第50話 モカたちを助けにいっちゃうぞ!
通信が入ったのは、ロウのアジトの中央情報管理室だった。
モニターにサクラモカの顔が映る。
「現在、隣の星系ラモッニャに来てるんだけど……。
第24対賊艦隊に絡まれて、すげぇウザイ!
おねーちゃん、何とかして!」
言い切った。
切実さはある。
でも軽い。
カタリナが腕を組んだ。
「ロウ。
第24対賊ってどんなの?」
ロウはすぐに答える。
「この辺じゃそこそこ名の知れた艦隊だな。
総数二十隻。
旗艦は巡洋戦艦メルヤーニャ。
巡洋艦が5隻、駆逐艦5隻、コルベット9隻。
バランスのいい、普通に強い艦隊だ」
カタリナはあっさり言う。
「雑魚っぽいね」
ロウが即座に突っ込む。
「話聞いてたか?」
呆れた顔になる。
「コルベット海賊じゃ歯が立たねぇ相手だぞ。
何個も海賊団が返り討ちにあってる」
少しだけ真面目な声になる。
「お前の妹、普通にやばいんじゃないか?」
カタリナは首をかしげた。
「いや、モカは一万年に一人の名将だから平気でしょ」
ロウが即座に返す。
「盛りすぎだ」
指を立てる。
「胡散臭くなると逆に凄く聞こえねぇんだよ。
十年に一人くらいにしとけ」
カタリナは間髪入れず返した。
「ちなみに私は十万年に一人」
ロウは空を仰いだ。
「お前ほんと人の話聞かねぇな……」
ため息を一つ。
「まぁいい、行くぞ。
準備できたら2番ドッグに来い」
カタリナが即答する。
「もう準備できてる」
ロウが振り向く。
そして固まる。
「……だぁからぁ」
頭を抱える。
「パンイチTシャツの部屋着で戦場に行こうとすんな!!」
・ ・ ・
2番ドッグ。
巨大な艦が並ぶ整備区画にカタリナが入ってくる。
きょろきょろと見回す。
「ロウの船、これ?」
ロウが肩をすくめる。
「ここにあるの全部だよ」
カタリナが指差す。
「え?あの巡洋戦艦も?」
「ああ」
軽く頷く。
「あれが旗艦だ。
他に巡洋艦5隻、駆逐艦5隻、コルベット10隻」
少しだけ胸を張る。
「黒犬海賊団っていやぁ、それなりに名前通ってんだぞ」
カタリナの反応は薄い。
「へぇ」
ロウの眉が跳ねた。
「もっと驚けよ」
腕を広げる。
「この宇宙港も俺のだぞ?
部下も1500人いる」
カタリナは同じ調子で言う。
「へぇ」
ロウは諦めた。
「……はいはい、いいよ別に」
手をひらひらさせる。
「褒められようとも思ってねぇし」
そのまま指で示す。
「とにかく乗れ。
妹助けるんだろ」
カタリナは周囲を見回していた。
考え事をしている顔だ。
「ねぇ」
ロウを見る。
「この宇宙港、私たちも使っていい?」
ロウは軽く答える。
「4番ドッグなら貸してやる」
カタリナは即答した。
「1番がいい」
ロウが即座に否定する。
「あそこは空母用だ。
巡洋艦とかコルベットなら4番で十分だろ」
カタリナは黙る。
じっとロウを見る。
何も言わない。
・ ・ ・
そのまま巡洋戦艦が発進した。
ちなみにジーナは部屋に戻って着替えようとしていた。
「景気づけっス」
そう言って酒を一気に飲んだ。
そしてそのまま寝た。
置いてきた。
・ ・ ・
ペドローニャン星系境界。
ロウが前方を見据える。
「この辺に飛んでくるはずだ。
少し待つ」
カタリナが隣で聞く。
「作戦は?」
ロウは短く答えた。
「不必要に対賊連中とは戦いたくない。
だから正面からはやらねぇ」
指で空間をなぞる。
「うっかりを装って進路を塞ぐ。
赤毛猫と対賊の間に割り込んで邪魔するだけさ」
カタリナが顔をしかめる。
「主砲ぶっ放さないの?」
ロウが即座に返す。
「だから戦いたくねぇって言ってんだろ!」
カタリナはつまらなそうに言う。
「つまんない」
ロウが額を押さえる。
「面白いかどうかで判断すんな!!」
その時だった。
オペレーターが叫ぶ。
「熱源多数検知!
