324 魔獣
壁が崩れた途端、もうもうと土煙が舞い視界が遮られた。
それが収まったと思ったら、目の前には大きな魔獣が姿を現していた。
カバぐらいの大きさのモグラのような魔獣がゆるゆると頭を動かしている。
剣を抜いて身構えたが、どうも様子がおかしい。
…もしかしてあの魔獣は目が見えていないのか?
モグラは地中で生活するから目が小さくなったと言われているけれど、この魔獣はどうなんだろう?
よく見ると目らしきものはあるけれど、あまり役には立っていないように見える。
必死に鼻やヒゲを動かして周囲を探っているような感じだ。
ジェフは突然現れた魔獣に特に驚く事もなく冷静なように見える。
あちこち匂いを嗅ぎまくっていた魔獣がピタリとこちらに照準を合わせた。
どうやら僕とジェフがこの場にいる事に気付いたようだ。
剣を構え直したところで、ドタドタとこちらに近づいてくる足音が聞こえた。
「おい、いたぞ! ビッグモォールだ!」
ビッグモォール?
それがこの魔獣の名前なんだろうか?
どこからともなくドワーフの騎士達が現れて、魔獣を取り囲んだ。
魔獣は抵抗しようと前足を闇雲に振り回すが、ドワーフの騎士達はヒョイヒョイと躱している。
あっという間に魔獣は倒されてしまい、辺りに血の匂いが充満している。
その匂いにウッと息を詰まらせていると、ジェフから「大丈夫ですか」と声をかけられた。
「…まぁ、何とか…」
声を絞り出し、抜いていた剣を鞘へと戻す。
騎士達は倒した魔獣の解体に入っていて、更に血の匂いが増してきた。
「すぐにここを離れましょう」
ジェフに促され、僕達は足早にその場を離れた。
十メートルくらい進むと、鼻も慣れたのか血の匂いが気にならなくなった。
「あの魔獣の乱入ってよくある事なんですか?」
あまりにも騎士達の手際が良いのでジェフに尋ねてみた。
「そうです。ビッグモォールも地中で生活しているので、時々あんなふうに突っ込んでくるんです。穴を開けられて
もすぐに修復されるので、何の問題もありません。それにドワーフ達が生活している部屋には強化魔法がかけられているので、部屋に入って来る事はありません」
「強化魔法がかけられるのなら、こういう通路にも強化魔法をかける事もできるんじゃないですか?」
そうしたら、こんなふうに突入される事もないはずだ。
いくら騎士達がいるとはいえ、誰かが怪我をしないとも限らない。
「いえいえ。あのビッグモォールは貴重な食料源ですからね。そのためにわざと突入されやすいように通路は強化されていないんです」
なるほど。
魔獣を捕まえるために敢えて通路は進入されやすい作りになっているのか。
ジェフとそんな話をしながら進んでいると、不意に目の前に扉が現れた。




