320 ドワーフとの会話
僕は土下座したまま、ブルブルと震えているドワーフの肩を優しく叩いた。
「大丈夫ですよ。それよりお話をしたいので立ってもらえますか?」
僕に触れられてドワーフは一瞬、身体をビクッと強張らせたが、恐る恐る顔を上げて僕を見た。
これ以上怖がらせないように微笑んでみせると、ホッと息をついて立ち上がった。
身長差があるので、彼の目線に合わせるように身体を屈める。
「ここはエルフの国の地下ですよね。ここにドワーフ達が住んでいるんですか?」
そう尋ねるとドワーフはビシッと直立不動になって答える。
「は、はい! 私達ドワーフはオーウェン様の許しを得てこちらに住まわせていただいています! 一部のドワーフは結婚して地上に住んでいる者もおります!」
若干声が上ずっているような感じだけれど、気づかなかった事にしよう。
「そんなにかしこまらなくても大丈夫ですよ。ところで、どうして僕はここに落ちてきたんでしょう?」
ちょっと首を傾げてみせると、ドワーフはつと僕から視線を外した。
「えっと、それはですね…」
そう言ったきり次の言葉がなかなか出てこない。
僕がここに落ちてきた理由を知っているようだけれど、それを明かすと誰かに怒られるのかな?
しばらく沈黙が続いた後、ようやくドワーフが口を開いた。
「実はですね…。ここにドワーフが移り住むとなった時、所々地上との境目の地面が薄い部分が出来たんです。でも、基本エルフ達は羽が生えていて浮き上がる事が出来るから、誰も落ちて来たりはしなかったんです。たとえ穴が空いてもすぐに修復されるので、特に問題はなかったので放置されていて…」
ドワーフの答えに僕は初めて黒の女王に会った時の事を思い出した。
あの時、確かに黒の女王は真っ黒なクロアゲハの羽を持っていたっけ…。
もしかしたらオーウェン達にも実際は背中に羽があるのかもしれない。
だから、庭を歩いていて層の薄い所に立って穴が空いても、すぐに浮かび上がれるため落ちる事はなかったのだろう。
その点、僕は浮遊魔法が使えないから、そのまま地中に落ちてしまったのだろう。
これがウィルだったら、すぐに浮かび上がって対処出来たんだろうな。
そう考えると落ちてしまった僕が随分と間抜けに思えてくる。
「そうだったんですね。それで僕はどうしたら地上に戻れるんでしょうか?」
コテンと首を傾げると、ドワーフはウッと言葉を詰まらせて頬を赤く染めた。
そんなに顔を赤くして、もしかしたら熱でもあるのかな?
そのままドワーフは申し訳なさそうに口を開いた。
「地上に戻るには一度我らの長に会っていただく必要があります」
ドワーフの長?
まさか、その場で極刑を命じられたりしないよね?




