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318 散策

 ゆっくりとお茶を飲んでいると、先に食事を終えたオーウェンが立ち上がってこちらに近寄ってきた。


「私からお呼び寄せしておきながら申し訳ないのですが、色々とやらなければならない事がありまして…。部屋を用意させますのでそちらでゆっくりお過ごしください。エルフの国の中は自由に見ていただいて構いませんよ。それでは…」


 僕にそう告げるとオーウェンは小さな妖精達を従えて食堂を出て行った。


 黒の女王も別の妖精達と何かを話しながら、別の扉から何処かへ向かった。


 ヴィンセントとジュリアスもそれぞれ妖精達と一緒に出て行ってしまい、僕とウィルだけがポツンと取り残される。


 まあ、四人ともこのエルフの国の重鎮だろうから、それぞれ仕事があるのはわかる。


 特にオーウェンとヴィンセントは最近まで僕に付き合ってくれていたから、色々と滞っている事もあるんだろうな。


 お茶を飲み終えて「ふうっ」と息を吐くと、目の前に小さな妖精が現れた。


 僕の目の前でティンカーベルのような羽根をひらひらと動かしている。


「お食事はお済みですか? よろしければお部屋にご案内させていただきます」


「あ、お願いします」


 僕は立ち上がると、隣に座るウィルを促して妖精の後をついて行った。


 何となく見覚えのある廊下を歩いていくと、やはり前回と同じ部屋に案内された。


「それではごゆっくりおくつろぎください」


 そう言い残すと妖精はフッと姿を消した。


 ウィルは部屋に入るなりベッドに直行してダイブする。


 着地の瞬間、ドラゴンに姿を変えるのも以前と一緒だ。


 起きて朝食を食べたばかりだというのに、ベッドに横たわった途端、スヤスヤと寝息を立てている。


 そんなウィルに呆れつつも僕はソファーへと腰を下ろした。


 オーウェンに招かれるまま、エルフの国に来てしまったけれど、本当にこれで良かったのだろうか?


 僕を狙っている人物が誰かわからない以上、手の打ちようがないのだから仕方がない。


 そう頭の中ではわかっているのに、何も対策出来ない自分が腹立たしい。


 こうしていると、ぐるぐるといろんな考えが頭の中を駆け巡ってパンクしてしまいそうだ。


 僕は気分転換するため、外を散歩する事にした。


 ウィルを起こして誘おうかと思ったが、あまりにも気持ちよさそうに寝ているので、そのままにしておいた。


 そっと足音を忍ばせて部屋を出ると、外に出る扉を探した。


 確か、ここに来る途中で庭に出る扉があったような…。


 食堂へと続く廊下を歩いていると、庭へと出られる扉を見つけた。


 そっと扉を開けて庭に出ると、花の蜜の香りがドッと押し寄せてきた。


 色とりどりの花が咲き誇っている中を、蝶の羽を持った妖精や、ミツバチの妖精達が一生懸命に飛び回って蜜を集

めている。


 その光景を眺めながら、僕は庭を当てもなく歩き回った。


 そんな庭の中にひときわ目立つ花を見つけた。


「変わった花だな…。何という名前の花なんだろう?」


 一見、バラに似ているような気もするが、ちょっと視点を変えると別の花のように見えてくる。


 花の色も1色ではなく、幾つもの色が重なっているように見える。


 思わずその花の前に立ち止まって、花の匂いを嗅ごうとした。


 だが、立ち止まった瞬間、僕の足元の地面が消えた。




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