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319 地中にて

 いきなり足元の地面が消えた事に焦ったが、ほんの少し浮遊感を覚えただけですぐに足が地面に着いた。


 グッと踏ん張ったおかげで何とか尻餅をつく事もなく着地できた。


 すぐに上を見上げたが、僕が落ちてきたはずの穴は見えなかった。


 というより、天井は真っ黒な土で覆われていた。


 どうやら僕は地中に落ちたようだ。


 グルリと周囲を見回したが、ここは通路のようで所々に明かりが灯されていた。


 さて、どちらに向かうのが正解なんだろうか?


 考えあぐねていると、タタタッとこちらに向かってくるような足音が聞こえた。


 足音のする方向に目をやると、誰かがこちらにやってくるのが見えた。


 ホッとしたのも束の間、その人物は僕に駆け寄って来ながら、腰に下げていた剣を引き抜いた。


 うわっ!


 まさか、斬られる!?


 僕は慌てて腰に下げていた剣を引き抜こうとして思い留まった。


 この地中もエルフの国の一部だろう。


 オーウェンに招かれた客である僕が剣を抜いたら、後々問題になりそうだ。


 それにいきなり僕を殺したりはしないだろうし…。


 だけど、ただ斬られるのも嫌なので、向こうが斬りつけてきた場合は鞘付きのまま受け止めようと思った。


 だけど、妙だな?


 こちらに近づいて来ているはずなのに、走って来る人物の身長がやけに小さいような…。


 そう思っているうちに、走って来た人物は僕の数歩前で立ち止まったが、その背の高さは僕の身長のほぼ半分くらいだった。


 手に持っている剣も、彼の身長に合わせているらしく、僕の剣よりもかなり短い。


 彼は僕の背の高さに多少仰け反りつつも、僕に向かって剣を突きつけてきた。


「き、貴様! 何者だ! どうやってこのドワーフの領域に入って来た!」


 身体の大きさからもしかしたらと思っていたが、やはり彼はドワーフだったようだ。


 それにしても、この地中がドワーフの領域なのか?


 ドワーフもやはりエルフの仲間だったりするんだろうか?


 僕に剣を突きつけてはいるものの、すぐに斬ってくる様子は見られないので、僕は柄に掛けていた手を下ろした。


「驚かせてすみません。オーウェンにエルフの国に招かれて庭を散策していたのですが、突然足元の地面が消えてここに落ちて来たんです。元の庭に帰りたいんですが、どうしたら帰れますか?」


 なるべく彼を刺激しないように、優しく話しかけてみたけど大丈夫だったかな?


『オーウェン』の名前を聞いて、ドワーフは慌てて持っていた剣を鞘に収めた。


「オーウェン様のお客人とは露知らず、誠に申し訳ありませんでしたー!」


 そう言うなりドワーフは地面に跪いて頭を擦り付けた。


 この世界にも土下座ってあるのかな?



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