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『赤毛猫海賊団 カタリナの野望』 ~カタリナ様はワガママ貫き通すってよ~  作者: ひろの
第2章 カタリナ、ついでに内乱鎮めとく  ~ イケメン海賊団編 ~

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第56話 公爵のせいで海水浴が台無しだぞ!

リゾート惑星リャニューンの青い海が、

艦橋の窓いっぱいに広がった。


カタリナはその光景を見た瞬間、

満面の笑みを浮かべた。


「リルちゃん、リャニューンに寄せて。

 折角だから遊んで帰る」


「はいはーい!あいあいさー!」


リルのホログラムが嬉しそうに跳ねる。

カタリナは全艦に向けて通信を開いた。


「全艦、リャニューンで一休みするぞ!

 ついてこい!あっそぶぞー!」


団員たちの歓声が艦内に響く。


「おぉー!リゾートの海だー!」


だが、宇宙港の管制から冷たい声が飛んできた。


『あー、そこの……海賊?怪しい船団、止まれ。

 ここはエルノ公爵様直轄リゾート惑星である。

 海賊行為は厳罰に処される。大人しく引き返せ!』


カタリナは首をかしげた。


「ん?いや、私らはただの客だよ。入れてよ」


『客ぅ?いや、しかしその髑髏マークは……』


ミネがすっと前に出る。


「これは痛船です、痛船。お気になさらず」


『痛船!?』


「よく居るでしょ、こういうの。

 大丈夫です、私達無害ですから。

 ミサイル等の武装もしていません。

 入港後に確認していただいても構いません」


『……分かりました。では予約はされていますか?』


カタリナは胸を張った。


「予約?あーしてるよ。証拠見せようか?

 予約センターの電話番号教えて」


『……は?はぁ。XX-XXX-XXXXです』


カタリナはその場で通信を繋いだ。


「あーもしもし。予約取りたいんですが」


『は!?い、今から予約!?』


「えー、はい。はい。そうです。団体です。

 えぇ。2000人で予約を」


『おい!無理だろ、それ』


「え?あーはい。はーい……はい……」


モカが小声で言う。


「……どんどんトーン下がってる。断られたな」


カタリナは通信を切り、無理やり笑顔を作った。


「……予約取ったよ」


『いえ、断られたでしょ、絶対! じゃあ予約番号は?』


「……えっと。さっきまで覚えてたけど、ちょうど今忘れた。

 ねぇ入れてよ!」


『当リゾートは完全予約制です!番号が照合できなければ入れません!』


そこでリルが口を挟んだ。


「ねぇ、私達エルノ公爵の身内の艦隊だよ」


『は?こんな怪しい艦隊の情報は聞いておりません!』


「本当だってば!この情報にアクセスしてみて?

 弩級戦艦だって持ってるし!今から送るね」


『はい?これは……何ですか?』


「私設艦隊所属票だよ。開いてみて」


しばらく沈黙が続いた。


『少々お待ちを。セキュリティチェックします。

 ……はい、ウィルス等は大丈夫そうですね。

 ん?なんですか?これは中身空っぽですよ』


リルが照れくさそうに笑って見せる。


「あれ?ごめん、間違えた。こっちだ」


『……セキュリティチェックOK。

 ウィルスの心配もなしっと。

 あ……これは本当にエルノ公爵様の私設艦隊所属票……照合します……

 照合完了。認証コードも正式です。

 予約も確認できました。赤毛猫艦隊様ですね。

 これは失礼しました。どうぞ。誘導ラインを射出します』


カタリナは満足げに頷いた。


「はーい、じゃあみんな行こう」


通信を切ると、モカが眉をひそめた。


「リルちゃん、どういうこと?」


リルは胸を張る。


「最初のアクセスで新種のウィルス送り込んで、

 エルノ公爵の私設艦隊の認証情報を全部引っこ抜いたよ。

 そこから所属票を偽造したの。

 馬鹿みたいに引っかかったね!」


ミネが青ざめる。


「……なんかさらっと言ってますけど、

 何げに超危険なことしてません??」


「してないよっ!

 それにリルちゃんは悪者にしかこういうのしないし!」


「確かにエルノ公爵は良い噂が一切ないね」


「でしょ!さぁ、リゾートリゾート!」


カタリナが笑う。


「いや、お前、海入れないじゃん」


「えー?でも気分的に楽しい!」


モカが肩をすくめた。


「じゃ、いいんじゃない?」


・ ・ ・


リゾート惑星リャニューン。


赤毛猫海賊団の艦が次々と宇宙港に入港する。

カタリナは上機嫌で全艦に通信を繋いだ。


「所属ごとに各リゾート地に分散するぞ!

 夜21時にこの第22宇宙港に集合な!

 ちゃんと夕食は美味しいリゾートディナーを食べてこいよ!」


「「はーい!」」


モカが念押しする。


「ホテル予約してないから、艦内で水着に着替えていくんだよ!」


「「はーい!」」


ミネも続けた。


「帰りに濡れたまま服を着る訳にはいきませんので、

 各班一つずつ《ナノ・ドライパルス》を持っていってください」


「「はーい!」」


カタリナが笑う。


「じゃあ、解散!準備急げー!」


ミネはカタリナに向き直った。


「ちなみにカタリナ様は世間知らずなので、

 ナノ・ドライパルスをご存じないですよね?


