323 帰路
ジェフの後について扉を出ると相変わらず二人の騎士が立っていた。
通り過ぎる時、軽く会釈をしたが特に反応はなかった。
僕の前を歩くジェフは、ビクビクと身体を震わせながら歩いている。
時々、後ろを振り返っては僕をチラ見するので、僕を警戒している事が窺える。
そんなに警戒するなんて、過去に人間と何かあったのかな?
それともただ単に人間と関わるのが怖いだけなんだろうか?
色々と理由を考えてみるが、特に決定づけるようなものは何もない。
僕に出来る事はただこれ以上ジェフを怖がらせないようにするだけだ。
だったらジェフに案内してもらわずに、僕一人だけで帰った方が良くないか?
そう思い、僕は後ろからそっとジェフに話しかけた。
「あの…」
その一言だけでジェフは「ヒャッ」と声を上げて飛び上がった。
…驚いて飛び上がるなんて、漫画の世界だけかと思ってたけれど、実際にある事なんだね。
飛び上がったジェフは今にも逃げ出しそうな体勢でゆっくりと僕を振り返った。
「…な、何でしょうか?」
その真っ青になった顔を見てやはり早く解放してあげたいと強く思った。
「道順を教えていただければ、僕一人で帰りますよ。お顔の色も悪いようですし…。早く戻られた方がいいですよ」
すると、ジェフは予想外の事を言われたようで、目をぱちくりとさせて僕を凝視した。
それきり動かないので「ん?」とばかりに首を傾げると、ジェフはハッとしたように我に返った。
「ああ、いや失礼。まさか人間にそのような事を言われるとは思わなかったので…。…なるほど。人間にはあなたの
ように心優しい方もいらっしゃるのですね」
フルフルと頭を振るジェフだけれど、一体どのような過去があるんだろうか?
尋ねてみたいけれど、ジェフが自ら話さない限り、僕が聞いていい事ではないだろう。
「御心遣いありがとうございます。しかし、ここで戻ればグレゴリー様に叱られます。それに、ドワーフ以外の者は出口に辿り着けないように魔法がかけられておりますので…」
…なんだって!?
なんか今、凄い事をサラッと言われたような気が…。
「そうなんですか? 今までこのドワーフの国に落ちてくるような人間はいなかったんですか?」
「はい、そうです。私が知る限り、ここに落ちてこられたのはエドアルド様が初めてです。もっとも、他の魔獣の襲撃は時々ありますけれどね」
他の魔獣の襲撃?
それを聞いて真っ先に頭に浮かんだのが、モグラとミミズだった。
どちらも地中に住んでいるから、ドワーフの国に侵入してきてもおかしくはない。
だけど、魔法が使えるのならそういう魔獣の襲撃も回避出来そうな気がするんだけれどな?
「魔法で回避出来ないんですか?」
「まあ、それは…」
ジェフがそう言いかけたところで、ドンと音がしてすぐ前方の横の壁が崩れた。
な、何が起きたんだ?




