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322 長との対話

 ドワーフの長に何を言われるのかとドキドキしながら顔を伏せていると、突然頭上から「ワハハッ」と笑い声が降ってきた。


 思わず顔を上げると、玉座に座ったドワーフの長が愉快そうな目でこちらを見下ろしている。


「そんなに緊張せずとも良いぞ。オーウェン殿のお客人なのだろう? そこにいると話しづらいからこちらまで上がって来い」


「グレゴリー様っ!」


 ドワーフの長が手招きをして僕を呼び寄せようとすると、後ろに立っていた別のドワーフが焦ったような声を上げた。


 ドワーフの長はそんな彼をギロリと睨みつけて一喝する。


「ジェフ、うるさいぞ! オーウェン殿のお客人が我らに害を及ぼすわけなど無いだろうが!」


「し、しかし…」


 ドワーフの長の言うように僕は彼等をどうこうしようとは思っていないけれど、そこまで無条件に信頼するのもどうかと思う。


「文句を言っている暇があったらお客人の座る椅子を持ってこんか!」


「は、はい! 今すぐに!」


 ジェフは慌ててどこかへ走って行った。


 それを見送るとドワーフの長は僕に向かってチョイチョイと手招きをする。


「さあ、ここまで上がって来るが良い」


 断る理由もないので僕は目の前の階段を上がって行った。


 だけど、ドワーフの身長に合わせてあるから一段ごとの段差が低いんだよね。


 かと言って段飛ばしに上がるのも失礼な気がして、低い段差の階段をちまちまと上がって行った。


 僕が壇上に上がりきった頃にジェフが椅子を持ってやって来た。


 ちょっと恨みがましい目をしながら、ジェフはドワーフの長に示された場所に椅子を置いた。


「さあ、そこに座るがよい」


「失礼します」


 一言断って椅子に腰を下ろしたけれど、滅茶苦茶座りにくいったらない。


 何しろ、椅子のサイズもドワーフ仕様だからね。


 言うなれば子供用の椅子に大人が腰掛けている感じだな。


 この状態でもドワーフを少し見下ろすような形になるのがちょっと申し訳ない。


 ニコニコ顔のドワーフの長と、不満そうな顔で後ろに立っているジェフとの顔の対比が何とも言えない。


「自己紹介がまだだったな。私はこのドワーフの長をしているグレゴリーだ」


 玉座から少し斜めに身体をこちらに傾けて、ドワーフの長が名乗った。


「はじめまして、エドアルドと言います。突然お邪魔してすみません」


 来たくて来たわけじゃないけど、とりあえず謝っておいた。


「いやいや。元はと言えばこちらが地面の薄い場所を放置しておいたのが原因だからな。せっかく来られたんだからゆっくりしていくがいい。オーウェン殿には私から連絡しておくよ」


 ドワーフの長がそう言うと、後ろに立っているジェフが目を剥いた。


 そんなジェフの顔を見たら、とてもじゃないがゆっくりなんて出来そうもない。


 ドワーフの長には申し訳ないが、ここは早々に退散した方が良さそうだ。


「申し出は有難いんですが、一緒に来ている友達が心配していると思うので、またの機会にさせていただきたいと思います」


「そうか? 残念だがそういう理由なら仕方がないな。それでは地上まで案内させよう。ジェフ、エドアルド殿を地上まで送ってあげなさい」


「わ、私がですか!?」  


 ジェフが素っ頓狂な声を上げるけれど、そんなに僕と関わるのが嫌なんだろうか?


 ジロリとドワーフの長に睨まれて、ジェフは小さな身体を更に縮こまらせる。


「…わかりました。それではエドアルド様、参りましょうか」


 ジェフはガクリと肩を落として僕を促した。


「それでは、これで失礼します」


「おお、また会おうぞ」


 僕は立ち上がってドワーフの長に一礼すると、ジェフの後について歩き出した。 




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