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『赤毛猫海賊団 カタリナの野望』 ~カタリナ様はワガママ貫き通すってよ~  作者: ひろの
第2章 カタリナ、ついでに内乱鎮めとく  ~ イケメン海賊団編 ~

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第55話 常識知らずで宇宙戦はじめちゃうぞ!

赤毛猫海賊団の艦隊は、まだ“艦隊戦”というものに慣れていなかった。

元々はコルベットで突っ込んで白兵戦を仕掛けるスタイル。

距離を取って撃ち合う戦いなど、誰も経験がない。


そんな中――

カタリナがルキウスのシルバーランス艦隊に主砲をぶっ放したせいで、

訓練はそのまま実戦へと突入してしまった。


カタリナがブリッジ中央で腕を振り上げる。


「じゃあ、みんな!

 戦闘訓練開始!」


モカが即座に怒鳴った。


「訓練じゃねーだろ!

 実戦だよ、これ!!」


リルが元気よく返す。


「ラージャー!」


カタリナは楽しそうに前方を指差した。


「次はミサイル行くよ!

 全艦ミサイル発射!」


――沈黙。


不発。


カタリナが首をかしげる。


「あれ?

 発射!


 発射ぁ!」


リルが手を挙げた。


「団長、航行訓練だったからミサイル積んでないよ」


モカが絶叫する。


「ミサイル積んでないのにルキウスに喧嘩売ったの!?!?」


カタリナは悪びれもせず言った。


「しゃーない。じゃあレーザーで」


「しゃーなくない!!」


モカが机を叩く。


「なんでミサイルが無いって状況で戦う気なの!?」


カタリナは本気で不思議そうだ。


「え? なんで? だめなの?」


ミネが深いため息をつき、眼鏡を押し上げた。


「まさかカタリナ様……

 宇宙艦隊戦の常識、分かってなかったりします?」


カタリナが眉をひそめる。


「は?」


モカが肩をすくめる。


「分かってるわけないでしょ、ミネ」


ミネは納得したように頷いた。


「ですよね……。

 カタリナ様、説明して差し上げますね。

 その控えめな脳味噌によく叩き込んでくださいね」


「控えめ言うな!!」


ミネは淡々と説明を続ける。


「レーザーはシールドで止められます。

 ですが、シールドがない部分に当たれば装甲を焼き切れます」


カタリナは素直に頷く。


「ふむふむ」


「実弾兵器はシールドをすり抜けます。

 ですが、装甲で防がれます」


「つまり?」


ミネは指を立てた。


「武器には特性があるんです。ゲームみたいでしょ?


 レーザーはシールドに弱い。

 シールドは実弾に弱い。

 実弾は装甲に弱い。

 装甲はレーザーに弱い。


 だからどの艦船も“追加装甲”という物理盾を持っています。

 これは可動式で、前面に回せばミサイルに強くなる」


モカが補足する。


「シールドも同じ。

 船全体に張れるけど、広く張ると出力が弱くなるから、

 前面だけとか横舷だけとか絞るのよ」


カタリナが首をかしげる。


「なんで絞るの?」


「シールドとレーザー、両方がジェネレータのエネルギーを食うの。

 レーザー撃ちたいならシールドを絞るしかない。

 シールドをしっかり張りたかったらレーザーはあまり撃てない」


「へぇ、ホントにゲームみたいだね」


ミネが続ける。


「ジェネレータは常に稼働しているので、

 レーザーもシールド用のエネルギーは“少しずつ回復”します。

 だから計画的に使えば無限に使えます。

 でも追加装甲やミサイルは有限。積んだ分だけ」


カタリナが感心したように言う。


「なるほど」


モカが腕を組んで言った。


「で、もしさ――

 こっちがミサイル持ってないってバレたらどうなると思う?」


カタリナは少し考えてから答えた。


「ん?

 こっちがレーザーしか撃たないから、

 敵はシールド全開にする?」


モカが指を鳴らす。


「はい、せいかーい!

 つまりこっちの攻撃は全部シールドに吸われて無効。

 あっちはミサイルで全力攻撃してきて、

 いずれこっちの装甲が削り切られる」


カタリナは大笑いした。


「あははは! めっちゃ分かりやすい説明だな!

 理解できた!」


モカが冷たい目で言う。


「で? それ以上は理解できない?」


カタリナは真顔で言った。


「あ、私ら絶対勝てない」


「はい、せいかーい!!」


ミネが呆れたように言う。


「モカ様、テンション高いですね」


モカは叫んだ。


「ったりめーだ!!

 おねーちゃんが馬鹿なせいで、

 絶対負ける戦い挑んだんだよ!!」


カタリナはあっさり言った。


「じゃあ、逃げよう」


モカが机を叩く。


「簡単に言うな!!」


その瞬間、艦が大きく揺れた。


オペレーターの声が響く。


「敵ミサイル直撃!

