯は根元から折れ、植樹された木々もまとめて吹き飛んだ。
宇宙艇はそのまま突き進み、破壊の軌跡を一直線に描きながら軍港内部へ侵入した。
ミネが叫ぶ。
「モカ様、ゲート突破しました!!」
モカは興奮で顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「よっしゃあああああ!!
悪趣味艇、最高!!」
ミネが操縦席で叫ぶ。
「モカ様、対艦タレットが起動しました!!」
モカはシートにしがみつきながら叫び返す。
「いいよ! 撃たせとけ!!
腐っても貴族の高級艇なんだから!!」
軍港の壁面に並ぶ防衛タレットが一斉に旋回し、金銀の宇宙艇へ照準を合わせた。
「警告! 停止しろ!!
停止しない場合は撃つ!!」
守衛の叫びが響くが、宇宙艇は速度を落とすどころか、さらに加速した。
次の瞬間――
タレット群が一斉に火を噴いた。
実弾が雨のように降り注ぎ、レーザー砲が光の線を描き、対艦用の小型ミサイルまで発射される。
宇宙艇の外装に弾丸が当たり、火花が散り、金の装飾が剥がれ飛んだ。
しかし――
船体はそれでも耐える。
弾丸は表面で弾かれ、レーザーは外装を焦がすだけで貫通しない。
ミネが叫ぶ。
「モカ様! 外装が……思ったより硬いです!!」
モカは興奮で目を輝かせた。
「よっしゃああああ!!
貴族の趣味艇、最高!!」
・ ・ ・
タレットの砲撃を浴びながら、金銀の船体は火花を散らしつつ突進し続けた。
後方では、守衛たちが呆然と立ち尽くしていた。
「……なんだあれ……」
「貴族の艇じゃないのか……?」
「いや、貴族でもあんな使い方しねぇよ……」
・ ・ ・
ミネが叫ぶ。
「モカ様、船体、もう大破寸前です!!」
「よし!ミネ。自動操縦に変更。
このまま、軍港本部に向けて突撃するよ!
私たちはこの隙に、機関室ハッチから広場に降りる!」
「はっ、はい!」
ミネが素早く自動操縦の指示を入力した。
それと同時に二人は立ちあがり、滑るように機関室へ向けて降りていく。
ガンッ!
勢いよくハッチが開くと高速で地面が流れていく。
「これ、降りたら死にません??」
ミネが冷や汗をかきながら、モカに問いかけた。
「……死ぬかも……いや、なんとかなるっしょ!
こういうのは勢いだって!
ほら、もう少ししたら広場の池の上を通る。
そこで降りるよ!」
「え!?映画の見すぎですってば!
こういうのは主人公しか無理で…す・・・ぐぎゃ?!」
喋ってる最中にモカがミネの腕を掴んで池に飛び降りた。
池の水しぶきが上がるが、派手な突進に隠れて兵士達も気にしていない。
二人を下ろした宇宙艇はそのまま本部方面へ突進していった。
本部に到着する前に、ようやく防衛システムの集中砲火を受けて大破し、そのまま大木に激突して停止した。
「ぷはっ!」
モカとミネが池から顔を出した。
「私達主人公なんだから死なないって」
「いや、運が良かっただけですってば!」
文句を言おうとしたミネを手で制して、モカは池から這い上がった。
「おねーちゃんは、きっと中将が押し込められてるロッカーに戻ってくるはず。
私たちも行くよ!」
「は、はい」
軍港の警報が鳴り響く中、赤毛猫の制服を翻しながら、二人は戦艦区画へ向かって駆け出した。
・ ・ ・
カタリナサイド。
隔壁を滑り抜けてから数分。
カタリナは戦艦内部のメンテナンス通路を全力で駆け抜けていた。
骨伝導イヤホンからリルの声が響く。
『カタリナ、左に曲がって~。
その先は広場に繋がるよ~』
「了解!」
カタリナは軽く返事しながら、軍港の奥へ向かって走り続けた。
その途中――ドォォォォォン!!
広場の方から爆音が響いた。
カタリナは走りながら眉をひそめた。
「何?花火?のんきな奴らだな。
まぁ、ぼんくら公爵の軍港だから仕方ないか」
リルが慌てて言う。
『いや、あれ絶対モカたちだよ!?』
「え、また暴走してるの?
あの子たち、相変わらず世話が焼けるわねー。
仕方ない、おねーちゃんが助けに行ってあげるか!」
軽口を叩きながらも、足は止めない。
曲がり角を抜けた瞬間、兵士が二人、銃を構えて飛び出してきた。
「止まれ!!」
カタリナは止まらない。
むしろ――
「はいはい、邪魔!」
ドゴッ!
走りながら放った回し蹴りが兵士の腹に突き刺さり、兵士は“くの字”に折れ、そのまま壁まで吹き飛んだ。
もう一人が慌てて銃を構える。
「な、なんだこいつ――」
バシィッ!
カタリナの掌底が顎を正確に打ち抜き、兵士はその場で崩れ落ちた。
カタリナは走りながらぼやく。
「ほんと統率なってないわー。
こんなバラバラに出てきてどうすんのよ」
リルが呆れた声を出す。
『いや、カタリナが暴走してるから混乱してるんだよ、きっと!』
「え~?暴走してるのはモカたちだよ」
さらに進むと、海賊が三人、通路を塞いでいた。
「赤毛海賊だ! 捕まえろ!!」
カタリナは走りながらため息をついた。
「はいはい、そっちも邪魔!」
ドガッ!
すれ違いざまに一人の膝裏を蹴り抜き、もう一人の顔面に肘を叩き込んだ。
最後の一人が怯むと肩を掴んで壁に投げ飛ばした。
海賊たちはまとめて床に転がった。
リルが感心した声を出す。
『カタリナ、戦闘力だけは本当に高いよね~』
「褒めてる? それ褒めてる?」
『褒めてるけど、穏便じゃないよね!?』
「いや、私は穏便でしょ!
優しく撫でてるだけだよ?」
『どこが!』
「あ、さっきのロッカーが見えてきたよ!」
『赤毛猫海賊団ってホント人の話聞かないよねっ!』




