317 エルフの国の朝食
オーウェンの後に続いて空間の裂け目に一歩足を踏み入れると、そこは食堂だった。
黒の女王とヴィンセントとジュリアスの三人がカトラリーを持った手を止めて、ポカンとした顔で僕とウィルを見つめている。
どうやら食事中にオーウェンを呼び出してしまったようだ。
そんな中、真っ先に口を開いたのは黒の女王だった。
「まあ、オーウェン。随分早かったのね。もっと時間がかかるのかと思っていたわ」
オーウェンは黒の女王のもとに近寄り、軽く彼女の髪にキスをすると、隣の席に腰を下ろした。
「トラブルではなくて、ウィルが勝手に私を呼び出したようです。…そう言えば朝食は済んだのですか?」
黒の女王達に説明した後、オーウェンは僕達の方を向いて尋ねてきた。
そういえばまだ朝食を食べていなかったな。
そう思い出したところで「くぅー」とウィルのお腹が鳴った。
その音の大きさに黒の女王は目を丸くしていた。
「どうやらまだのようですね。すぐに用意をさせますから座ってください」
オーウェンに言われて空いている席に僕とウィルは腰を下ろした。
オーウェンが「チリン」とテーブルに置かれたベルを鳴らすと、パッと小さな妖精が現れる。
「オーウェン様、お呼びですか?」
「エドアルド君とウィルに食事をお願いします」
「かしこまりました」
一旦姿を消した妖精だったが、しばらくして食事を載せたワゴンと他の妖精と共に現れた。
ひらひらと飛びながら数人の妖精達がお皿とカトラリーを僕とウィルの前に運んでくれる。
ウィルの目は既にお皿に盛られた料理に釘付けになっている。
まるで「待て」を言われた犬みたいだな。
「お待たせいたしました。どうぞお召し上がりくださいませ」
準備を終えた妖精が声をかけた途端、ウィルはカトラリーをむんずと掴むと勢いよく料理を口に運び始めた。
ちょっと、ウィルー!
そんなにがっついたらまるで僕がご飯を食べさせていなかったみたいじゃないか。
まあ、オーウェンとヴィンセントはウィルが食いしん坊なのは知っていると思うけど、黒の女王は誤解なんかしていないよね。
チラリと黒の女王の様子を窺ったが、黒の女王はオーウェンと何か話をしていてウィルの方は見ていなかった。
相変わらずのイチャイチヤぶりのようだ。
ホッとしつつ僕もカトラリーを持って食事を始める。
うん、凄く美味しい。
こんなに美味しいのならウィルががっつくのも無理はないかな。
ヴィンセントとジュリアスは既に食事を終えていたようで、二人の前にあるのは食後のティーカップのみだった。
あっという間にお皿を空にしたウィルは、身体を背もたれに預けて満足そうにお腹をさすっている。
すかさず妖精達が現れ、お皿を下げるとティーカップを置いてお茶を注いだ。
続いて僕の前のお皿を下げるとティーカップを置いてこちらにもお茶を注ぐとスッと姿を消した。
何とも優雅な朝食の時間だ。
僕はティーカップを手に取ると、ゆったりとカップを傾けるのだった。