 追加装甲、前面が中破!!」


ミネの顔が歪む。


「……まずいですね。

 このままでは――」


カタリナは笑っていた。


「大丈夫だよ。まだ壊れてない」


ミネが睨みながら続ける。


「修理費が嵩みます。

 カタリナ様とモカ様のお菓子は当分ありません」


「ちょっと待て!なんで私までとばっちり受けるんだよ!」


リルが割り込んでくる


「ねぇ、一方的にやられてるよ?

 逃げるの?」


モカが叫んだ


「逃げるっ!総員、退却準備。

 とりあえず弾幕がてらに全艦レーザーを発射。

 

 その間に退却航路を考える!」


「まっすぐビューンって逃げればいいじゃん」


「戦いながら逃げるのは、滅茶苦茶難しいんだってーの!

 いいから邪魔しないで!


 おねーちゃんが悪いんだからね!」


カタリナが口を尖らせて、拗ねながら呟く。


「私はきっと悪くない」


「「悪い!」」


モカとミネが同時に叫ぶ。

カタリナはその勢いに押されて仕方なく、

端っこの方でリルに愚痴る。


「はぁ……。リルちゃん。私悪くないよね。

 なんだっけ?あれ。

 あっそうそう。緊急FTLジャンプで隣の星系に一旦逃げりゃいいじゃん」


「はいはーい!じゃあ計算するね!」


モカが慌ててリルの方を向いて怒鳴る。


「待って!リルちゃん!緊急FTLは最終手段!

 かなり危険なんだから。

 ほぼランダムジャンプだよ。

 恒星のど真ん中にでも飛んだりしたら……」


「はいはーい。計算できたよ。

 大丈夫、リゾート惑星リュニャーンの軌道上に跳ぶね!」


「へ?」


「大丈夫!周りには誰も居なさそう!

 じゃあ、全艦命令コードを転送するね。


 レーッツ! ジャーンプ!!」


「あ、待って!」


言うより早く赤毛猫海賊団の艦船が次々と緊急FTLジャンプで、

隣の星系にワープした。


・ ・ ・


ルキウスの旗艦、シルバーランス・ゼロ。


「詳細不明艦隊、緊急FTLジャンプで離脱しました」


オペレータの報告を聞き、艦橋内でルキウスと副団長が、

怪訝そうな顔で向き合う。


「は?なんだ?あいつらは一体何がしたかったんだ?」


「さぁ?馬鹿なんじゃないですかね?」


「いや、馬鹿なのはわかるが……。

 馬鹿は馬鹿なりに何か考えていそうだが」


「はぁ……、一応何者かだけかは探っておきます」


「あぁ」


・ ・ ・


隣の星系のリャニューン星系に次々と赤毛猫海賊団の艦船がワープアウトする。


リルが言った通り、リゾート惑星リャニューンの軌道上だった。


「え?なんでピッタリ狙い通りの所に緊急ジャンプできるの?」


モカが目を丸くしてリルに聞く。


「え?計算したからだけど、なんで?」


「いや、ジャンプ先計算って……普通短時間じゃ無理よ??」


急にリルがドヤ顔になる。


「そうなの?じゃあ褒めて褒めて!」


カタリナが盛大に褒める。


「リールちゃーん!偉い!偉いぞ!」


「えへへへ」


ホログラフが腰をくねくねしながら照れている。

触れないが、頭をなぜなぜしながらカタリナが叫んだ。


「よし、訓練で疲れたね!

 今からリャニューンで海水浴だー!」


モカが力が抜けて副長席に座り込んだ。


「いや……ホント疲れた」


挿絵(By みてみん)

はぁ……。副団長のサクラモカよ。

あの状況で「海水浴」なんて言葉が出てくるおねーちゃんの神経、本当にどうなってるのかしら。


正直言って、今回は死ぬかと思ったわ。

ミサイルも積んでないのにルキウス相手に喧嘩を売るなんて、どんな特攻精神よ。

ミネが宇宙艦隊戦の常識を説いてくれたけど、おねーちゃんはあそこで初めて「レーザーとシールドの相性」を知ったのよ?

そんな状態でラスボスに挑むなんて、もはや勇気通り越してただの自爆テロよ。


唯一の救いは、あの「リルちゃん」の計算能力ね。

緊急FTLジャンプなんて普通は「どこに飛ばされるか分からない死のギャンブル」なのに、あの子、完璧にリゾート惑星の軌道上に着地させちゃったんだから。

リルちゃんの演算能力、完全にバグってるわよね。おねーちゃんに甘やかされて、ホログラフなのに腰をくねくねさせてる姿は可愛いけど、やってることは銀河の法則を無視してるわ。


まあ、おねーちゃんのおかげ(というか尻拭いのおかげ)で、結果的にルキウスを煙に巻いて逃げ切れたのは不幸中の幸いね。


さあ、リゾート惑星リャニューン!

海水浴自体は悪くないわ。最近のアジト暮らしでピリピリしてたし、羽を伸ばすかー!

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