 ナノ・ドライパルスは、カード型のガジェットなのですが、

 水分子だけを選択的に振動させて蒸散させることができて、

 肌や布地には一切ダメージがありません。

 温度上昇もなく、砂や塩分、磯の臭いも同時に分離できます。

 海水浴には必需品です!」


「知ってるよぅ、それくらい。

 相変わらずミネは説明好きだよね。

 まぁいいや、私らも行こう」


・ ・ ・


団員達は観光バスでビーチへ向かう。

到着すると同時に自動決済の音が鳴った。


ピン。


「着いたー!あっそぶぞ!」


カタリナ達は足早に降りて、ビーチに向けて走り出した。


そんな中、怪訝な顔のミネが運転手に声をかける。


「運転手さん、この距離で1人32000ニャニーって高すぎません?」


「高くないですよ。ほら、運賃表をご覧ください」


「……本当だ。でもちょっとボッタクリでしょ!」


「いえ、弊社は3200ニャニーを受け取り、

 残りの28800ニャニーは公爵様の公領税です」


「は?はぁあ?」


「あ、お連れ様がもう先に行かれましたよ?」


「あ……はぁ、すみません、ありがとうございました」


ミネはため息をつき、礼を言ってから走り出した。


・ ・ ・


ビーチ。

カタリナたちは既に水着になってはしゃいでいた。


モカが手を振る。


「ん?ミネ、どうしたの?」


「はぁ……さっきの運賃が1人32000ニャニーでした」


「は?」


「28800ニャニーが税金だそうです」


モカが叫ぶ。


「おい!公爵!どんだけボッタクッてんのよ!」


ミネは肩を落とした。


「この星、ヤバいですね……」


だがカタリナは海を見て大はしゃぎだ。


「ひゃっほー!うーみー!

 綺麗な海ってさー、なんでこう心が躍るんだろうね!」


ミネは慌てて忠告しようとした。


「カタリナ様、大変です。ここでは節約しないと……」


「ん?」


ミネの視線がカタリナの手元に向く。


「そのドリンク何ですか?」


「トロピカーナぁ!リゾートと言えばこれでしょ!」


ミネは青ざめた。


「それはそうですが……ここちょっとヤバくて……」


だがカタリナはミネの羽織に気づいた。


「ミネ、暑くないの?海だよ?」


ミネは羽織をぎゅっと閉じる。


「……問題ありません」


カタリナがにやりと笑い、羽織をつまんだ。


「おいミネ〜?なんで隠してんだよ〜?」


「や、やめてください!」


ひょい、と羽織がめくれた。


カタリナが固まる。


「……は?」


ミネも固まった。


「……あ」


ミネの下から現れたのは、

紺色の昔ながらの学校用水着だった。


カタリナは腹を抱えて笑い転げた。


「なんでお前スク水なんだよっ!!ぎゃはははは!!」


ミネは真っ赤になって叫ぶ。


「笑わないでください!!

 水着なんて買わないですよ!

 だから……学生の時のこれしかなくて……!」


モカが肩を叩く。


「ミネ、狙い過ぎ」


「狙ってません!!」


ミネは羽織を閉じ、顔を真っ赤にしながらビーチパラソルの下へ逃げた。

ちょこんと座って大人しくしている。


・ ・ ・


楽しい時は早く流れる。

一瞬のうちに夕方になっていた。


ドリンクを飲み、レンタル遊具で遊ぶ。


カタリナが疲れを見せずにみんなに笑顔で声をかける。


「さて、次は晩御飯っ!リゾートの晩御飯!」


ドリンク代や遊具代の自動精算が行われる。


ピン。


そこで初めてカタリナも眉が上がった。



「ん?あれ?

 一、十、百、千、万、十万……

 326800ニャニー!?」


モカが頭を抱える。


「あぁ!?そうだった。ここ税金めっちゃ高いのよ!」


カタリナは叫んだ。


「早く言えよ!どこのボッタクリ店よ!」


ミネは頭を抱えた。


「あぁ……しまった……伝えようとしたのにスク水のせいで……」


・ ・ ・


その後の団員たちは悲惨だった。

誰一人リゾートの食事を楽しめず、

全員がコンビニのカップ麺を抱えて第22宇宙港に集合した。


ぐぅぅ…。

誰かのお腹が鳴る。


団員たちは寂しそうにカップ麺を見つめた。


カタリナは震える声で呟いた。


「……許さん。エロい公爵、絶対に許さない!」

挿絵(By みてみん)

団長のカタリナよ。

ふぅ、楽しかった!……なんて言えるかぁぁぁ!!


リゾート惑星リャニューン、あの青い海と白い砂浜!そこまでは良かったのよ、そこまでは。

でもね、あんなにボッタクリな星だなんて誰が思う!?

リゾートカップ麺をすするなんて、聞いたことないわよ!


私、悪い事した?してないよね!

リゾート地でトロピカルなドリンク飲んだり、遊んだり!

悪くない!悪いのはエロい公爵だ!え?エルノ公爵?

どうでもいい!


フタを開けてみれば税金税金、また税金!

公爵様ってやつは、私たちの財布の中身を何だと思ってるのよ!


あと、ミネのスク水!

あれには参ったわ。最初は「何かの冗談?」って思ったけど、あの子、本気で焦ってたし、

狙ってないあれはさすがミネとしか言えないわね。


しっかし、リゾート地のカップ麺、この恨み忘れられるか!

赤毛猫海賊団をここまでコケにしたエルノ公爵、絶対にただじゃ置かないから。

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