こちらに接近します!」
ロウが前に出る。
「来たか」
次の瞬間。
巡洋艦が一隻、ジャンプから飛び出した。
ロウが目を細める。
「サクラモカか?」
オペレーターが首を振る。
「違います!
第24対賊艦隊所属です!」
ロウの眉が動く。
「は?」
さらに艦が現れる。
コルベット。
駆逐艦。
次々と飛び出してくる。
そして――全速で突っ切っていく。
ロウが呟く。
「……逃げてる?」
さらに巡洋艦。
巡洋戦艦。
装甲は破れ、シールドは揺らいでいる。
明らかに戦闘後だ。
「こいつら……第24か?」
その直後。
別の艦影が現れる。
巡洋艦とコルベットが数隻。
船体は真っ赤だ。
ロウの目が細くなる。
「あ?」
オペレーターが答えた。
「バッカニアII号です!
赤毛猫海賊団所属!」
壊れたコルベット”バッカニア号”の代わりに、
ジーナの乗艦としてロウが与えた巡洋艦だ。
ロウは完全に混乱する。
「は?
赤毛猫が……。
……追ってる?」
その瞬間。
警報が鳴る。
「超大型熱源接近!
来ます!!」
ロウが前方を凝視する。
空間が歪む。
次の瞬間。
巨大な艦が現れた。
真紅の船体。
船首には赤毛猫の髑髏マーク。
弩級戦艦。
カタリナがにやりと笑う。
「おー来た来た」
ロウの口が開いたまま止まる。
「……は?」
その弩級戦艦――エンジェルメッタメタ号が、
対賊第24艦隊を追い立てていた。
対賊艦隊の完全な敗走だった。
カタリナが肩をすくめる。
「何だよ」
つまらなそうに言う。
「私の出番ないじゃん」
ロウがゆっくり振り向く。
「待て」
指をさす。
「あれ……なんだ?」
カタリナは平然と答えた。
「私の旗艦」
ロウの絶叫がブリッジに響いた。
「はぁぁぁあああ!?」
やっほー!銀河一の美貌と、十万年に一人の才能を兼ね備えたカタリナ団長だよ!
第50話、ついに記念すべき節目ね!
みんな、私の「真の実力」の片鱗、見ちゃったんじゃない?
まず最初に言っておくけど、ロウのやつ!
自分のアジトとか艦隊を自慢げに見せてきた時は、正直「可愛いな」って思っちゃったわよ。
巡洋戦艦?1500人の部下?
…ぷぷっ、私からすればおままごとレベルだっての!
あんなのでドヤ顔できるなんて、やっぱりあいつは「ちょっといい人止まりの賞金稼ぎ」ね。
それにしても、第24対賊艦隊!
「歯が立たない相手」なんて脅されたから、ちょっとは骨があるかと思えば、何よあのザマ!私の可愛いモカに追い回されて、尻尾巻いて逃げ出すなんて情けないわね。あ、さすが私の妹!一万年に一人の名将(自称)なだけはあるわ!
そして、ついに現れたわね。私の愛艦、「弩級戦艦エンジェルメッタメタ号」!
あの真紅のボディ、あの圧倒的な破壊力!ロウの口が塞がらなくなってた顔、録画してモカに見せてあげたいくらいだったわ。あいつ、「あれ何だ?」とか聞いてきたけど、見ればわかるでしょ?私の旗艦よ!
さて、これで役者は揃ったわ!
折角ダイエットになるかと思ったのに……。
戦わずに勝っちゃった?
強すぎるのも問題ねぇ。
さってと。遂に新しい戦場にみんな揃ったわ!
待ってなさい、ルキウスとエロい公爵!




